AI遠隔健康モニタリングシステム「まいにち安診ネット」を用いて介護施設等に入居する高齢者等の疾病の早期発見・重症化予防を行う実証研究

文献情報

文献番号
201803018A
報告書区分
総括
研究課題名
AI遠隔健康モニタリングシステム「まいにち安診ネット」を用いて介護施設等に入居する高齢者等の疾病の早期発見・重症化予防を行う実証研究
課題番号
H29-ICT-一般-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
前田 俊輔(芙蓉開発株式会社 安診ネット事業部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊達 豊(医療法人芙蓉会)
  • 青柳 潔(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急速な高齢化により、高齢者の疾病の早期発見・重症化予防が課題となっている。高齢者は加齢により、体温・脈拍の低下や血圧の上昇を生じる傾向にあり、一般成人のバイタルサインを基準とした従来の異常判定を適応できないケースが多い。また自覚症状に乏しく、認知症患者などに代表されるように意思疎通が困難なことが多いため、従来の問診が適応されにくく、容態悪化の発見が遅れ、重篤化する傾向にある。本システムは、2012年より介護施設で導入され、早期発見による重症化予防に実績を持ち、高齢患者のバイタル異常値の検知を可能とした。本システムを用いて、以下を検討する。1年目:スコアリング法のカットオフ値の設定 2年目:スコアリング法による重症化予防への有用性の検証 3年目:病態群ごとの特徴を見出す。AI活用による医療介護従事者の負担軽減の検証
研究方法
1)研究環境 本システムは(医)芙蓉会の介護施設であるメディカルケア南ヶ丘の他、岡山・北九州・滋賀県の4か所で実地検証する。2)研究期間 カットオフ値設定のための研究期間は2017年11月より2018年3月とし、比較対象のための研究期間は当初2018年4月~2019年3月の1年間としたが、疾患例を増やすために2019年12月まで延長した。3)測定項目
1収縮期血圧 2拡張期血圧 3脈圧4脈拍 5体温(腋窩) 6血中酸素飽和度7呼吸数 8意識レベル(JCS)9体重 4)目標1の計画 65歳以上の要介護認定者約400名とする。必要なサンプルサイズは143名、10%程度の脱落を考慮した。入居者が肺炎・心不全と診断された場合、重症度分類の基準にて評価を行う。 5)目標2の計画 対象施設から搬送され入院した心不全・肺炎患者に対し、1年齢、2入院期間のデータを取得「平均入院期間」と「最も多い人数である入院日数」を全国平均と比較する。 6)目標3の計画 対象者はモニター事業所の医療・介護従事者とし、「介護施設における介護業務従事者の負担軽減に対する効果」を評価するものとして「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」を使用しアンケートを実施する。ストレスチェックは職員個人の変化を追跡していく必要があり、氏名記入欄を設けた新様式にて再調査を依頼する。
結果と考察
目標1・各対象者のバイタル測定値は正規分布を示した・肺炎ではn=66の場合に、スコア3を検査陽性のカットオフ値とした場合に、陽性反応的中度0.75、陰性反応的中度0,87、感度0.61、特異度0.93という結果が得られた・心不全については、n=10と少数であったが、n=20あれば検証は行えると考えている・いずれの疾患でも、更に症例数を増やし検証する目標②
・心不全の重症度評価は2018年3月より入院の際、データを収集中である・今後、入院期間とスコアリングとの関連を検討する。その際には、年齢、性別、要介護度、服薬数などの入院期間に影響を及ぼす因子を調整した多変量解析を行う・追加研究として、早期発見における重症化予防の効果を検証するために、要介護度進行の予防について検討する。比較対象としては、介護ナショナルデータベースを活用する・スコア3以上を呈した患者は医師が診察し、健康状態の判定を行う
目標3・「利用群のシステム利用前と利用1年後」「非利用群の初回とその1年後」に対する「介護施設における介護業務従事者の負担軽減に対する効果」については、t検定を各群で行い、その有意性の違いから検証する・システムによる業務時間の短縮の効果を検証するために、労務管理のデータの収集を行う・より詳細なデータを取得するため、アンケート項目を追加する【追加研究】研究プロトコルに対する検証―個人内変動のデータ 30、60、90日間の精度比較
■方法・コントロール群の156名を解析対象とし、対象者ごとに30、60、90日間の平均値・標準偏差を算出した。また各対象者における3群の平均値に差があるかを明らかにするため、一元配置分散分析およびTukey-Kramer法による多重比較を用いて検討した。■結果 一元配置分散分析の結果、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、脈拍、体温の30、60、90日間の平均値・標準偏差に有意差は認められなかった。また、Tukey-Kramer法による多重比較でも全て有意差は認められなかった。■結論 30、60、90日間の平均値・標準偏差に有意差はなく、30日間のモニタリングで十分な期間である。以上の結果により、30日間の個人内変動のデータでスコアリングは使用できると判断した。
結論
当該システムを用いたバイタルスコアリング法は、高齢者の肺炎の早期発見に寄与することが示唆された。今後、n数を増やし、よりデータに信頼性を持たせるとともに、早期発見の効果による重症化予防の検証も進める。

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201803018Z