文献情報
文献番号
201806004A
報告書区分
総括
研究課題名
食物アレルギー診療における重篤な誘発症状に関する全国調査
課題番号
H30-特別-指定-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 藤澤 隆夫(国立病院機構三重病院)
- 伊藤 浩明(あいち小児保健医療総合 センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食物アレルギー診療に関連する重篤な有害事象の実態を把握し、食物アレルギー診療に対するより安全な検査方法・管理方法を確立することを目的として、食物経口負荷試験に関連する重篤な有害事象に関する調査、2)経口免疫療法の実施状況に関する調査を行った。
研究方法
【1.食物経口負荷試験に関連する重篤な有害事象に関する調査】
日本小児科学会専門医研修プログラム基幹・連携施設で食物経口負荷試験(Oral food challenge: OFC)を実施している366施設を対象に、OFCの実施状況・陽性率・アナフィラキシーガイドラインにおけるグレード3に相当する症例の有無などについて調査した(一次調査)。グレード3の症例があった施設から各症例の臨床情報について調査した(二次調査)。
【2.経口免疫療法の実施状況に関する調査】
日本小児科学会専門医研修プログラム 基幹・連携施設759施設を対象に経口免疫療法(OIT)の実施の有無と倫理委員会における承認状況について調査を行った。
日本小児科学会専門医研修プログラム基幹・連携施設で食物経口負荷試験(Oral food challenge: OFC)を実施している366施設を対象に、OFCの実施状況・陽性率・アナフィラキシーガイドラインにおけるグレード3に相当する症例の有無などについて調査した(一次調査)。グレード3の症例があった施設から各症例の臨床情報について調査した(二次調査)。
【2.経口免疫療法の実施状況に関する調査】
日本小児科学会専門医研修プログラム 基幹・連携施設759施設を対象に経口免疫療法(OIT)の実施の有無と倫理委員会における承認状況について調査を行った。
結果と考察
【1.食物経口負荷試験に関連する重篤な有害事象に関する調査】
調査対象は2017年1月~12月に実施したOFCとし、一次調査では236施設から回答が得られ(回答率64.4%)、そのうちグレード3の症例を認めたのは121施設(51.3%)であった。121施設中78施設(協力率64.5%)から二次調査への協力が得られた。78施設での総OFC件数は30,725件、抗原別では鶏卵が13,681件、牛乳が6,607件、小麦が3,114件、ピーナッツが1,483件であった。OFC陽性は9617件(31.3%)、陽性者のうちグレード3の症例の割合は5.2%(495件)で、主な抗原別には鶏卵が187/4226件(1.4%)、牛乳が137/2557件(2.1%)、小麦が92/1264件(3.0%)、ピーナッツが23/455件(1.6%)であった。OFC陽性率・グレード3症例の割合は施設により著しく異なっていた(陽性率の範囲:10.1~83.3%、グレード3症例の割合の範囲:0.5~50.0%)。
グレード3を呈した495例の年齢中央値は5歳、61.6%に食物によるアナフィラキシーの既往があり、42.6%に当該抗原によるアナフィラキシー既往があり、68.3%は当該抗原を完全除去していた。鶏卵・牛乳・小麦ではガイドラインにおける「中等量」「日常摂取量」を目標とした総負荷量が86.8%(356/410件)で、うち「中等量」の負荷試験の33.6%、「日常摂取量」の5.6%が「少量」で症状が誘発されていた。治療でアドレナリン筋肉注射を使用していたのは61.0%、その中で複数回のアドレナリン投与を要したのは15.6%であった。複数回のアドレナリン投与を要するリスク因子は完全除去(調整オッズ比2.204[95%CI:1.077-4.508])、カシューナッツ負荷試験(調整オッズ比4.898[95%CI:1.212-19.788])であった。
【2.経口免疫療法の実施状況に関する調査】
493施設から返信があり(返信率65%)、調査時点でOITを実施していたのは140施設(28.4%)であり、入院・外来ともに実施しているのが25施設、入院OITのみが11施設、外来のみが104施設であった。倫理委員会の承認を得て実施している施設は、入院OITでは約7割にとどまり、外来OITでは4割に満たなかった。
調査対象は2017年1月~12月に実施したOFCとし、一次調査では236施設から回答が得られ(回答率64.4%)、そのうちグレード3の症例を認めたのは121施設(51.3%)であった。121施設中78施設(協力率64.5%)から二次調査への協力が得られた。78施設での総OFC件数は30,725件、抗原別では鶏卵が13,681件、牛乳が6,607件、小麦が3,114件、ピーナッツが1,483件であった。OFC陽性は9617件(31.3%)、陽性者のうちグレード3の症例の割合は5.2%(495件)で、主な抗原別には鶏卵が187/4226件(1.4%)、牛乳が137/2557件(2.1%)、小麦が92/1264件(3.0%)、ピーナッツが23/455件(1.6%)であった。OFC陽性率・グレード3症例の割合は施設により著しく異なっていた(陽性率の範囲:10.1~83.3%、グレード3症例の割合の範囲:0.5~50.0%)。
グレード3を呈した495例の年齢中央値は5歳、61.6%に食物によるアナフィラキシーの既往があり、42.6%に当該抗原によるアナフィラキシー既往があり、68.3%は当該抗原を完全除去していた。鶏卵・牛乳・小麦ではガイドラインにおける「中等量」「日常摂取量」を目標とした総負荷量が86.8%(356/410件)で、うち「中等量」の負荷試験の33.6%、「日常摂取量」の5.6%が「少量」で症状が誘発されていた。治療でアドレナリン筋肉注射を使用していたのは61.0%、その中で複数回のアドレナリン投与を要したのは15.6%であった。複数回のアドレナリン投与を要するリスク因子は完全除去(調整オッズ比2.204[95%CI:1.077-4.508])、カシューナッツ負荷試験(調整オッズ比4.898[95%CI:1.212-19.788])であった。
【2.経口免疫療法の実施状況に関する調査】
493施設から返信があり(返信率65%)、調査時点でOITを実施していたのは140施設(28.4%)であり、入院・外来ともに実施しているのが25施設、入院OITのみが11施設、外来のみが104施設であった。倫理委員会の承認を得て実施している施設は、入院OITでは約7割にとどまり、外来OITでは4割に満たなかった。
結論
【1.食物経口負荷試験に関連する重篤な有害事象に関する調査】
OFCの陽性率や重篤なアレルギー症状の誘発率は施設間で著しく異なっていたこと、アレルギー専門医不在の施設でもOFCを実施していることから、OFC実施施設の状況に応じたOFC適用基準や実施施設の層別化、標準的な方法の確立などの体制を整備することが重要だと考えられた。
【2.経口免疫療法の実施状況に関する調査】
実施している施設数は2015年調査と比較して増加しており、食物アレルギー診療ガイドラインでOITを一般診療として推奨されていないにも関わらず、倫理委員会の承認を得ずに実施している施設も多く存在していた。OIT実施に関する医師への注意喚起は引き続き必要だと考える。
OFCの陽性率や重篤なアレルギー症状の誘発率は施設間で著しく異なっていたこと、アレルギー専門医不在の施設でもOFCを実施していることから、OFC実施施設の状況に応じたOFC適用基準や実施施設の層別化、標準的な方法の確立などの体制を整備することが重要だと考えられた。
【2.経口免疫療法の実施状況に関する調査】
実施している施設数は2015年調査と比較して増加しており、食物アレルギー診療ガイドラインでOITを一般診療として推奨されていないにも関わらず、倫理委員会の承認を得ずに実施している施設も多く存在していた。OIT実施に関する医師への注意喚起は引き続き必要だと考える。
公開日・更新日
公開日
2023-08-02
更新日
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