ICTを活用した医師に対する支援方策の策定のための研究

文献情報

文献番号
201803026A
報告書区分
総括
研究課題名
ICTを活用した医師に対する支援方策の策定のための研究
課題番号
H30-ICT-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
上家 和子((公社)日本医師会 日本医師会総合政策研究機構 ・ 同 女性医師支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 信之((公社)日本医師会 日本医師会総合政策研究機構)
  • 亀田 真澄(公大)山陽小野田市立 山口東京理科大学 共通教育センター)
  • 浜野久美子((独法) 労働者健康安全機構関東労災病院 糖尿病・内分泌内科)
  • 黒木春郎(医療法人社団 嗣業の会 外房こどもクリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
16,544,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、医師の働き方支援のためにどのようなICTの活用方策があるかを探った。
研究方法
医師の ①勤務環境の改善、②専門性の確保、③診療形態の多様化、④医師人材マッチング、の4つの点から、ICT活用に関する調査と事例収集を行い、海外情報も収集した。
①大学病院および臨床研修病院の病院長および各診療科長に対して、医師の勤務環境の改善支援の観点から、WEB画面と調査票で調査した。
②医師の働き方に対する支援の一つとして、学会活動や研修等へのICT活用状況をWEB画面と調査票で調査した
③オンライン診療には『オンライン診療の適切な実施に関する指針』が示されている。診療実践例を収集しつつ、ICTを活用した診療の可能性と必要な要件を整理し、あわせてオンライン診療への参入条件として習得が求められている『指針』への実践的な理解を深めるためのe-Learning教材案を開発した。
④妊娠・出産と多忙な時期が重なる可能性の高い女性医師の割合は年々高まっている。また、1学年8,000人時代になって養成された医師もまもなく定年を迎え始める。医師のライフステージに応じた就労を支援し、効率的に配置することは、医療需要が高まりつつあるなか、大きな意味を持つ。医師の労働市場としての特殊性を整理し、医師と職場のマッチングにICTを導入し、AI機能によってコーディネートを支援するシステムの構築をめざした。
⑤上記①~④に関連する海外情報を収集した。
結果と考察
今回の結果では、電子カルテ情報へのアクセスは院内に限る機関が大多数で、登録端末からのアクセスを認めていたのは80/1524診療科であった。どういった領域で外部端末を必要とし、実施しているか、好事例を収集する必要がある。登録端末からのアクセス制限の理由としては、セキュリティ、個人情報漏洩リスクが数多くの機関で挙げられた。具体的にどういったリスクがあるか、どういったセキュリティが必要か、セキュリティに関するガイドライン等をどうとらえているか、など、掘り下げる必要がある。
海外事例では、電子カルテ上での治療ガイドラインの閲覧システムが関心を集めていたが、国内にも同様の工夫をすでに実践している例はある。こういった事例を紹介することも必要と思われた。また海外では、クラウド化したPersonal Health Recordを継ぎ目のない保健医療サービスと診療継続支援に使っている事例が数々紹介されていた。診療情報について、何を誰がどこまで閲覧することが必要か、整理することで、セキュリティへの危惧の一部は払拭できるのではないかと考えられた。
各医学会への調査からは、学会へのWEB参加、e-Learning プログラムともに活用の必要性は認めつつも、まだ十分には普及していない。進まない理由として、セキュリティ対策が挙げられた。
遠隔医療のなかで、D to Dやオンライン・セカンド・オピニオンは直接の診療支援となり得るが、まだ普及しているとはいいがたい。特にD to Dについて学会主導での推進を求める意見があった。D to Pについては、収集した実践例でみるかぎり、診療側の負荷は導入後は対面診療とほぼ同じであった。しかし、患者のアドヒアランスの向上、慢性疾患管理の継続により、最終的には医師の負担軽減につながる可能性はあると考えられた。
産休・育休による欠員問題は多くの医療機関が直面している。時間外労働の規制が強まるなかで、現有人員の超過勤務によるカバーは限界が近い。こういったなかで、制限的な勤務を希望する医師も含め、欠員補充や応援のための医師バンクを求める声は多かった。複雑な要素のアルゴリズムになるが、ICTを活用することにより現実的なマッチングが進むと期待できる。
結論
勤務環境の改善には管理者・人事権者の意思と理解が重要である。
医療機関、医学会の管理者やリーダーの間では、セキュリティへの危惧は高いが対応策を前進させるには到っていない。むしろ、システム事業者等ICTサービスを提供する側のセキュリティ対策を公的に認証することよって、業者やアプリの選択を容易にすることが近道ではないかと考えられた。
オンライン診療については、収集した実践例でみるかぎり、診療側の負荷は安定すれば対面診療とほぼ同じであった。したがって、オンライン診療という診療形態が直接医師の働き方に影響を与えるとは考えにくい。しかし、患者のアドヒアランスの向上、慢性疾患管理の継続により、最終的には医師の負担軽減につながる可能性はあると考えられた。
欠員補充や応援のための医師バンクを求める声に対し、社会保障制度の一環である医療の分野で、公的人材である医師について医業収益を流出させることのない公的枠組みで人材バンクを機能させるために、ICTを活用することで現実的なマッチングが進むと期待できる。

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201803026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,544,000円
(2)補助金確定額
16,544,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,777,622円
人件費・謝金 2,761,280円
旅費 1,036,638円
その他 10,009,138円
間接経費 0円
合計 16,584,678円

備考

備考
調査票の修正により大規模なやり直しをしたために、物品費が予算よりも4万円余りオーバーした。

公開日・更新日

公開日
2020-04-07
更新日
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