医薬品添加剤の品質確保に必要な製造管理に関する研究

文献情報

文献番号
199800659A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品添加剤の品質確保に必要な製造管理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
木嶋 敬二(日本医薬品添加剤協会)
研究分担者(所属機関)
  • 内山充(財団法人日本薬剤師研修センター)
  • 綱川延孝(日本医薬品添加剤協会)
  • 早津康治(財団法人上越環境科学センター)
  • 武田豊彦(新潟鉄工所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の安全性・有効性の基盤を支える品質の確保に GMPの果たす役割
は大きい。周知のように医薬品添加剤は医薬品製剤の重要な成分であるが GMP適用外
にあり、その品質確保が課題となっている。更に医薬品添加剤は多くの国で共通に利用
され、国際流通も多いことから品質の国際調和が叫ばれている。IPECやWHOにおい
てもGMPガイドラインが作成されており国際調和の観点からも必要なことである。こ
れらのことから平成 9年度までに添加剤GMP自主基準(ソフト及びハード)案を作成し
た。平成10年度においては、この基準案の普及及び活用を図って行くことを目的とし
ての研究を実施した。初めに自主基準案を添加剤メーカーなど関係業界がどうとらえて
いるか、どような方策が求められているかを知る目的でアンケート調査を行う。この結
果を解析し、更に基準案の普及、活用をはかるためのワークショップを開催し、成果を
上げることを目的とする。今後は残された基準書、手順書等についても解説及び検討を
行う必要があると考えられる。
研究方法
アンケート調査については調査表は報告書(資料1)に示すように(1)医薬
品添加剤製造品目について(2)GMPソフト及びハード自主基準の運用について設問する
。調査表は 143社に送付する。 このアンケート調査にもとづいてワークショップを開
催する。 概略は自主基準案(ソフト)と医薬品GMP及び IPECガイドラインの比較、
GMP管理組織の概念図、文書体系の概念図、GMP(ソフト)の管理フロー、自主基準書、
総則および製品標準書などについて議論することとした。
結果と考察
添加剤GMP自主基準案普及・活用を図って行うためにどのような方
策が求められているかを知るためにアンケート調査を実施した。更にこれにもとづいて
ワークショウップによる説明会を開催した。Ⅰ.アンケート調査について:医薬品添加
剤メーカーを中心に 143社を対照に調査表を送付した。その結果、90社(回収率 61%)
から回答が得られた。概要は次の通りである。(1)自主基準案に対する認識:自主基準
案の要求内容の理解度に関してはソフト・ハード共に概ね問題はないといえる結果であ
った。一般論としては65%以上が厳しくないとしているのに対し、自社の実状に照ら
した場合には約半数の企業が厳しいと受け止めている。特にソフト案で要求が厳しいと
する事項は薬剤師の確保、基準書類の作成、バリデーションの実施、使用水・残留溶媒
の管理などであった。又、ハード案で要求が厳しいとする事項は、設備改善に伴うコス
トアップ要因が主であった。(2)自主基準案への対応:既に自社 GMPを導入している企
業はソフト・ハード各々 52%、53%である。また、既に自社 GMPを導入している企業
の 2/3が自主基準に合わせたとしている。未だ自社 GMPを導入していない企業の17%
はソフト・ハード自主基準を導入したいとしている。 (3)自主基準案の運用に関する対
応:自主基準案の説明会、研修会の開催希望( 70%)、事例集の発行希望(77%)であっ
た。更に審査・承認制度については 68%の企業がユーザーに対する品質保証の担保とな
ること、機密保持が得られること、適正料金であること等の条件がそろえば賛成との結
果であった。その他自由意見も多数あったが報告書(資料 3) にまとめて記述した。Ⅱ.
自主基準案の説明会(ワークショップの開催):添加剤 GMP自主基準案を普及・活用す
るためのワークショップを開催した。(1)自主基準案の位置づけを知る目的で、本自主
基準案(ソフト)と医薬品 GMP及びIPECガイドラインの比較検討を行った。また、本
自主基準案(ハード)と薬事法薬局等構造設備規則(第5条の1)及びIPECガイドライ
ンの比較を一覧表として示した報告書(資料 4)。更に GMP(ソフト)管理のフローを同
様報告書(資料 4)に示した。(2)具体的な基準書、標準書について、1)医薬品添加剤GMP
自主基準書総則報告書(資料 9)、2)製品標準書報告書(資料 10)について解説を行った。
今後はこれ以外の基準書・標準書についても説明を行い添加剤の品質向上に役立つこと
が確認された。今回のアンケート調査において各企業の製造品目については特に解析は
行わなかった。また、調査結果の集計において医薬品添加剤協会会員企業と非会員企業
に区別したがいづれの調査項目についても協会会員企業の方がレベルが高いことがうか
がわれた。研究結果の項は記述した以外に自由意見のまとめも行ったところ、ソフト自
主基準案については他基準(ISO、 HACCPなど)との整合性化、バリデーションの要求
レベル体制、コスト、手順に対する懸案、また自主基準案については医薬品用途の低い
工業製品にGMPハードは厳しいとか、投与経路や使用目的等によりメーカー及びユー
ザーの自主判断に委ねる部分の拡大を望む声があった。全般的には添加剤の製造と品質
に関してユーザーサイドの査察がかなり一般的になって来ており、添加剤メーカーのG
MPに対する考えはかなり浸透しており、前向きに GMP自主基準の導入がうかがえた。
結論
本年度は既に作成した自主基準(ソフト及びハード)案を活用するためにどの
ような方策が求められているのかを知るためのアンケート調査、更により良い自主基準
とし、実効をあげられるようワークショップを通じて支援をして来た。アンケートにつ
いては報告書(資料 1)に示し集計結果については報告書(資料 2及び 6)に示した。ワ
ークショップにおいてはアンケートの中で重要なものは自己点検結果の報告、製造管理
者が薬剤師であること、多基準の包括及び審査・認定制度であった。更に、アンケート
の集計結果、医薬品 GMPと本自主基準案及び IPECのガイドラインの対比報告書(資
料4)、添加剤GMPの概念図報告書(資料 7)、総則報告書(資料 9)、製品標準書報告書
(資料 10)などについて議論した。なお、ソフト(案)第14条(自己点検) 1項について
は当面、審査・認定制度の確立するまでは削除することとした。得られた多くの課題を
整理し、解決して行くことにより添加剤の品質確保に有益な結果をもたらすことがわか
った。これまで研究をおこなって来た添加剤GMP自主基準(ソフト及びハード)につい
て国際的に評価を得るため英文を含め合本としたので併せて報告書に添付した。

公開日・更新日

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