DPCとがん登録を軸としたデータベース拡充・連結についての研究

文献情報

文献番号
201803005A
報告書区分
総括
研究課題名
DPCとがん登録を軸としたデータベース拡充・連結についての研究
課題番号
H28-ICT-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 健一(国立がん研究センター中央病院 研究企画推進部)
  • 寺本 典弘(四国がんセンター・病理科 がん予防疫学研究部)
  • 小林 秀章(大隅鹿屋病院・放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
9,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は院内がん登録とDPCデータを軸として、ほかのデータとリンクをするシステムを拡充することでより有用なデータベースの構築の基礎を作ることを目的としている。院内がん登録にDPCをリンクさせる試みは、別途国立がん研究センターにおける研究・事業として進行しており、標準治療の実施率を集計して各施設に対してフィードバックが行われている。このようなデータリンケージをほかのデータ源についても試行し、その有用性を示すことが本研究の目的である。
研究方法
本研究は、リンケージを試みるデータとして、①放射線診断画像、②病理 レポート、③臨床試験のデータを検討した。放射線診断画像、病理レポートに関しては、個票ベースで院内がん登録と共通の匿名 ID を使って匿名化して収集した。臨床試験については、個票レベルでの匿名化ではなく、施設単位でマッチングして検討した。

結果と考察
結果:
これまで研究期間を通じて、情報収集協力施設の募集を積極的に進め、院内がん登録における対応表を使って匿名化して実際に収集してきた。放射線診断においては、4施設が1年分の院内がん登録に対応したデータの提供を完了した。病理情報については、日本病理学会において参加を呼びかけたことっで参加に関心があるとの申し出が増加し、汎用の匿名化用のソフトを使ってデータの抽出を行った。
同時に、これらを活用するシステムの開発を進めてきた。放射線画像については、画像を、院内がん登録情報とリンクさせることで、院内がん登録に含まれるがん、部位、組織型、ステージ(UICCによるTNM分類)、また性別、年齢範囲などを指定して、診断前の画像を系統的に検索可能とした。その中で使いやすいように、キー画像を検索結果に指定できる機能や、ユーザがコメントを残せる機能などを付加した教育学習に最適なシステムの開発を専門業者と協議しながら開発した。
 病理レポートについては病理情報システムのベンダーの協力を得て、当該社システムに対応した匿名化情報収集システムを完成させたが、次に他社システムから出力されたファイルにおいても決められた手順で匿名化処理可能なシステムを継続し、実用化した。また、収集された匿名化病理レポート情報を使用して、それらを施設で共有するための体制を検討している。集めたレポートをデータベース化しているが、これを参加施設における共有体制の構築を目指しているが、集められたデータから一部データベース化を開始、共有体制のセキュリティなどについて検討し、一定の共有システムを構築できた。臨床試験の対象者の特性と院内がん登録との比較を行い、それらの間での差異が確認された。


考察:
放射線画像、病理レポートの収集においては、匿名化のためのソフトウェアが完成した。しかし、放射線画像については、画像自体を検討してその画像内に映り込んでいる個人情報を消せず、その匿名化が手作業になってしまうために、そのような映り込みのない施設や、映り込みが一定の法則の中に限られるような施設以外ではデータの収集が困難であると考えられた。病理レポートについては、テキストデータを収集したことから、データの収集自体は容易であったといえる。今後、画像情報を収集するなどのニーズもあると考えられるが、放射線画像と異なり画像情報は古典的には病理診断医が必要と思った画像を選んで保存するのが通例である。Whole Slide Imagingのように標本の画像全体を保存するという技術も開発されつつあるものの、普及は今後の動きとなるし、画像の容量も非常に大きくなると考えられる。今回のデータ収集をベースとして、情報の本格的な活用による研究の推進を行っていく必要がある。
結論
院内がん登録とDPCデータを軸として、付加情報として放射線画像、病理レポートを収集することが可能であった。今回の研究はいずれも小規模なデータ収集であったが、データ収集に際しての諸課題を少しずつ解決しつつシステムを構築可能であった。引き続きデータ収集を試行しつつ、その有効な活用に向けた体制整備や活用事例の蓄積が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201803005B
報告書区分
総合
研究課題名
DPCとがん登録を軸としたデータベース拡充・連結についての研究
課題番号
H28-ICT-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 健一(国立がん研究センター中央病院 研究企画推進部)
  • 寺本 典弘(四国がんセンター・病理科 がん予防疫学研究部)
  • 小林 秀章(大隅鹿屋病院・放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成30年に改訂された、第3期がん対策推進基本計画(平成30年3月閣議決定)においては、「全国がん登録や院内がん登録によって得られるデータと他のデータとの連携により、より利活用しやすい情報が得られる可能性がある(後略)」とされており、「別に収集されているがんのデータ等との連携について、個人情報の保護に配慮しながら検討する」とされている。また、「がん研究10か年戦略の推進に関する報告書」(平成31年4月)においても、「がん登録データの効果的な利活用を図る観点から個人情報の保護に配慮しながら、がん登録とレセプト情報等、臓器や診療科別に収集されているがんのデータ等との連携について研究を進めるべきである」とされている。本研究はその方向性を実現するために、院内がん登録とDPCデータを軸として、ほかのデータとリンクをすることを試行し、その課題を同定しつつ解決策を検討し、システムを拡充することでより有用なデータベースの構築の基礎を作ることを目的としている。院内がん登録にDPCをリンクさせる試みは、本研究の研究者らが、すでに、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会がん登録部会と連携し、がん診療連携拠点病院において院内がん登録とDPCデータをリンクして様々な標準診療実施率の算定・施設フィードバック等の研究を行ってきた。これは、現在、国立がん研究センターにおける研究・事業として進行しており、標準治療の実施率を集計して各施設に対してフィードバックが行われている。そのようなデータ突合と共有の経験を踏まえ、その知見をほかのデータ源に対して拡張することが本研究の企図である。
研究方法
研究は、リンケージを試みるデータとして、①放射線診断画像、②病理レポート、③臨床試験のデータを検討した。放射線診断画像、病理レポートに関しては、個票ベースで院内がん登録と共通の匿名IDを使って匿名化して収集した。臨床試験については、個票レベルでの匿名化ではなく、施設単位でマッチングして検討した。①②については本研究は開発研究であり、その実施過程において課題を洗い出すとともに、同時にその解決を図っていった。①②ともに、初年度はデータを匿名化する専用ソフトウェアを開発し、数施設においてパイロット的にデータ収集を試行、2年度以降で順次、協力施設を拡大した。さらに、収集したデータを協力施設間で共有する体制について検討した。③については2つの日本臨床腫瘍グループの実施するJCOG試験について、院内がん登録の生存率付きデータを使って、試験参加施設、試験参加施設以外の施設の受診患者、および臨床試験参加患者の3者における比較を行うことで、外的妥当性の検討を行った。
結果と考察
これまで研究期間を通じて、情報収集のための協力施設の負担軽減をするための、専用のデータ収集・匿名化ソフトウェアの開発を行い継続的な改善を進めるとともに、協力施設の募集を積極的に進め、院内がん登録における対応表を使って匿名化して実際に収集してきた。病理レポートについては病理情報システムのベンダーの協力を得て、当該社システムに対応した匿名化情報収集システムを完成させたが、次に他社システムから出力されたファイルにおいても決められた手順で匿名化処理可能なシステムを継続し、実用化した。病理情報については、日本病理学会において参加を呼びかけたことっで参加に関心があるとの申し出が増加し、汎用の匿名化用のソフトを使ってデータの抽出を行った。
また、収集された匿名化病理レポート情報を使用して、それらを施設で共有するための体制を検討している。集めたレポートをデータベース化しているが、これを参加施設における共有体制の構築を目指しているが、集められたデータから一部データベース化を開始、共有体制のセキュリティなどについて検討し、一定の共有システムを構築できた。臨床試験の対象者の特性と院内がん登録との比較を行い、それらの間での差異が観察された。
結論
院内がん登録とDPCデータを軸として、付加情報として放射線画像、病理レポートを収集することが可能であった。当研究において、様々なデータを突合あるいは比較して活用することの意義が確認された。また、院内がん登録がそれらの軸となって医療の発展インフラとなりうることについても確認された。
今回の研究はいずれも小規模なデータ収集であったが、データ収集に際しての諸課題を少しずつ解決しつつシステムを構築可能であった。引き続きデータ収集を試行しつつ、その有効な活用に向けた体制整備や活用事例の蓄積が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201803005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究において、院内がん登録を軸としたデータ収集と、その活用する体制が構築された。放射線画像においては、教育用画像を院内がん登録に含まれる病理情報をもとに検索が可能であり効率的な学習が可能に、病理所見についても院内がん登録をベースとした検索や施設間での共有が可能となっており、このデータを基盤とした研究が新たに開始されるなど活用が進んでいる。今後は必要なデータを収集する体制を構築してより詳細なデータをもとに研究を行うことを可能にしていく。
臨床的観点からの成果
今回は臨床的なエビデンスを生む前の基盤整備についての研究であるため、臨床的な成果はない。
ガイドライン等の開発
本研究では、院内がん登録と臨床試験の参加患者の比較を行い、院内がん登録患者で代表される一般患者は若干若く、早期であることや、生存率が高いことが判明したため、臨床試験の一般化可能性については慎重にすべきであることが確認された。
ガイドラインは臨床試験に基づく治験により作られていくことが多いが、その解釈、特に一般化可能性については慎重に検討すべきであると考えられる。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Rikitake R, Tsukada Y, Higashi T, et al.
Use of Intensity-Modulated Radiation Therapy for Nasopharyngeal Cancer in Japan
Analysis Using a Nationwide Database.  (2019)
DOI:10.1093/jjco/hyz042
原著論文2
Higashi T, Watanabe T, Iwamoto M, et al.
The Use of Sensitive Imaging Modalities for Cervical Cancer Staging in Japan
Global Journal of Health Science , 11 (3) , 75-82  (2019)
DOI: 10.5539/gjhs.v11n3p75
原著論文3
Matsumura S,Ozaki M, Higashi T, et al.
Development and Pilot-testing of Quality Indicators for Primary Care in Japan
JMA Journal  (2019)
DOI: 10.31662/jmaj.2018-0053
原著論文4
Motoyama S, Maeda E, Higashi T, et al.
Appropriateness of the institute certification system for esophageal surgeries by the Japan Esophageal Society: evaluation of survival outcomes using data from the National Database of Hospital-Based Cancer Registries in Japan
Esophagus , jan;16 (1) , 114-121  (2019)
DOI: 10.1007/s10388-018-0646-4
原著論文5
Ozaki M, Matsumura, S, Higashi T, et al.
Quality of primary care provided in community clinics in Japan.
Journal of General and Family Medicine , 20 (2) , 28-54  (2018)
DOI:10.1002/jgf2.229
原著論文6
Sakakibara N, Higashi T, Yamashita I, et al.
Negative pain management index scores do not necessarily indicate inadequate pain management: a cross-sectional study.
BMC Palliat Care. , Aug 24 (17 (1)) , 102-  (2018)
DOI:10.1186/s12904-018-0355-8
原著論文7
Okuyama A, Higashi T.
Patterns of cancer treatment in different age groups in Japan: An analysis of hospital-based cancer registry data, 2012–2015.
Jpn J Clin Oncol. , May 1 (48(5)) , 417-425  (2018)
DOI: 10.1093/jjco/hyy032.
原著論文8
Hamamoto Y, Sakakibara N, Higashi T, et al.
Treatment selection for esophageal cancer: evaluation from a nationwide database.
Esophagus , Apr (15(2)) , 109-114  (2018)
DOI: 10.1007/s10388-018-0605-0
原著論文9
Yoshitane sukamoto, Hiroyuki Takahata, NorihiroTeramoto, et al.
Primary gastric low-grade fibromyxoid sarcoma with FUS-CREB3L1 fusion - A hitherto undescribed origin of Evans tumor
Human Pathology: Case Reports , 11 (3) , 51-55  (2018)
DOI:10.1016/j.ehpc.2017.10.007
原著論文10
Yokoyama, T. Takehara, K. Teramoto, N. et al.
Lynch syndrome-associated endometrial carcinoma with MLH1 germline mutation and MLH1 promoter hypermethylation: a case report and literature review
BMC Cancer , 18 (1) , 576-  (2018)
DOI: 10.1186/s12885-018-4489-0
原著論文11
Kojima, A. Shimada, M. Teramoto, N. et al.
Chemoresistance of Gastric-Type Mucinous Carcinoma of the Uterine Cervix: A Study of the Sankai Gynecology Study Group
Int J Gynecol Cancer , 28 (1) , 99-106  (2018)
DOI: 10.1097/IGC.0000000000001145
原著論文12
Tsukada Y, Higashi T, Shimada H, et al.
The use of neoadjuvant therapy for resectable locally advanced thoracic esophageal squamous cell carcinoma in an analysis of 5016 patients from 305 designated cancer care hospitals in Japan.
Int J Clin Oncol. , 23 (1) , 81-91  (2018)
DOI: 10.1007/s10147-017-1178-y
原著論文13
Inoue I, Nakamura F, Higashi T, et al.
Cancer in adolescents and young adults: National incidence and characteristics in Japan.
Cancer Epidemiol. , 51 , 74-80  (2017)
DOI: 10.1016/j.canep.2017.10.010
原著論文14
Inohara T, Numasawa Y, Higashi T, et al.
Predictors of high cost after percutaneous coronary intervention:A review from Japanese multicenter registry overviewing the influence of procedural complications.
American Heart Journal , 194 , 61-72  (2017)
DOI: 10.1016/j.ahj.2017.08.008
原著論文15
Tomizuka T, Namikawa K, Higashi T.
Characteristics of melanoma in Japan: a nationwide registry analysis 2011-2013
Melanoma Res. , 27 (5) , 492-497  (2017)
DOI: 10.1097/CMR.0000000000000375
原著論文16
Rikitake R, Ando M, Higashi T, et al.
Current status of superficial pharyngeal squamous cell carcinoma in Japan.
Int J Clin Oncol. , 22 (5) , 826-833  (2017)
DOI: 10.1007/s10147-017-1135-9
原著論文17
Takiguchi S, Teramoto, N
Crizotinib, a MET inhibitor, prevents peritoneal dissemination inpancreatic cancer./
Int J Oncol. , Jul (51(1)) , 184-192  (2017)
DOI: 10.3892/ijo.2017.3992
原著論文18
Ohta K, Teramoto N
Usefulness of positron emission tomography (PET)/contrast-enhanced computed tomography (CE-CT) in discriminating between malignant and benign intraductal papillary mucinous neoplasms (IPMNs).
Pancreatology. , 17 (6) , 911-919  (2017)
DOI: 10.1016/j.pan.2017.09.010
原著論文19
Ogura K, Higashi T, Kawai A.
Statistics of bone sarcoma in Japan: Report from the Bone and Soft Tissue Tumor Registry in Japan.
J Orthop Sci , 22 (1) , 133-143  (2017)
DOI:10.1016/j.jos.2016.10.006
原著論文20
Okuyama A, Nakamura F, Higashi T.
Prescription of Prophylactic Antiemetic Drugs for Patients Receiving Chemotherapy With Minimal and Low Emetic Risk.
JAMA Oncol. , 3 (3) , 344-350  (2017)
DOI: 10.1001/jamaoncol.2016.4096

公開日・更新日

公開日
2021-07-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201803005Z