文献情報
文献番号
201806007A
報告書区分
総括
研究課題名
消防救急車の代替搬送手段における病院救急車の活用に資する研究
課題番号
H30-特別-指定-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 重彦(北九州市立八幡病院 北九州市立八幡病院 救命救急センター)
研究分担者(所属機関)
- 森村 尚登(東京大学 大学院医学系研究科学)
- 北小屋 裕(京都橘大学 救急救命学科)
- 坂本 喜彦(北九州総合病院 救急救命センター)
- 辻 友篤(東海大学 医学部外科学系救命救急医学)
- 岡本 好司(北九州市立八幡病院 消化器・肝臓病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,520,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
転院搬送における消防救急車の適正利用を目的に、消防救急車に代わる患者搬送手段として、病院に属する救急救命士(以下、病院救命士)が病院救急車に搭乗して患者搬送業務を行う、緊急走行しない緩やかな救急搬送システムの研究を行った。
研究方法
転院搬送における消防救急車以外の代替搬送手段として、病院救急車の活用を推進するため、以下の7つの分担研究を行った。①転院搬送における病院救急車の積極的活用に係る課題と解決策に関する研究においては、病院救急車を運用する病院側の負担と解決策について地域医師会、病院救急車保有病院等関係者間で協議をした。②転院搬送に病院救急車を活用するための課題の抽出と解決策の検討においては、全国の政令指定都市の消防本部に対して、転院搬送の実情、消防機関と関係機関との協議経過についてアンケート調査を行った。③病院に属する救急救命士(病院救命士)の病院内業務及び患者搬送業務の実態については、全国の救命救急センター及び地域医療支援病院を対象に、病院救命士の院内業務及び患者等搬送業務の実態及び消防機関に属さない救急救命士の患者搬送業務や院内業務への活用が当該医療機関の医師・看護師の負担軽減に及ぼす効果についてアンケート調査を行った。④消防機関以外に属する救急救命士の患者等搬送業務におけるメディカルコントロール(MC)体制及び救急救命処置範囲に関する研究においては、地域MC協議会に所属するMC医師と法律家、消防機関職員と協議を行い、病院救命士、民間救命士の救急救命処置範囲と再研修制度ついて協議した。⑤病院救急車の積極的活用における病院負担等に関する検討においては、福岡県内の病院を対象にアンケート調査を行い、病院救急車による搬送業務の採算性や負担軽減策について検討した。⑥都市部における病院救急車の運用に係る課題の整理と解決方略に係る指針の作成においては、人口100万以上の政令指定都市の病院を対象に病院救急車運用の現状と課題についてアンケート調査を実施した。⑦北九州地域における病院救命士が搭乗する病院救急車による患者搬送業務の試験運用においては、北九州地域MC協議会が所管する地域において、病院救命士を雇用している3つの医療機関(いずれもMC協議会施設)が参加し、低緊急又は病状が安定した患者を対象に、病院救命士が搭乗する病院救急車による迎え搬送の試験運用を行った。
結果と考察
地域救急業務メディカルコントロール(MC)協議会(以下、地域MC協議会)において、消防機関以外に属する救急救命士の救急救命処置範囲、事後検証、再研修体制を定め、病院救急車による緊急度が低い又は病状の安定した患者搬送において、オンラインMC下に病院救命士が救急救命処置を実施できる体制を構築した。病院救急車の活用が進まない病院側の要因として、①運用に掛かる経費負担、②事故等への責任と保障の負担、③患者搬送業務への医師、看護師の出務負担等が挙げられた。病院救急車を保有する病院の負担軽減策として、診療報酬上の加算、自治体による必要経費等の支援を求める意見が多かった。病院救急車の活用促進には、病院救急車を運用する病院側負担への支援策の検討が急務である。
結論
緊急度が低い又は病状の安定した患者搬送業務において、消防機関以外の救急救命士が現場及び搬送車内で行う救急救命処置に対する新たなMC体制を確立した。本研究成果として、働き方改革の観点から、病院救命士の活用は患者搬送業務における医師、看護師の負担を軽減し、消防救急車の適正使用による消防職員の労働環境改善にも繋がると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2020-06-04
更新日
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