小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性の検証に関する研究

文献情報

文献番号
201807002A
報告書区分
総括
研究課題名
小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性の検証に関する研究
課題番号
H28-健やか-一般-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
溝口 史剛(前橋赤十字病院 小児科部)
研究分担者(所属機関)
  • 柳川敏彦(和歌山県立医科大学保健看護学部保健看護学科)
  • 沼口敦(名古屋大学救急科)
  • 小林博(日本医師会、岐阜県医師会)
  • 藤原武男(東京医科歯科大学国際健康推進医学分野)
  • 神薗淳司(北九州八幡病院小児科)
  • 岩瀬博太郎(千葉大学法医学教育研究センター、東京大学大学院法医学)
  • 山中龍宏(産業技術総合研究所人工知能研究センター)
  • 森臨太郎(国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部)
  • 小熊栄二(埼玉県立医療センター放射線科)
  • 小保内俊雅(多摩北部医療センター小児科)
  • 菊地祐子(東京都立総合医療センター心理福祉科)
  • 尾角光美(一般社団法人リヴオン)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,689,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、いくつかの諸外国で既に社会実装されている、小児死亡時に詳細な検証を行い、同様の死を防ぐ手立てを講じるチャイルド・デス・レビュー(CDR)を日本に社会実装させるための問題点や方法論を探ることにある。最終年度である平成30年度の12月8日には、成育基本法が成立し、その15条の2で「国及び地方公共団体は,成育過程にある者が死亡した場合におけるその死亡の原因に関する情報に関し,その収集,管理,活用等に関する体制の整備,データベースの整備その他の必要な施策を講ずるものとする」と明記され、施策としてCDR制度を構築していく理念法は整い、また12月5日には不詳死に関する各種通知(医政発1205第1号、政統発1205第1号)が発出され、死因等を確定することができない場合は、「死亡の原因」欄を「不詳(検索中)」とし、「死因の種類」欄を「12. 不詳の死」と暫定的に記載すること、そしてその後、解剖、薬毒物検査、病理組織学的検査の結果等により死因等を確定又は変更した場合は、速やかにその旨を報告することが明記されるとともに、諸検査を行った医師は、死体検案書等を交付した医師に対して死因等に係る情報を、捜査機関を介するなどして提供することとされ、死亡診断書/死体検案書に基づく人口動態調査結果はより正確になることが期待されるとともに、臨床医と法医学者との間で情報を共有する動きが促進される流れとなった。実際、一人の子どもの死から学び、社会にその情報を生かしていくチャイルド・デス・レビュー(CDR)は、いよいよ本邦においても認知は少しずつ深まりつつあり、社会実装に向けた取り組みを試行し始めた地域は年々増えつつある。本研究の最終年度である平成30年度は、研究終了後もそのような取り組みを各地域が継続させるための取り組みを行った。
研究方法
3か年で実施した小児科学会子どもの死亡登録検証委員会との社会実装のための合同拡大パイロット研究の登録作業を終え、その解析を行った。また本研究の集大成として、CDRの先進国と言える米国と英国から、そして今まさに法制化に向けて日本と同程度の実施状況にある台湾から講師を招き、国際シンポジウムとワークショップを開催した。WHOがH30年末に「Operational guide for facility-based audit and review of paediatric mortality(関係機関における小児死亡の監査[実態把握]と検証のための運用ガイド)」を発行したためその翻訳を行い、グローバルスタンダードとして推奨されるCDRの方法論を反映した「チャイルド・デス・レビュー(CDR)を地域で社会実装するための準備読本」の作成を行った。またCDRが社会実装された際に遺族に配布するリーフレットの内容についても、当研究班の場で遺族側の観点から検討を行った。
結果と考察
拡大パイロット研究では、148施設から2348症例の回答が得られ、うち1333例(56.8%)は詳細検証が必要な事例であった。7地域で,当該地域における多機関検証会議が試行された。構造化された検証内容を提案し、おおむねこれに沿った会議が実施され、本方法論は医療者にCDRへの理解と協力を促し,検証の基礎を提案するために有効であることが再現性を持って示された。その他にも計12の地域でCDRの社会実装に向けた協議が開催されるに至った。その一方で,「研究」としてCDRを実施することによる限界も明らかにされた。
また国際シンポジウムの場での討論を通じ、社会実装の準備において模擬事例を用いた検証であれば、何らの現行法規に触れることなく地域での社会実装準備を行いうることを改めて確認した。これらの成果は、作成した準備読本にすべて反映をさせた。なお遺族に配布する目的での作成を目指したリーフレットに関しては、現状では、時期尚早と考え、日本版リーフレットの作成までは行わなかったが、社会実装が進んだ段階で、今回の研究の知見を組み入れたリーフレットの作成を行うために、議論を深めた。また当研究班発出の位置づけではないが、当研究班と合同で歩みを進めてきた日本小児科学会子どもの死亡登録検証委員会が、学会員に向けて「子どもの死亡の原因に関する情報の収集,管理,活⽤用等に関する体制,データベースの整備等に関する提⾔」を平成31年度末に発出するに至った。
結論
CDRの社会実装を進めていく取り組みを研究終了後も進めるため、3年間の取り組みの成果は最終年度にほぼすべて各種コンテンツに反映することが出来た。3年間の取り組みで、全国で幅広く社会実装が進む状況には到達はできなかったものの、多くの地域にその種を植え、議論を促進させるための羅針盤を示すことが出来た。

公開日・更新日

公開日
2019-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201807002B
報告書区分
総合
研究課題名
小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性の検証に関する研究
課題番号
H28-健やか-一般-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
溝口 史剛(前橋赤十字病院 小児科部)
研究分担者(所属機関)
  • 柳川敏彦(和歌山県立医科大学保健看護学部保健看護学科)
  • 沼口敦(名古屋大学救急科)
  • 小林博(日本医師会、岐阜県医師会)
  • 藤原武男(東京医科歯科大学国際健康推進医学分野)
  • 神薗淳司(北九州八幡病院小児科)
  • 岩瀬博太郎(千葉大学法医学教育研究センター、東京大学大学院法医学)
  • 山中龍宏(産業技術総合研究所人工知能研究センター)
  • 森臨太郎(国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部)
  • 小熊栄二(埼玉県立小児医療センター放射線科)
  • 小保内俊雅(多摩北部医療センター小児科)
  • 菊地祐子(東京都立総合医療センター心理福祉科)
  • 尾角光美(一般社団法人リヴオン)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、多くの国々で制度化され既に施行されている、小児死亡時に詳細な検証を行い、同様の死を防ぐ手立てを講じるチャイルド・デス・レビュー(CDR)を本邦で社会実装するための実践と課題の明確化を目的とし、3か年の研究を行った。最終年度の12月8日には成育基本法が成立し、施策としてCDR制度を構築していくための法制化に至った。また12月5日には不詳死に関する各種通知(医政発1205第1号、政統発1205第1号)が発出され、臨床医と法医学者との間で情報を共有する動きが促進される流れとなった。実際、CDRの認知は本邦においても少しずつ深まり、社会実装に向けた取り組みを試行し始めた地域は年々増えつつある。本研究班は一貫して各地域がそのような取り組みに着手・継続するための取り組みを行った。
研究方法
小児科学会子どもの死亡登録検証委員会との社会実装のための合同拡大パイロット研究を行うためにHPを立ち上げ、小児科学会の専門研修施設を主として研究参加を募り、登録・検証作業を行った。また、各分担研究班は諸外国のCDR、救急医療との連携、法医学-臨床医学連携、警察医との連携、新生児死亡登録システムとのリンケージ、死亡時画像診断の在り方、将来的な前方視的情報収取の在り方、司法事例の情報収集の課題、グリーフケアの在り方、につき現状を検討し、それぞれの分野に関しての課題を抽出した。
結果と考察
拡大パイロット研究では、最終的に、29都道府県の148施設から、計2348症例の登録が得られ、うち1333例(56.8%)は詳細検証が必要な事例であった。このうち10都道府県が多機関連携でのCDR実施についての協議がなされ、群馬県、愛知県、香川県、三重県、千葉県、京都府では多機関連携でのCDR会合が行われた。検証は当研究班の推奨する構造化検証として行われ、本方法論は,医療者にCDRへの理解と協力を促し,検証の基礎を提案するために有効であることが再現性を持って示された。その一方で「医療者」が「研究」として「後方視的」に行うCDRの限界も明らかにされた。
 上記解決のためには、法制化や事業化が必要であるが、当研究班の各分担研究班は、病院外死亡事例の検視を担当する警察協力医師のうち、小児科医の占める割合は2.3%にすぎず小児医療の知見が反映し難いこと、成人救急-小児救急との連携体制が確立されておらず、小児死亡のうち乳児の10%、幼児の15%、学童の20%が、死亡の際に救急医と小児が連携しえていないこと、95%の保健師がCDR事業の主幹を保健所が担うことに困難を感じていること、小児死亡に際し8割近くの病院がグリーフケアを提供しておらず、医療現場で提供体制はほとんど整えられていないこと、などのCDRを社会実装する上での解決すべき各種の問題を抽出した。
研究のキックオフ時と、ゴール時にシンポジウム・国際シンポジウムの実施を行い、3年間の取り組みにおいて社会実装に向けた諸問題がより明確化したのを確認した。また3か年の研究で、「英国RCPCHチャイルド・デス・レビュー・ガイドライン」「英国CDR登録フォーム」「英国ララバイトラスト:子どもの死亡事例検証:両親、養育者のためのガイド」「英国ララバイトラスト:赤ちゃんが予期せず、突然に亡くなったときに」「WHO:関係機関における小児死亡の監査(実態把握)と検証のための運用ガイド」など、公刊されているCDRに関する諸外国のガイドラインについてはそのほとんどを翻訳した。
これらの成果は、作成した準備読本にすべて反映をさせた。なお遺族に配布する目的での作成を目指したリーフレットに関しては、現状では、時期尚早と考え、日本版リーフレットの作成までは行わなかったが、社会実装が進んだ段階で、今回の研究の知見を組み入れたリーフレットの作成を行うために、議論を深めた。また当研究班発出の位置づけではないが、当研究班と合同で歩みを進めてきた日本小児科学会子どもの死亡登録検証委員会が、学会員に向けて「子どもの死亡の原因に関する情報の収集,管理,活⽤用等に関する体制,データベースの整備等に関する提⾔」を平成31年度末に発出するに至った。
結論
3年間の取り組みの成果は最終年度においてほぼすべて、各種コンテンツに反映することが出来た。3年間の取り組みで、全国で幅広く社会実装が進む状況には到達はできなかったものの、多くの地域にその種を植え、議論を促進させるための羅針盤を示すことが出来た。本研究班の成果は後続研究である、厚生労働科学研究費助成(健やか次世代育成総合研究事業)「わが国の至適なチャイルド・デス・レビュー制度を確立するための研究(研究班長:沼口敦)」においてさらに深めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201807002C

収支報告書

文献番号
201807002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,405,000円
(2)補助金確定額
4,405,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 765,435円
人件費・謝金 144,604円
旅費 1,757,902円
その他 1,003,994円
間接経費 733,866円
合計 4,405,801円

備考

備考
支出の端数となった801円は研究機関の自己資金とした。

公開日・更新日

公開日
2021-07-12
更新日
-