文献情報
文献番号
201807009A
報告書区分
総括
研究課題名
産婦死亡に関する情報の管理体制の構築及び予防介入の展開に向けた研究
課題番号
H30-健やか-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(三重大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 竹田 省(順天堂大学 大学院医学研究 院)
- 松本 博志(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 吉益 晴夫(埼玉医科大学 総合医療センター)
- 相良 洋子(公益社団法人日本産婦人科医会)
- 山下 洋(九州大学 子どものこころの診療部)
- 関沢 明彦(昭和大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
12,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国の分娩施設数は約3000、一施設あたりの常勤医師数は約2.5人であり、欧米に比べて分散している。受診アクセスが良い反面、多くが精神科を擁していないクリニック診療であり、周産期精神障害が発生した場合の連携・紹介システムは未構築である。まずは、妊産褥婦の自殺搬送事例、死亡事例のデータを一元的に収集できる体制の整備が必要である。妊産褥婦の死亡事例のデータ収集体制は、既に池田らによって構築されているが、上記のように自殺症例の多くが把握されていない可能性がある。妊産褥婦精神障害事例のデータを一元的に収集するためには、精神科及び救急医療との連携が必要である。現在進行中の、日本母体救命システム普及事業を通して、全国の妊産褥精神疾患事例のデータ収集の一元化と、母体の自殺を防ぐシステムの確立を目指す。
研究方法
れた妊産婦死亡登録評価事業を中心に、一元的なデータ収集できる体制を維持していく。
さらに、妊産婦の自殺を防ぐために必要な知識の普及については、平成29年に日本産婦人科医会により「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」が作成され、特に各種質問票を用いた産後うつのスクリーニングは全国的にも普及してきている。
そのうち、自殺が原因と考えられる妊産褥婦重症搬送及び死亡事例に関して検討し、周産期医療体制と精神科救急医療体制の整備に関する研究を進める。データ収集の体制を整備するための協議会を精神科医療・救急医療と連携し発足させ、検討していく。
さらに、妊産婦の自殺を防ぐために必要な知識の普及については、平成29年に日本産婦人科医会により「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」が作成され、特に各種質問票を用いた産後うつのスクリーニングは全国的にも普及してきている。
そのうち、自殺が原因と考えられる妊産褥婦重症搬送及び死亡事例に関して検討し、周産期医療体制と精神科救急医療体制の整備に関する研究を進める。データ収集の体制を整備するための協議会を精神科医療・救急医療と連携し発足させ、検討していく。
結果と考察
日本産科婦人科医会が中心となり、周産期メンタルヘルスプロジェクトを発足させた。
周産期医療従事者に対する「母と子のメンタルヘルスケア研修会」の指導者講習会及び保健師・助産師を対象にした研修会の計画、実施が行われている。入門編はすでに東京、大分、岡山で4回開催済、今後も定期的な開催が各地で予定されている。また、入門編を受講したうえでの指導者講習会は東京、福岡で開催され、これも同様に今後も継続開催予定である。プログラムの内容としては、周産期メンタルヘルスケアの基礎知識や質問票の使い方、精神療法の基礎(傾聴と共感)、多職種連携や地域連携、社会資源の活用を、講習会やe-learningを併用して段階的に学んでいく内容となっている。
評価方法としては、モデル地区(品川区、大田区)において、上記講習会を経たうえで分娩施設と行政機関が定期的に連絡会及び評価会を開催することにより、介入の有用性を評価する。評価方法としては、PMPHQ: Perinatal Mental Health Perception Questionaireを用いる。これは現在も継続中であり、今後効果について発表予定である。
周産期医療従事者に対する「母と子のメンタルヘルスケア研修会」の指導者講習会及び保健師・助産師を対象にした研修会の計画、実施が行われている。入門編はすでに東京、大分、岡山で4回開催済、今後も定期的な開催が各地で予定されている。また、入門編を受講したうえでの指導者講習会は東京、福岡で開催され、これも同様に今後も継続開催予定である。プログラムの内容としては、周産期メンタルヘルスケアの基礎知識や質問票の使い方、精神療法の基礎(傾聴と共感)、多職種連携や地域連携、社会資源の活用を、講習会やe-learningを併用して段階的に学んでいく内容となっている。
評価方法としては、モデル地区(品川区、大田区)において、上記講習会を経たうえで分娩施設と行政機関が定期的に連絡会及び評価会を開催することにより、介入の有用性を評価する。評価方法としては、PMPHQ: Perinatal Mental Health Perception Questionaireを用いる。これは現在も継続中であり、今後効果について発表予定である。
結論
周産期精神障害に対する産科医療従事者によるスクリーニング及び初期介入の重要性が認識されてきた。この点に関する介入はすでに開始され、全国的に一定の効果を奏していると考える。この活動は今後も全国的に展開していくべきである。
しかし、既に死亡(自殺)した症例の後方視的検討は、監察医の管轄となり介入が困難である点と、異常死と判断された場合の検案書には、妊娠中か、あるいは産後何か月か、といった記入欄の有無は地域によって差があり、これらの是正を提言していく必要もあると考える。
また、精神科医に対する周産期精神障害の特殊性(ストレス源からの分離困難)と対策を考えていく必要もある。
救急医の視点でも妊産婦の自殺には注目されており、日本臨床救急医学会によって妊産婦の自殺予防のためのワーキンググループが発足した。今後は、救急医の視点から、自殺搬送例、自殺未遂例のデータを収集していく必要があると考える。また、上記母体救命講習会にも周産期精神障害に対する初期対応の内容を盛り込んでいくべきと考える。
1年間の活動により、「母と子のメンタルヘルスケア研修会」は広がりを見せ、産科医療従事者の周産期精神障害への関心は高まっている。平成31年度以降は、これらの開催の効果を評価していくことが必要である。また、症例評価検討委員会で把握されていない既自殺例や自殺未遂例に関し、救命医の視点から症例を集積し、その特徴や対策を協議し、その結果を、既に存在している日本母体救命システム普及協議会による母体救命コースに組み込んでいくことを考慮すべきである。この動きによって、地域での周産期精神障害の連絡・情報共有体制が構築されることも期待する。
しかし、既に死亡(自殺)した症例の後方視的検討は、監察医の管轄となり介入が困難である点と、異常死と判断された場合の検案書には、妊娠中か、あるいは産後何か月か、といった記入欄の有無は地域によって差があり、これらの是正を提言していく必要もあると考える。
また、精神科医に対する周産期精神障害の特殊性(ストレス源からの分離困難)と対策を考えていく必要もある。
救急医の視点でも妊産婦の自殺には注目されており、日本臨床救急医学会によって妊産婦の自殺予防のためのワーキンググループが発足した。今後は、救急医の視点から、自殺搬送例、自殺未遂例のデータを収集していく必要があると考える。また、上記母体救命講習会にも周産期精神障害に対する初期対応の内容を盛り込んでいくべきと考える。
1年間の活動により、「母と子のメンタルヘルスケア研修会」は広がりを見せ、産科医療従事者の周産期精神障害への関心は高まっている。平成31年度以降は、これらの開催の効果を評価していくことが必要である。また、症例評価検討委員会で把握されていない既自殺例や自殺未遂例に関し、救命医の視点から症例を集積し、その特徴や対策を協議し、その結果を、既に存在している日本母体救命システム普及協議会による母体救命コースに組み込んでいくことを考慮すべきである。この動きによって、地域での周産期精神障害の連絡・情報共有体制が構築されることも期待する。
公開日・更新日
公開日
2019-07-01
更新日
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