地域医療構想の達成に向けた病院管理者のための組織マネジメント研修プログラムの開発

文献情報

文献番号
201806002A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療構想の達成に向けた病院管理者のための組織マネジメント研修プログラムの開発
課題番号
H30-特別-指定-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
福田 敬(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 )
  • 玉置 洋(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 )
  • 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 橋本 廸生(公益財団法人日本医療機能評価機構)
  • 筧 淳夫(工学院大学 建築学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
8,775,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年、わが国の医療政策の重要課題として、医療介護総合確保推進法に基づいて平成27年より都道府県が地域医療構想の策定を進め、地域における病床の機能分化・連携を推進している。
 一方で、サービス提供者である病院においては、人口高齢化に伴う医療ニーズの変化、医療技術の進歩等による業務内容の変化に直面しており、病院職員の負担が課題となっている。これについては、業務の効率化・合理化等による負担軽減、勤務環境の改善など、医師をはじめとする病院職員の働き方改革が、国の施策として進められているところである。
 このような医療機能分化や働き方改革等の施策に対応し、かつ安定した病院経営を行っていくためには、各病院の幹部職員の役割が大変重要である。しかしながら、経営管理・組織運営・施設管理など病院の事業継続につながる人材育成については、病院の自助努力に任されているのが実態である。そこで本研究では、病院の幹部職員を対象とした体系的な研修プログラムを開発・提示することを目的として研究を行った。
研究方法
(1)「地域医療構想策定研修 (都道府県職員対象)」における教材・プログラムのレビュー
(2)大学教育における病院人材育成プログラムの動向把握
(3)医療安全にかかる人材育成プログラムの動向把握
(4)医療機関の再編統合事例に関する現地調査
(5)病院の再編統合をテーマとした試行版研修プログラムの開発・評価
結果と考察
(1)「地域医療構想策定研修 (都道府県職員対象)」における教材・プログラムのレビュー
 2014年度に国立保健医療科学院で実施された、都道府県職員を対象とした「地域医療構想策定研修(都道府県職員対象)」に用いた人材育成プログラム、教材の開発、研修のデザインの概要をまとめた。
(2)大学教育における病院人材育成プログラムの動向把握
 大学教育における人材養成プログラムを概観したところ、主に次の3点を把握することができた。①主な対象者が医療従事者であること。②少人数制を採用していること。③カリキュラムが座学と実学で構成されていること。病院団体のカリキュラムも含めて、基本的に自院のマネジメント能力向上が主目的になっていると考えられた。
(3)医療安全にかかる人材育成プログラムの動向把握
 特定機能病院の管理者等への医療安全に関わるコンピテンシーのレビューからは、次の3項目が管理者に求められるコア・コンピテンシーとして挙げられていた。①医療安全を推進する体制を整備し、機能させること。②重大事象が発生した際に、管理者として判断し、その責任を果たすこと。③組織の医療安全文化を醸成するために、職員の模範となる行動を示すこと。
(4)医療機関の再編統合事例に関する現地調査
 再編・統合に向けて組織の方向性を考え、活動方針を決定する病院管理者に特に求められる重要な役割は、①地域との良好な関係の構築、②再編統合に向けた病院間のマネジメント、③職員のモチベーションの維持・向上、④職員の意識改革、⑤労務管理に関するマネジメント、⑥事務部門の人材の充実に整理されることが明らかとなった。
(5)病院の再編統合をテーマとした試行版研修プログラムの開発・評価
 試行研修の結果、病院の再編統合や医師の働き方改革といった、医療政策で喫緊の課題となっているテーマについて、病院職員とくに最高責任者である病院長が学ぶべきとの意見を見出すことができた。またそれらのテーマについて効果的な学習方法として、従来型の講義だけでなくケースメソッドを活用すること、さらにデータを読み取り経営学的な視点を持つことの重要性等が指摘された。

(考察)
 人口減少時代を迎えたわが国において地域医療を安定的に機能させるためには、医療機関の連携がより一層重要となっており、また地域によっては医療機関の再編統合を行うことで医療サービスの安定的運営につながることが示唆された。地域医療構想の達成に向けて、病院管理者が学習すべきテーマは、自院が存続すれば良しとするような経営哲学ではなく、地域全体を持続可能とする考え方が求められている。この考え方は、かつての病院管理研修での優先課題とは異なるものであり、今日的な課題であると思われる。
結論
 医療政策にはさまざまな課題があるが、実際に医療サービスを提供する病院等の医療機関が、当該医療政策の意義・ねらいについて正しく理解し、実践する必要がある。とくにトップである病院長が、政策の推進に向けて具体的な検討・意思決定を行うことが、地域医療構想の達成には欠かせないものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2022-10-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-10-26
更新日
2022-10-27

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201806002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
病院の人材育成プログラムの実施状況について、大学・学会・団体等を対象に広く現状把握を行った。
臨床的観点からの成果
非該当。
ガイドライン等の開発
本研究では研修プログラムを開発し試行研修を実施した。
その他行政的観点からの成果
本研究によって得られた成果は、令和元年度より国立保健医療科学院で新たに実施する予定の、病院幹部職員向け研修に反映させる予定である。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201806002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,775,000円
(2)補助金確定額
7,930,349円
差引額 [(1)-(2)]
844,651円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,652,321円
人件費・謝金 566,372円
旅費 2,357,446円
その他 2,354,210円
間接経費 0円
合計 7,930,349円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-10-26
更新日
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