コンピテンシーに基づいた国際保健政策人材の養成初期における教育ツールの開発

文献情報

文献番号
201805004A
報告書区分
総括
研究課題名
コンピテンシーに基づいた国際保健政策人材の養成初期における教育ツールの開発
課題番号
H29-地球規模-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立保健医療科学院 )
研究分担者(所属機関)
  • 中谷比呂樹(国立国際医療研究センター グローバルヘルス人材戦略センター)
  • 大澤絵里(国立保健医療科学院)
  • 野村真利香(東邦大学)
  • 種田憲一郎(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国において、グローバルヘルス人材として身に付けるべき能力、経験、スキルが不明確であること、またキャリアパスの情報が不足しているなど、人材がグローバルヘルスに参入する際に障壁があることが指摘されている。グローバルヘルス人材、特に国際保健政策人材は、保健医療専門職(有資格者)のみではないこと、複数の組織を異動すること、また国内外の現場を循環するなどキャリアパスが極めて多様であり、多様なキャリアパスを可能にし、国際保健政策人材として活躍できるようなコンピテンシーを高める教育ツールの開発は急務である。そこで本研究では、研究期間2 年間で、コンピテンシーに基づいた国際保健政策人材養成初期における教育ツールの開発を目指した。
研究方法
一つ目に、コンピテンシーに基づいた国際保健政策人材の養成初期のための教材開発のため、昨年度実施したWHO 公募分析の結果と、国連およびWHO が提示しているコンピテンシーモデルをもとに、研究班メンバーが議論し、まずは、養成初期の人材が、身に着けたい基本的なコンピテンシーについて抽出した。最終的に、WHO の公募分析、コンピテンシーの概念、国連およびWHO のコンピテンシーモデル、各コンピテンシーの説明を含んだ約20 分の日本語での映像教材を作成した。
二つ目に、国立国際医療研究センター・グローバルヘルス人材戦略センターが開催した2つのワークショップの中で、提示したコンピテンシー・ベースド・インタビューを紹介
するとともに、ワークショップの内容、実施方法を紹介し、参加者へのインタビュー
やアンケート調査の結果から、今後の変化の可能性がある国際機関高職位に求めら
れるコンピテンシーの展望をまとめた。
三つ目に、WHO 西太平洋事務局(WPRO)にて開催された会議に出席をし、会議開催の様子や議論に参加することにより、国際機関の会議に参加の際に必要なコンピテンシーについて情報を収集した。
四つ目に、国立国際医療研究センター・グローバルヘルス人材戦略センターと、長崎大学原爆後障害医療研究所山下俊一先生の研究班と協力して、第77 回日本公衆衛生学会総
会の機会に自由集会「国際保健政策人材を増強する方策とは」を開催し、関係各機関・専門家のグローバルヘルス人材への期待を探った。
結果と考察
国際的組織で働くために必要な基礎的なコンピテンシーは、チームワークやコミュニケーションであり、日本国内の組織においてもチームで仕事をする際には、必要なコンピテンシーであると考えられる。国際的組織で仕事をすることを望む若手は、早いうちに本研究班で開発された映像教材を活用し、コンピテンシーを意識し現場で働きながら、国際的組織への就職に備えることが期待される。
各国際機関に求められるコンピテンシーに基づいたインタビューの演習が、国際保健政策人材養成初期に人たちにとって経験となることはワークショップ開催から明らかになった。今後、変化していく社会に対しては、また、新たなコンピテンシーも必要になると考える。
WPROの会議への出席により、参加する立場により求められるコンピテンシーが少しずつ異なると考えられた。専門家としての出席は、各国の状況を専門的に分析する能力も必要であり、WHO カントリーオフィスの職員は、同時にWHO の方針とその国の政策の橋渡し役となるために、その国の政策実施について建設的に議論を進めるようなファシリテーション力が必要であると考えられた。
日本公衆衛生学会において開催した自由集会では、国際保健政策人材に関する2 つの厚生労働科学研究班からの研究経過報告と始動したグローバルヘルス人材戦略センターの役割が紹介され、その後、議論が行われた。より多くの関心が集まったのは「教育」の問題であった。日本国内での国際保健政策に関わる内容を学べる機会やその量の不足が指摘され、本集会では、大学におけるグローバルヘルス人材教育の提供の問題点が浮き彫りになったと考えられる。
結論
本研究により、国際保健政策人材に実際に必要とされるコンピテンシーをベースとした情報や知識を、日本国内で広めていく必要性があること、そして、それが国際保健政策人材の養成初期には重要なことがわかった。今後は、本研究班で開発した映像教材の内容をもとに、これから国際保健政策に貢献したいと考えている養成初期段階の人材に、国際的組織のコンピテンシーの考え方を普及させることが求められる。

公開日・更新日

公開日
2019-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201805004B
報告書区分
総合
研究課題名
コンピテンシーに基づいた国際保健政策人材の養成初期における教育ツールの開発
課題番号
H29-地球規模-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立保健医療科学院 )
研究分担者(所属機関)
  • 中谷比呂樹(国立国際医療研究センター グローバルヘルス人材戦略センター)
  • 大澤絵里(国立保健医療科学院)
  • 野村真利香(東邦大学)
  • 種田憲一郎(国立保健医療科学院)
  • 町田宗仁(金沢大学)
  • 高橋謙造(帝京大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国において、グローバルヘルス人材として身に付けるべき能力、経験、スキルが不明確であること、またキャリアパスの情報が不足しているなど、グローバルヘルスに参入する際に障壁があることが指摘されている。グローバルヘルス人材の多様なキャリアパスを可能にし、国際保健政策人材として活躍できるようなコンピテンシーを高める教育ツールの開発は急務である。そこで本研究では、研究期間2 年間で、コンピテンシーに基づいた国際保健政策人材養成初期における教育ツールの開発を目指した。
研究方法
1年目は、国際保健政策人材が必要とされるキャリアパスおよびコンピテンシーの抽出として、国際的組織に勤務している国際保健政策人材への聞き取り調査、WHOの公募情報の内容の分析や、国際保健政策人材キャリア形成のために有用と思われる情報資源を収集し、フレームワークを作成した。また、新たに開設されたグローバルヘルス人材戦略センターの機能に関する考察をおこなった。
2年目は、1年目の結果をもとに、WHO の公募分析、コンピテンシーの概念、国連およびWHO のコンピテンシーモデル、各コンピテンシーの説明を含んだ映像教材を作成した。また、コンピテンシー・ベースド・インタビューを紹介するワークショップを開催、その内容、実施方法を紹介し、参加者へのインタビューやアンケート調査を実施した。また、WHO 西太平洋事務局の会議に参加し、国際機関の会議に参加の際に必要なコンピテンシーについて情報を収集した。第77 回日本公衆衛生学会総会では自由集会「国際保健政策人材を増強する方策とは」を開催し、グローバルヘルス人材への期待を探った。
結果と考察
国際保健政策人材に求められるコンピテンシーは、語学力よりも、むしろ現地での適応能力が求められている。一方、国際機関が示すコンピテンシーに共通するコンピテンシーとして、コミュニケーション、リーダーシップ、チームワーク、実行力、イノベーションなどが挙げられ、これらのコンピテンシーについて養成されることが求められている。それらを身につけるための研修の場を提供する組織や活動が、結果として、国際機関に求められるコンピテンシーを体得させることに繋がり、一人でも多くの日本人を海外組織に送り出すことにつながるものと考えられる。
国内で公衆衛生学を学ぶことができる大学院レベルのコースが相次いで開設され、学習機会が開かれるようになった。また、国際保健政策人材キャリア形成に有用な国内資源は多様に存在したことがわかったが、国際保健政策人材の養成初期に必要な「国際保健政策」の学習機会という点では限られていることが示唆された。
上記より、新たに設立されたグローバルヘルス人材戦略センターには、国際保健政策人材育成のための「プラットフォーム」としての役割が期待されており、そのような場においても、本研究班で開発した内容をもとに、これから国際保健政策に貢献したいと考えている養成初期段階の人材を対象にした、国際的組織のコンピテンシーの理解と実践法の普及が求められる。
結論
国際保健政策に貢献する養成初期の人材育成のために、国際的組織で求められるコンピテンシーの理解の促進を目指し映像教材を作成した。またその作成プロセスで以下のことが明らかとなった。
1)WHO公募情報の分析より、non-medial の募集も多く、医療職のバックグラウンドをもつ人だけではなく、幅広い分野から国際保健政策に貢献できることがわかった。
2)公募情報の分析と既存資料の分析より、国際的組織で必要とされるコンピテンシーは、専門知識に加えて、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップといった組織内のマネジメントに関わるコンピテンシーであることがわかった。また、ジュニア、シニア、管理者というレベルの違いで、求められるコンピテンシーも異なるものであった。
3)職員へのインタビューから、キャリアパスとして、大学院教育で学ぶことも重要であるが、現場経験から得られるコンピテンシーも多いため、両者を組み合わせてコンピテンシーを獲得していく必要があることがわかった。
4)日本人を対象として国際保健に関連した有用なウェブサイトのインベントリー作成より、多くの情報が点在していることがわかった。しかし、本研究課題をテーマとして集会であがった意見などからも、日本国内で系統的に国際保健政策を議論する場や、国際的組織で必要な実践力を身につける場や機会が十分ではないことがわかった。
5)国際的組織に求められるコンピテンシーに関連したワークショップへの参加者からの意見からは、国際保健政策人材に実際に必要とされるコンピテンシーをベースとした情報や知識を、日本国内で広めていく必要性があること、そして、それが国際保健政策人材の養成初期には重要であることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2019-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201805004C

収支報告書

文献番号
201805004Z