文献情報
文献番号
201807004A
報告書区分
総括
研究課題名
出生前診断実施時の遺伝カウンセリング体制の構築に関する研究
課題番号
H29-健やか-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
小西 郁生(京都大学 大学院医学研究科 器官外科学講座婦人科産科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 三宅 秀彦(お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科 ライフサイエンス専攻 遺伝カウンセリングコース)
- 山田 重人(京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
- 山田 崇弘(京都大学 医学部附属病院 遺伝子診療部)
- 関沢 明彦(昭和大学 医学部)
- 浦野 真理(東京女子医科大学病院 遺伝子医療センターゲノム診療科)
- 金井 誠(信州大学 大学院医学系研究科保健学専攻)
- 斎藤 加代子(東京女子医科大学 臨床ゲノムセンター)
- 佐村 修(東京慈恵会医科大学 産婦人科教室)
- 澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
- 高田 史男(北里大学 大学院医療系研究科臨床遺伝医学講座)
- 中込 さと子(信州大学 医学部保健学科看護学専攻)
- 吉橋 博史(東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科)
- 久具 宏司(東京都立墨東病院 産婦人科)
- 池田 真理子(谷口 真理子) (藤田医科大学病院 臨床遺伝科)
- 左合 治彦(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 佐々木 愛子(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 佐々木 規子(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 鈴森 伸宏(名古屋市立大学 大学院医学研究科 産科婦人科)
- 福島 明宗(岩手医科大学 医学部 臨床遺伝学科)
- 福嶋 義光(信州大学 医学部)
- 蒔田 芳男(旭川医科大学 医学部教育センター)
- 松原 洋一(国立成育医療研究センター)
- 江川 真希子(東京医科歯科大学 茨城県小児・周産期地域医療学講座)
- 小林 朋子(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 ゲノム医学普及啓発寄附研究部門)
- 西垣 昌和(京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
- 浜之上 はるか(横浜市立大学 附属病院 遺伝子診療科)
- 平原 史樹(国立病院機構横浜医療センター)
- 増崎 英明(長崎大学)
- 三浦 清徳(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 吉田 雅幸(東京医科歯科大学 生命倫理研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,607,000円
研究者交替、所属機関変更
浦野 真理
東京女子医科大学附属遺伝子医療センター
平成30年4月1日から平成30年4月30日
↓
東京女子科大学病院遺伝子医療センターゲノム診療科
平成30年5月1日以降
斎藤 加代子
東京女子医科大学附属遺伝子医療センター
平成30年4月1日から平成30年4月30日
↓
東京女子医科大学臨床ゲノムセンター
平成30年5月1日以降
池田 真理子
藤田保健衛生大学
平成30年4月1日から平成30年10月9日
↓
藤田医科大学
平成30年10月10日以降
中込 さと子
山梨大学大学院総合研究部
平成30年4月1日から平成30年12月31日
↓
信州大学医学部
平成31年1月1日以降
研究報告書(概要版)
研究目的
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)が平成25年度より臨床研究として開始されたことにより、遺伝カウンセリングの重要性に焦点が当たっている。しかし、出生前診断に関する遺伝カウンセリングの全てに臨床遺伝の専門家が対応するには限界があり、さらに本邦の産婦人科医は減少傾向にあるため、有効な人材活用に向けた教育体制の構築が必要である。一方で、出生前診断の受け手側である妊婦自身が、自律的な判断が出来るようなリテラシーの醸成を含めて、社会体制を整備することも、出生前診断のシステム構築を効率よく行う上で極めて重要な課題である。そこで、本研究班では、妊婦への出生前診断体制を構築するための教育体制、一般に向けた出生前診断に関する啓発方法を検討することを目的とした。
研究方法
主任研究者が以下の研究課題の成果を総括する。(小西)
本研究班では、分科会により研究を行い、各班の研究成果を相互に利用し、統合的な研究を行うため、3名の研究統括補佐をおき、各分科会の調整、統合を行う。(三宅、山田重人、山田崇弘)
分科会は、以下の3つの分科会を設定する。
第1分科会:出生前診断の前後において、妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルの作成(関沢、浦野、金井、斎藤、佐村、澤井、高田、中込、吉橋)
第2分科会:遺伝カウンセリングに関する知識及び技術向上に関する医療従事者向けの研修プログラムの開発(久具、池田、左合、佐々木愛子、佐々木規子、鈴森、福島、福嶋、蒔田)
第3分科会:一般の妊婦及びその家族に対する出生前診断に関する適切な普及および啓発方法の検討(松原、江川、小林、西垣、浜之上、平原、増崎、三浦、吉田)
本研究班では、分科会により研究を行い、各班の研究成果を相互に利用し、統合的な研究を行うため、3名の研究統括補佐をおき、各分科会の調整、統合を行う。(三宅、山田重人、山田崇弘)
分科会は、以下の3つの分科会を設定する。
第1分科会:出生前診断の前後において、妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルの作成(関沢、浦野、金井、斎藤、佐村、澤井、高田、中込、吉橋)
第2分科会:遺伝カウンセリングに関する知識及び技術向上に関する医療従事者向けの研修プログラムの開発(久具、池田、左合、佐々木愛子、佐々木規子、鈴森、福島、福嶋、蒔田)
第3分科会:一般の妊婦及びその家族に対する出生前診断に関する適切な普及および啓発方法の検討(松原、江川、小林、西垣、浜之上、平原、増崎、三浦、吉田)
結果と考察
第1分科会では、出生前遺伝学的検査(出生前検査)において、産科1次施設における適切な1次対応と、それに連携した遺伝カウンセリングとしての2次対応が重要である。臨床遺伝の専門家でない産科医療従事者が出生前遺伝学的検査に関して妊婦に提供すべき情報やその伝え方等を学習するマニュアルの作成を行い、産科1次施設で実際に試用・評価し、さらに本マニュアルをテキストとした講義シリーズを作成し学会において試行した。
第2分科会では、臨床遺伝の専門家でない医療従事者が出生前診断において修得すべき目標を達成するために、出生前診断に関わる1次対応のロールプレイ事例集を作成し、その事例集を産科診療に携わる医療者を対象とした研修会で試用し、高い評価を得た。
第3分科会では、出生前検査経験者へのインタビュー調査および一般集団における出生前検査の認識調査をもとに、出生前検査に関するリテラシー向上を目的とした介入をデザインした。対象を「1.小・中・高の教育段階にある未成年」「2.妊娠・出産の可能性がある年齢層の一般集団」「3.妊娠・出産を考えているカップル」「4.妊娠中のカップル」として段階的に設定し、web、マスメディア、小・中・高における教育を媒体として、専門家からの情報に加え、実際の体験談を取り入れた介入を展開することとした。
以上により、遺伝カウンセリング体制の構築に必要となるマニュアルや教材を作成し、実際に試用して評価を行なった。また、出生前診断の適切な普及および啓発に向け、出生前検査に関するリテラシー向上を目的とした介入をデザインすることができた。
第2分科会では、臨床遺伝の専門家でない医療従事者が出生前診断において修得すべき目標を達成するために、出生前診断に関わる1次対応のロールプレイ事例集を作成し、その事例集を産科診療に携わる医療者を対象とした研修会で試用し、高い評価を得た。
第3分科会では、出生前検査経験者へのインタビュー調査および一般集団における出生前検査の認識調査をもとに、出生前検査に関するリテラシー向上を目的とした介入をデザインした。対象を「1.小・中・高の教育段階にある未成年」「2.妊娠・出産の可能性がある年齢層の一般集団」「3.妊娠・出産を考えているカップル」「4.妊娠中のカップル」として段階的に設定し、web、マスメディア、小・中・高における教育を媒体として、専門家からの情報に加え、実際の体験談を取り入れた介入を展開することとした。
以上により、遺伝カウンセリング体制の構築に必要となるマニュアルや教材を作成し、実際に試用して評価を行なった。また、出生前診断の適切な普及および啓発に向け、出生前検査に関するリテラシー向上を目的とした介入をデザインすることができた。
結論
本研究では3つの分科会に分けて研究を行った。第1分科会では臨床遺伝の専門家でない産科医療従事者が出生前遺伝学的検査に関して妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアル案を作成・改定し、研修プログラムとリンクした形で研修に実装する体制を作った。第2分科会では産婦人科の一般診療における出生前検査に対応するためのロールプレイ研修カリキュラムを作成し、受講者から高い評価を得た。本研修カリキュラムは、実践的な内容であり、単なる情報提供の疑似体験に留まらず、心理社会的支援やコミュニケーションの練習にもなり得る。第3分科会では出生前検査関連リテラシー向上のために、介入の目的を、出生前検査に関する選択を迫られた際に、混乱することなく、精神的余裕をもって決断ができるようレディネスを高めることに設定し、リテラシー要素を定義したうえで、それらの獲得段階を定めた。以上の成果から、遺伝カウンセリング体制の構築に必要となるマニュアルや教材、および講習会を行える体制が整ったと言える。次年度は各分科会の研究を発展・統合させていくことで、出生前遺伝学的検査についての遺伝カウンセリング提供体制の整備につなげたい。
公開日・更新日
公開日
2019-07-01
更新日
-