「保健関連の持続可能な開発のための2030アジェンダ」の促進を目標とした途上国における三大感染症対策の戦略提言のための研究

文献情報

文献番号
201805008A
報告書区分
総括
研究課題名
「保健関連の持続可能な開発のための2030アジェンダ」の促進を目標とした途上国における三大感染症対策の戦略提言のための研究
課題番号
H30-地球規模-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
蜂矢 正彦(国立国際医療研究センター 国際医療協力局 運営企画部)
研究分担者(所属機関)
  • 日下 英司(国立国際医療研究センター 国際医療協力局長)
  • 駒田 謙一(国立国際医療研究センター 国際医療協力局 運営企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
開発途上国における保健関連の「持続可能な開発目標(SDGs)」達成を促進するため、三大感染症(エイズ、結核、マラリア)に焦点をあて、各国の自立的な目標達成のための戦略を援助機関との関連から分析し、グローバルファンド(GF)等の国際機関に対して、我が国が理事会等の場を通じ効果的に提言すべき内容について研究する。
研究方法
GF理事会や世界保健総会等の国際機関のガバナンス会合や、国際エイズ会議や世界結核肺疾患連合会議等の技術的な会合への参加などを通じ、三大感染症対策における世界的な潮流、現状の課題、各ステークホルダーの動向を把握する。また、東南アジアやアフリカ等において、流行終焉に向けた戦略やドナーによる支援体制の変化が現場にどのような影響を与えているかを調査する。得られた知見からすぐに我が国の国際保健政策に還元すべきものがあれば、直ちに厚生労働省や外務省に対して提言を行う。
結果と考察
 第22回国際エイズ会議(2018年7月、アムステルダム)に参加し、日下が特別セッション“Going beyond business as usual and addressing complacency and fatigue in the AIDS response”に登壇し、日本のHIV対策の経験をもとに長期的な患者支援体制への移行の重要性を主張した。第40回GF理事会においては、資金配分方法、戦略的パフォーマンス、資金調達、被援助国の支援からの独立プロセスなどの議題に関して、日本理事区としての対処方針について外務省に提言を行うとともに、日下が理事代理として参加し、被援助国の支援からの独立プロセスや結核未診断患者に対する取り組みにおける技術評価委員会の活用など、いくつかの提言を行った。2019年2月にインドで開催予定のGF第6次増資準備会合にも、日下は日本理事区の理事代理として参加し、各国の動向について情報収集を行い厚生労働省に共有した。
 ミャンマーやラオスにおいては、両国におけるGFの案件形成に関わる関係者へのインタビューを行い、被援助国からの独立プロセスにおいて受益国側が抱えている課題(投資側の意向と受益側の能力・準備状況とのギャップ、投資側から見たアカウンタビリティの強化と、受益側のガバナンスやオーナーシップ強化の乖離など)について情報収集を行った。
 GFは三大感染症対策に関する世界の資金拠出のうち、HIV資金の8%(国際資金調達額全体の20%)、結核資金の10%(同69%)、マラリア資金40%(同57%)をカバー(2017年)していると報告されており、その貢献は極めて大きい。WHOやUNAIDSなどの国際機関がその専門性を活かして各国をリード・支援していくうえでも、GFとの連携は欠かせないものになっている。一方で、その大きな貢献ゆえにGFへの依存度も高く、一朝一夕にTransitionを進めていくことは困難である。長期的な視点で各国のオーナーシップを高めていくことが必要であり、それには資金投入だけでなく、マーケット形成・調達などの技術面での支援も考えられる。
 Transitionを円滑に進めていくためには、まずは、三大感染症対策のみならず受益国の保健投資そのものを増加させることが最重要と考えられる。 三大感染症対策への投資を強引に増やすあまり、他の保健予算が犠牲になるなどの弊害がないように配慮しなければならない。そのためには、各国において保健省と財務省との連携強化が必要不可欠であり、日本政府が2019年に予定しているG20保健・財務大臣合同会合は、政治的モメンタムを形成する格好の場と考えられる。一方、Gaviや二国間援助などでも同様のTransitionの動きがあり、協調が必要である。また、様々な国際機関・NGOにおいても三大感染症対策からの資金シフトが懸念されており、WHOやUNAIDS等の国連機関もGFとの連携を強化しており、受益国政府だけでなく、受益国で活動する機関・団体のGF依存を強めてしまう可能性がある。特定のプログラム・機関のためだけのTransitionを考えるのではなく、当該国のPublic Financial Managementを強化していくことが必要であり、そのためには二国間も含めた様々な支援情報の透明性を高めたうえで、連携・調整を行える仕組みが各国で必要である。
結論
三大感染症対策に関するSDGs達成に向けて、GFの果たす役割は大きく、日本は、そのGFに対して単独理事区を保有する主要ドナー国として、影響力を行使できる立場にある。三大感染症対策をはじめとするSDGs達成のためには、各国のオーナーシップの強化、自国投資の増加が必要であり、そのためには長期的でバランスのとれた戦略、透明性のある支援やドナー連携が肝要である。

公開日・更新日

公開日
2019-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-07-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201805008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
11,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,915,802円
人件費・謝金 39,000円
旅費 6,070,945円
その他 474,253円
間接経費 2,500,000円
合計 11,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-07-25
更新日
-