文献情報
文献番号
201807013A
報告書区分
総括
研究課題名
妊娠初期の感染性疾患スクリーニングが母子の長期健康保持増進に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H30-健やか-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
宮城 悦子(横浜市立大学 大学院医学研究科 生殖生育病態医学)
研究分担者(所属機関)
- 山中 竹春(横浜市立大学 大学院医学研究科 臨床統計学)
- 稲森 正彦(横浜市立大学 大学院医学研究科 健康社会医学ユニット)
- 梁 明秀(横浜市立大学 大学院医学研究科 微生物学)
- 倉澤 健太郎(横浜市立大学 大学院医学研究科 生殖生育病態医学)
- 青木 茂(横浜市立大学 附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター)
- 榎本 隆之(新潟大学 医歯学系産科婦人科学)
- 光田 信明(大阪母子医療センター)
- 池田 智明(大学院医学系研究科 生命医科学専攻・病態解明医学講座)
- 田畑 務(大学院医学系研究科 生命医科学専攻・病態解明医学講座)
- 石岡 伸一(札幌医科大学 産科周産期科)
- 上田 豊(大阪大学 大学院医学系研究科 産科学婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、母子の健康への影響が大きい感染性疾患として妊娠初期にスクリーニングが行われる、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、風疹、梅毒、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)、子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス〔HPV〕の持続感染に起因)に着目したものである。研究の中では、妊婦と医療施設双方の協力を得て、妊娠初期のスクリーニング結果判明後の疾患予防や健康管理の実施状況とその効果を明らかにするための前向き観察研究(妊婦コホート研究)を行う。さらに、妊婦健診のデータベース構築の有無の状況について、特に研究分担者が関与している自治体のヒアリングを行う。その中で、妊婦健診結果のデータベースを構築している自治体では、その方法および概要や利用状況について実地ヒアリング行う。最終的には、妊婦健診データベース化が進んでいる地域と行われていない地域で、上記6疾患の様々な指標を比較し、妊婦健診データベースの必要性や効果を明らかにする。本研究の最終的な目標は、妊娠初期感染性疾患スクリーニング結果が妊娠中から分娩後の母子の健康増進に及ぼす効果と、自治体の妊婦健診の結果把握や介入の必要性、介入が必要な項目を明らかにすることである。
研究方法
妊婦コホート研究は、各々の疾患のスクリーニング検査陽性頻度、精密検査結果、妊娠分娩経過と以下に示す項目も研究参加者と医療施設双方において調査する。妊婦の研究参加は、人を対象とする医学系研究に関する倫理委員会の承認を受けた各研究分担医療施設で妊婦本人から文書による同意を取得する。その後、研究の説明書とともに配布される研究参加者番号が記載されたチラシのQRコードを用いて、研究事務局アドレスへアクセスすることで参加登録が完了する。後日、参加登録者宛に安全性の高いウエッブアンケートサイトURLを記載したEメールを事務局より送信し、研究参加者は各々の番号を入力しアンケートに回答する。妊娠中は、初期スクリーニング検査の結果と疾患に対する知識や予防行動についての情報を得る。自治体のヒアリング調査は、妊婦健診結果のデータベース化の有無と管理方法、スクリーニング陽性者への介入状況などを実地調査する。
結果と考察
【主たる結果】
妊婦コホート研究においては、本年度に参加を表明している分娩取り扱い施設は25施設で、4施設が倫理委員会の承認待ちとなっている。アンケート回答数は約2000名となった。これまでの妊婦からのウェッブサイト上のアンケート調査では、B型肝炎検査問題ありと言われたが5人(0。46%)、C型肝炎検査で問題ありと言われたが1人(0。09%)、風疹抗体で問題があると言われたが90人 (8。20%:抗体価が低いと言われた妊婦が多い)、梅毒検査で問題ありと言われたが6人(0。55%)、HTLV-1抗体検査で問題あると言われたが4人(0。36%)頸がん検診で問題あると言われたが13人(1。19%)となっている。さらに、横浜市立大学附属病院と横浜市立大学附属市民総合医療センターの2施設において2018年5月から8月までの期間に、研究に同意した563名のうちウェブサイト上のアンケートに回答した241名の妊婦を対象とし、妊娠初期スクリーニング検査で上記6疾患に対し異常を指摘されたかの回答と、実際の検査結果を比較し正答率を調べた。その結果、回答と検査結果の一致率が極めて高いことが明らかになった。
自治体調査は、初年度は11自治体(5つの都道府県)の母子保健担当者への聞き取り調査を行った。妊婦健診結果を把握しデータベース化している自治体においても、子宮頸がん検診陽性者や肝炎の情報は他部署に引き継がれてはいないことが判明した。
【考察】今年度の研究から、6項目の妊娠初期検査スクリーニングの中で一定数は陽性者が研究参加していることが判明した。今後、一歳半健診終了後の結果が、妊婦健診結果を母児の健康増進に役立てるための課題抽出のポイントとなるため、引き続き研究参加者を増やしていくことが重要である。また、風疹感染予防対策は徹底されておらず、啓発が喫緊の課題であることも判明した。また、妊婦健診をデータベース化しているモデル自治体調査では、データベース化と活用の間に様々な障壁があることも判明した。
妊婦コホート研究においては、本年度に参加を表明している分娩取り扱い施設は25施設で、4施設が倫理委員会の承認待ちとなっている。アンケート回答数は約2000名となった。これまでの妊婦からのウェッブサイト上のアンケート調査では、B型肝炎検査問題ありと言われたが5人(0。46%)、C型肝炎検査で問題ありと言われたが1人(0。09%)、風疹抗体で問題があると言われたが90人 (8。20%:抗体価が低いと言われた妊婦が多い)、梅毒検査で問題ありと言われたが6人(0。55%)、HTLV-1抗体検査で問題あると言われたが4人(0。36%)頸がん検診で問題あると言われたが13人(1。19%)となっている。さらに、横浜市立大学附属病院と横浜市立大学附属市民総合医療センターの2施設において2018年5月から8月までの期間に、研究に同意した563名のうちウェブサイト上のアンケートに回答した241名の妊婦を対象とし、妊娠初期スクリーニング検査で上記6疾患に対し異常を指摘されたかの回答と、実際の検査結果を比較し正答率を調べた。その結果、回答と検査結果の一致率が極めて高いことが明らかになった。
自治体調査は、初年度は11自治体(5つの都道府県)の母子保健担当者への聞き取り調査を行った。妊婦健診結果を把握しデータベース化している自治体においても、子宮頸がん検診陽性者や肝炎の情報は他部署に引き継がれてはいないことが判明した。
【考察】今年度の研究から、6項目の妊娠初期検査スクリーニングの中で一定数は陽性者が研究参加していることが判明した。今後、一歳半健診終了後の結果が、妊婦健診結果を母児の健康増進に役立てるための課題抽出のポイントとなるため、引き続き研究参加者を増やしていくことが重要である。また、風疹感染予防対策は徹底されておらず、啓発が喫緊の課題であることも判明した。また、妊婦健診をデータベース化しているモデル自治体調査では、データベース化と活用の間に様々な障壁があることも判明した。
結論
本研究の手法により、妊娠初期検査として行われている感染性疾患に対する妊婦の知識・意識・行動が、詳細に把握できることが明らかになった。特に、現在アウトブレークが問題になっている風疹においては、多くの妊婦で抗体価が低いことが判明した。今後、自治体ヒアリングの結果と妊婦アンケート調査結果を統合解析していくことで、妊婦健診の母子健康増進への効果とともに、行政から介入すべき課題も明らかになっていくものと考える。
公開日・更新日
公開日
2020-10-28
更新日
-