我が国における遠隔集中治療(Tele-ICU)の導入における技術的・社会的課題の解決に向けた研究

文献情報

文献番号
201803025A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における遠隔集中治療(Tele-ICU)の導入における技術的・社会的課題の解決に向けた研究
課題番号
H30-ICT-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
高木 俊介(横浜市立大学 附属病院集中治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 悟(京都府立医科大学附属病院 集中治療部)
  • 讃井 將満(自治医科大学 集中治療部)
  • 野村 岳志(東京女子医科大学)
  • 大嶽 浩司(昭和大学 麻酔科学教室)
  • 土井 研人(東京大学 医学部附属病院)
  • 長谷川 高志(特定非営利活動法人 日本遠隔医療協会)
  • 澤 智博(帝京大学 医療情報システム研究センター)
  • 山崎 眞見(横浜市立大学 データサイエンス学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦の集中治療室のベッド数は約7000床、集中治療専門医は約1500名である。このため、非集中治療専門医や外科系・内科系医師が重症患者を管理する状況が恒常化しており、長時間の時間外労働の是正や患者管理の質向上が課題となっている。同様の課題を有する米国では、国主導で集中治療分野のICT化を進め、現在約20%の集中治療室が遠隔集中治療(Tele-ICU)を取り入れている。ネットワークで連携した4〜6病院のICU約100床前後をコントロールセンターから24時間365日体制で診療支援し、患者管理の質向上、合併症の減少、ICU・病院滞在日数の減少、死亡率の改善、医療費削減などの効果が報告されている。一方、本邦では、電子カルテや診療のルールが病院毎にカスタマイズされており、海外のシステムを導入するには、コスト面・運用ルールにおいて課題が幾つかある。
研究方法
本研究では、この委員会の全メンバーを含む研究班で、Tele-ICU導入と普及にむけた課題を明確にすると共に、解決の方向性を提示するための活動を拡大展開する。具体的には、病院や医療従事者を対象としたニーズや導入を妨げる人的・組織的・設備機器的要因を調査する。また、Tele-ICUで用いる既存・開発中・今後望まれる重症度予測アルゴリズムの整理と、関連する法規制・ガイドライン、医療従事者・企業へのアンケートから、要求される情報セキュリティレベルとそれを実現する医療機器の標準的な仕様ならびに運用基準・体制を策定する。以上を総合的に検討し、将来的な試験的導入計画立案と費用対効果検証で考慮すべき情報を提示することで、日本の医療システムに合わせ、かつインテリジェンスを付加したTele-ICU導入のエビデンス構築と普及促進に資することを目指す。
結果と考察
平成30年 12月18日日本版遠隔集中治療(Tele-ICU)の構築に向けた課題及び解決策に関する調査研究班 第1回キックオフミーティングを開催した。企業の参加も促し、30社 総勢 80名の参加者があり、注目度の高さが伺えた。
研究概要を①医療情報の統合に必要な情報セキュリティの整理 ②Tele-ICU体制に必要な標準プロトコルの作成 ③Tele-ICU構成要素・重症度・予測アルゴリズムの整理 ④Tele-ICUニーズ調査とタスクシェアリング促進 ⑤コスト生産性向上の費用対効果推定 の5項目に分類し、各班の調査を開始した。第2回 調査研究班会議を平成31年2月4日に開催し、調査研究の進捗状況について確認を行なった。第3回 調査研究班会議を第46回日本集中治療医学会の会期中に行い、同学会において遠隔ICUパネルディスカッションを企画し、調査班の中間報告を行なった。医療従事者では対応困難なTele-ICUに必要なシステム要件、法的な検証などに関しては、外部の専門家に業務委託により調査を促した。
結論
平成31年5月に①~⑤の調査を終えたが、期間内に調査が完了しなかった項目として、重症度アルゴリズムの整理、および医療情報の標準化に向けた提言などが挙げられる。
これらは、数ヶ月という期間で完遂できるものではなく、今回は課題・論点整理に留まっている。重症度アルゴリズムについては、引き続き調査を継続していく方針となった。

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201803025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
関連する9学会からのアンケート調査を行い、619名の回答者を得た。集中治療学会、救急医学会、外科学会、麻酔科学会からの回答が多く、遠隔ICUに関する効果を期待する回答が多かった。本研究を通じて、現場の医療従事者との信頼関係、法的な課題、セキュリティ、個人情報保護の観点など、遠隔ICUに関する様々な課題を抽出する事ができた。
臨床的観点からの成果
遠隔ICUを導入することでの費用対効果を推定する際に、集中治療室における業務の標準化が必要という事が判明した。それにより、医療従事者の業務の構造化に向けた動きが推進され、医療の質向上に繋がっていると思われる。また、取り扱うデータに関しても、ビッグデータとして収集する必要がある点から、本事業を通じて急性期医療のデータ標準化に向けた動きが進んでいくと思われる。
ガイドライン等の開発
現在、遠隔集中治療を設立する事に対する論点整理を行ったところである。今後、本邦での運用が進んだ際にはガイドラインの開発が必須である。米国ではTele-ICUのガイドラインが存在しているが、そのまま本邦に取り組むことは難しい。本邦の医療体制や遠隔ICUの運用に合わせたガイドライン作成に取り組んでいきたいと考えている。
その他行政的観点からの成果
横浜市市議会において、遠隔ICUについて講演を行い、横浜市でのオープンデータの考え方との方向性の一致があると評価を受けた。集中治療学会、遠隔医療学会においても急性期遠隔医療という分野でのセッションが開催され、遠隔ICUに関する関心の高さが伺えた。医療の需給バランスの是正にこうしたICTを取り入れたタスクシェアの仕組みを作る点は今後の政策提案につながると思われる。
その他のインパクト
遠隔集中治療に関する報道は各種のマスコミで報道していただいている。調査研究班におけるキックオフミーティングにおいても、30社80名を越す参加者がおり関心の高さが伺えた。学会におけるシンポジウムも企画しており、今後も社会に与えるインパクトは大きいと思われる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
2023-05-29

収支報告書

文献番号
201803025Z