人工知能を活用した副作用症例報告の評価支援の基盤整備と試行的評価

文献情報

文献番号
201803015A
報告書区分
総括
研究課題名
人工知能を活用した副作用症例報告の評価支援の基盤整備と試行的評価
課題番号
H29-ICT-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
今任 拓也(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 潮田 明(国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター)
  • 森谷 純治(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品安全対策第一部)
  • 相原 道子(横浜市立大学大学院医学研究科 環境免疫病態皮膚科学)
  • 斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
13,001,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
市販後医薬品安全対策の骨格を成すものは、医薬品・医療機器等法の第六十八条の十に規定される副作用等の報告である。本報告は、主に製薬企業により症例報告書の形で直接医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出される。この企業からの報告は、年々増加傾向にあり、2015年には、海外症例35万件、国内症例5万件となっており、PMDAではこの膨大な副作用症例報告を効率的かつ適切に評価することが必要となっている。一方、人工知能はヒトの知的な処理を機械によって行う技術であり、ヒトの意思決定に代わるものになる可能性を秘めている。人工知能の研究は、1950年代から続いており、2006年ごろにディープラーニングという新たな技術が提唱され、現在では、第三次ブームとして、医療分野を含めた様々な分野において大きな期待が寄せられている。本研究は、PMDAにおける副作用判定の人的作業の効率化を図るため、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)および中毒性表皮壊死融解症(TEN)を対象とし、人工知能を用いて、副作用評価支援システムの構築のための基盤整備と人工知能を用いた副作用判定の試行的な評価を行うことを目的としている。
研究方法
本研究は、副作用症例報告の評価に人工知能を応用するための基盤整備と人工知能を用いた副作用の試行的評価の2つの工程により構成されており、今年度は、人工知能を用いた副作用の試行的評価を実施した。SJSおよびTENの判定に重要と考えられる特徴量を、専門家からのヒアリング結果および「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を基に人手により抽出し、その情報をデータテーブル化した。その後、作成したデータテーブルの情報を基に、機械学習を用いてSJSおよびTENの副作用判定を行い、その精度評価を実施した。また、テキストマイニングの手法を用い、SJSおよびTENの上位被疑薬と考えられる医薬品の添付文書を用い、さらなる特徴量を検討した。
結果と考察
PMDAの専門家による副作用判定において、副作用と認められた報告書100例を正例、副作用と認めるのに十分な所見あるいは情報がないと判断された報告書100例を抽出し、複数の専門家からのヒアリング結果および「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を基に機械学習用の7つの素性(特徴量)を選定し、サポートベクターマシン、Maximum Entropy Classifierなどの学習器による機械学習を実施したところ、3値素性を2値素性に変換した場合のガウシアンカーネル法において、83.5%の精度が得られた。また、人工知能が誤った36症例について、改めて専門家による副作用判定を行ったところ、23症例で正解が反転することが示唆されたため、新しい正解を作成し、再度、精度評価を行ったところ、専門家の判定精度(80~90%)と遜色ない86%の精度が得られた。また、特徴量の探索については、昨年度実施した医薬品副作用データベースによる解析より得られたSJSおよびTENの上位10被疑薬の添付文書内の項目「慎重投与」のテキストデータを形態素解析し、Word Cloudを作成したところ、「高齢者」という単語の頻出頻度が最も高く、「消化性潰瘍」、「肝障害」および「腎障害」などの単語も頻出していることが認められた。
結論
本研究において、人工知能を用いた場合の判定精度として、専門家の判定精度と遜色ない結果が得られた。今回の結果から機械学習を利用して構築されたシステムを運用することで、作業の効率化をはじめ、多くの利点があることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201803015Z