文献情報
文献番号
201806005A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の疾病負担に基づく医薬品、医療機器及び医療技術の開発等の資源配分の確立のための研究
課題番号
H30-特別-指定-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
研究分担者(所属機関)
- 野村 周平(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
- Md Mizanur Rahman (エムディー ミジャヌール ラーマン)(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
6,141,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
保健政策や研究開発における優先順位決定のためには、疾患別の死亡や障害に関するエビデンスが必須である。高齢化と疾病構造の転換が進み医療費が増大する中、WHOや世界各国は、死亡と障害による負荷を包括的に示す尺度である疾病負荷(disease burden)を政策や研究開発の重要な判断基準として活用している。しかし、我が国では、疾病負荷に基づく研究・開発の優先順位決定に関する議論は未だ十分になされていない。
我が国の公的研究開発費の総額は、英国などと比べても遜色がない。しかし、その配分は、主にこれまでのリソーズ配分を踏襲し、高齢化・疾病構造の変化を考慮に入れた疾病負荷による優先順位を反映していない。創薬・医療機器開発が効率的に行われるためには、国民の疾病負荷を把握し、開発の優先順位を決定し、戦略的に対応していくことが必要である。本研究の目的は、これまでの国内外の疾病負荷研究に基づき、1)将来予測も念頭に入れた我が国の国内疾病負荷の分析、そして2)重要な疾患に起因する疾病負荷に関して、それに対応する医薬品、医療機器及び医療技術との開発ギャップの比較検討をすることである。
我が国の公的研究開発費の総額は、英国などと比べても遜色がない。しかし、その配分は、主にこれまでのリソーズ配分を踏襲し、高齢化・疾病構造の変化を考慮に入れた疾病負荷による優先順位を反映していない。創薬・医療機器開発が効率的に行われるためには、国民の疾病負荷を把握し、開発の優先順位を決定し、戦略的に対応していくことが必要である。本研究の目的は、これまでの国内外の疾病負荷研究に基づき、1)将来予測も念頭に入れた我が国の国内疾病負荷の分析、そして2)重要な疾患に起因する疾病負荷に関して、それに対応する医薬品、医療機器及び医療技術との開発ギャップの比較検討をすることである。
研究方法
本研究では、国内外の疾病負荷研究から可能な限り最新の推計値を導き出し、日本及び先進国の医薬品、医療機器及び医療技術の疾病分野別研究開発費の文献調査、関係機関、企業、国際機関や研究機関の報告書等の系統的レビューを行う。
結果と考察
疾病負荷の将来予測には、2017年における世界の疾病負荷研究 (Global Burden of Disease 2017) の最新推定値等を利用した。DALYs(disability adjusted life years:死亡と障害の混合指標)の2040年までの予測推計値より、非感染性疾患や外傷の疾病負荷が今後増加する傾向が認められた。悪性新生物が減少する一方、男女ともにアルツハイマー病、腰痛、転倒、老人性難聴などの高齢化に伴う疾病による負荷が増加すると推測される。平均寿命の延伸や慢性疾患の増加に伴い、長期継続的な医療サービスの需要や社会保障費が増大することが予想される。今研究結果より保健政策や医療技術の開発に対する優先順位付けおよび資源配分に資することが期待される。
一方で、公的研究費—厚生労働省科学研究費、文部科学省科学研究費(JSPS)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究開発費—の、2015~2016年度における疾病別の費用配分と疾病負荷を比較すると、配分は必ずしも死亡やDALYsの大きさと関連していなかった。心血管疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病・腎疾患、筋骨格系傷害(DALYs)、 交通傷害、自傷と暴力などは、疾病負荷の大きさに比べ研究費配分が少ない。他方、その他の感染症、消化器疾患、その他の非感染症は多い傾向が見られた。疾病構造や疾病負荷の傾向及び将来推計に対応して、今後の我が国における研究費配分について検討していく必要がある。
一方で、公的研究費—厚生労働省科学研究費、文部科学省科学研究費(JSPS)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究開発費—の、2015~2016年度における疾病別の費用配分と疾病負荷を比較すると、配分は必ずしも死亡やDALYsの大きさと関連していなかった。心血管疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病・腎疾患、筋骨格系傷害(DALYs)、 交通傷害、自傷と暴力などは、疾病負荷の大きさに比べ研究費配分が少ない。他方、その他の感染症、消化器疾患、その他の非感染症は多い傾向が見られた。疾病構造や疾病負荷の傾向及び将来推計に対応して、今後の我が国における研究費配分について検討していく必要がある。
結論
研究申請者らは、国内外の疾病負荷研究を行ってきた。次期健康・医療戦略の策定に向けた政府内での検討がなされており、本研究の成果は、戦略の目的を達成するための効果的かつ効率的な2020年度以降の資源配分のエビデンスとしての活用が期待される。また、本研究の成果を国内外に積極的に発信し(MEDITECH FINDER等)、より透明性の高いエビデンス形成のための保健システム評価基盤を形成する。
公開日・更新日
公開日
2019-07-01
更新日
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