文献情報
文献番号
201803016A
報告書区分
総括
研究課題名
小児領域の医薬品の適正使用推進のための人工知能を用いた医療情報データベースの利活用に関する研究
課題番号
H29-ICT-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
栗山 猛(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臨床研究センター 開発推進部 ネットワーク推進室)
研究分担者(所属機関)
- 中村 秀文(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臨床研究センター 開発企画主幹)
- 森田 英明(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 研究所 免疫アレルギー・感染症研究部)
- 森川 和彦(東京都立小児総合医療センター 臨床研究支援センター)
- 石川 洋一(明治薬科大学 薬学部)
- 加藤 省吾(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臨床研究センター データ管理部 データ科学室)
- 荒牧 英治(奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構 情報科学研究科)
- 井上 永介(聖マリアンナ医科大学 医学部 医学教育文化部門(医学情報学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本の小児領域で汎用されている医療用医薬品のうち、添付文書に小児の用法・用量が明確に記載されていないものが全体の60~70%を占めているといわれており、適応が取得されていない薬剤で薬物療法を実施せざるを得ないことが多くある。このような現状を踏まえ本研究では、平成31年度末までに小児医薬品の適正使用および安全対策推進のための情報を得ることのできるデータベースに人工知能技術・言語処理技術も活用した分析・評価の手法を開発することを目的とする。
平成29年度においては、言語処理技術を活用した添付文書情報の精査及び検索・抽出システムの整備、特定の領域における医薬品評価に必要となる項目について確定させた。平成30年度から、小児医療情報収集システムに格納されているデータについて、人工知能技術を活用し安全性の判定(危険予測など)が可能となるような仕組みについて整備を開始する。
平成29年度においては、言語処理技術を活用した添付文書情報の精査及び検索・抽出システムの整備、特定の領域における医薬品評価に必要となる項目について確定させた。平成30年度から、小児医療情報収集システムに格納されているデータについて、人工知能技術を活用し安全性の判定(危険予測など)が可能となるような仕組みについて整備を開始する。
研究方法
平成30年度(本研究2年目)においては、稼動に向けた準備として、平成29年度に実施した添付文書の小児に関する記述について、言語処理技術を用いて分析した結果より、機械学習を行うための「教師データ」としての利用についてさらに精査するとともに、同年度に整備した添付文書情報検索・抽出システムについて評価し、必要に応じてプログラム改修を実施する。なお、小児医療情報データベースから得られる医療情報について、安全性シグナルが検出された際の添付文書検索・抽出システムへのデータ出力(システム連携)についての仕様も確定させ、特定の医薬品(群)において試行的に稼動させていく。
また、小児医療情報DBに格納されている情報(患者背景(性別、年齢、体重、合併症など)、薬剤情報(薬剤及び投与量、投与期間)、検査結果情報など)について、人工知能技術を活用し、これら情報を読み込み、対象薬剤の使用頻度、使用実績並びに当該薬剤を使用した際の検査値異常などから個々の患者における安全性の判定(危険予測など)が可能となるような仕組みについても検討し仕様を確定させていく。
また、小児医療情報DBに格納されている情報(患者背景(性別、年齢、体重、合併症など)、薬剤情報(薬剤及び投与量、投与期間)、検査結果情報など)について、人工知能技術を活用し、これら情報を読み込み、対象薬剤の使用頻度、使用実績並びに当該薬剤を使用した際の検査値異常などから個々の患者における安全性の判定(危険予測など)が可能となるような仕組みについても検討し仕様を確定させていく。
結果と考察
平成30年度は、昨年度に整備した「添付文書検索・抽出システム」の小児医療情報DBとの連携並びに初期検討として感染症及びアレルギー領域における医薬品適正使用推進に向けた評価項目について、データを検索・評価を実施する計画であったが、小児医療情報収集システムにおける検索・抽出機能の整備、データ品質管理の実施、医療情報の利活用要綱の固定遅延などの理由により計画通りに進まなかった。しかし一方で、小児医療情報DBに格納されている実勢データに基づき薬剤が投与された際の異常変動について自動的に把握可能とするシステムの仕様を完成させることができた。これにより今まで明確となっていなかった特定の薬剤が投与された際の年齢・性別での有害事象の把握が容易となり、小児医療情報DBが有害事象DBとして活用されること並びに添付文書改訂などに向けたエビデンスデータとして利用できるインフラが整備され、小児での医薬品の適正使用推進及び迅速な安全対策を施すことが可能となる。
当該システムにより得られたデータについて人工知能技術を用いることで、有害事象発現の共通項を見出すなど個別の危険予測データとして活用していくことが可能となることが期待できる。
また本研究は、添付文書の精査を主目的としたものではないが、医療情報DBを安全対策・適正使用の推進に利用するためには、医療情報DBに格納されているデータ、検査値異常などの有害事象名、添付文書及びMedDRAなどでの記載について、機械学習を踏まえたAI技術を活用した整合性の整理が必要不可欠である。今年度、添付文書における副作用の“表記ゆれ”を把握し、これを小児DBとマッチングすることで機械学習のための「教師データ」の可能性について検討することができたと考える。
当該システムにより得られたデータについて人工知能技術を用いることで、有害事象発現の共通項を見出すなど個別の危険予測データとして活用していくことが可能となることが期待できる。
また本研究は、添付文書の精査を主目的としたものではないが、医療情報DBを安全対策・適正使用の推進に利用するためには、医療情報DBに格納されているデータ、検査値異常などの有害事象名、添付文書及びMedDRAなどでの記載について、機械学習を踏まえたAI技術を活用した整合性の整理が必要不可欠である。今年度、添付文書における副作用の“表記ゆれ”を把握し、これを小児DBとマッチングすることで機械学習のための「教師データ」の可能性について検討することができたと考える。
結論
昨今、医療情報DBを構築・整備し安全対策や開発推進に利用していくことが取り沙汰されている。しかし、これら収集した医療情報を活用していくためには、その構築・整備したDBの品質管理、法規制を念頭にしたデータ利用の運用手続き、比較検証する用語の整合性など、それぞれ大きなハードルがあるのが事実である。本研究を通して、これら課題を着実に解決していくことで、初めて真の意味での医療情報の活用が成せる。そのような観点からも本研究の意義は大きいと考えている。
平成31年度(令和元年度)(本研究の最終年度)においては、本研究で整備した各システムと小児医療情報DBとの連携を目指す。また小児の感染症及びアレルギー領域で使用されている医薬品について小児医療情報DBデータを基に評価を実施し適正使用の推進のためのデータを抽出・検索していく。さらには実勢データを用いた危険予測の可能性についても検証する。
平成31年度(令和元年度)(本研究の最終年度)においては、本研究で整備した各システムと小児医療情報DBとの連携を目指す。また小児の感染症及びアレルギー領域で使用されている医薬品について小児医療情報DBデータを基に評価を実施し適正使用の推進のためのデータを抽出・検索していく。さらには実勢データを用いた危険予測の可能性についても検証する。
公開日・更新日
公開日
2019-11-15
更新日
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