文献情報
文献番号
201803003A
報告書区分
総括
研究課題名
プライマリケアの日常診療におけるウィルス感染症スクリーニング支援システムの構築
課題番号
H28-ICT-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
森川 和彦(東京都立小児総合医療センター 臨床研究支援センター)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 唯男(亀田ファミリークリニック館山)
- 矢作 尚久(東京大学大学院工学系研究科 品質・医療社会システム工学寄付講座)
- 加藤 省吾(国立成育医療研究センター臨床研究センターデータ管理部 データ科学室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
10,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
問診は診療において重要な情報であり、診断に寄与する情報量の50-75%を占める。医師が暗黙知の中でどのように患者の状態をとらえ、診断を下すかという思考を検討するためには、これらの情報を的確に収集し、解析可能環境を整備することは重要である。
本研究では、迅速検査が広まっているウィルス感染症について、要介入・要検査を判定する手法、判定に基づくアクションを取った場合の費用対効果を評価する手法を開発し、院内・院外におけるスクリーニング支援システムを、小児医療情報収集システムの基盤システムであるCDMS基盤を活用して構築する。本研究を通じて診断プロセスの体系化を行い、検査前確率・尤度比等や、診断、病型、病期、重症度等に応じたリスク・成績・予後等を提示するスクリーニング支援システムを開発する。適切な診療行為の実施を行うための診療支援を行うものであり、医療の質向上・均てん化・診療支援に必要なエビデンスを提供することが期待できる。
本研究では、迅速検査が広まっているウィルス感染症について、要介入・要検査を判定する手法、判定に基づくアクションを取った場合の費用対効果を評価する手法を開発し、院内・院外におけるスクリーニング支援システムを、小児医療情報収集システムの基盤システムであるCDMS基盤を活用して構築する。本研究を通じて診断プロセスの体系化を行い、検査前確率・尤度比等や、診断、病型、病期、重症度等に応じたリスク・成績・予後等を提示するスクリーニング支援システムを開発する。適切な診療行為の実施を行うための診療支援を行うものであり、医療の質向上・均てん化・診療支援に必要なエビデンスを提供することが期待できる。
研究方法
平成30年度においては、医師所見入力支援ツールやスクリーニング支援システムをCDMS基盤上へ展開し、実際の診療現場においてより広い患者へ展開した。業務に合わせたシステム設定と運用の修正、研究課題で拡張している機能改修を進めた。これらから収集された医療情報等を利用して、スクリーニング支援システムの検証やスクリーニング手法・医療経済評価手法の検証を実施した。
結果と考察
DMS基盤へスクリーニング支援システムのスクリーニング支援機能の追加と医師所見入力支援ツールの拡張、検査推奨機能の拡張を行った。また、問診システムの利用促進のために、院外から問診を利用し、医療機関で管理できるように予約管理システム・受付管理システムとの連携を実現した。臨床現場へ展開し、利用可能であることが確認された。
問診システムおよび診療支援システムを導入後、問診システムは順調に運用された。利用者からのフィードバックでは、問診システムに対してほとんどが好意的な結果を示し、入力時間もだとうなものであり、問診システムを含む診療支援システムの利用可能性が示された。今後、問診システムを含む診療支援システムが、臨床現場において広く利用されることが可能であると考えられた。
問診システムを導入している日本国内3カ所の小児科を含むクリニックにおいて、平成29年1月以降の当該研究期間中、問診システムを利用した対象者は5,352名だった。最終年度においては、患者の気になる症状は86.9%で入力されていた。診断名の入力割合は44%だった。気になる症状としては、鼻汁・鼻閉(56.9%)、咳嗽(55.3%)、発熱(47.8%)がほぼ半数程度の患者が訴えており、発疹(13.7%)、嘔吐(10.5%)が次いで多かった。診断名として最も多かったものが、急性上気道炎(57.6%)であり、半数以上で診断されていた。ついで、急性胃腸炎(8.9%)、インフルエンザ(7.4%)、気管支喘息(4.8%)、急性気管支炎(3.5%)、手足口病(2.7%)であった。問診情報の年齢、喘鳴、咳嗽、鼻汁・鼻閉、くしゃみの情報を用いて、RSV陽性患者のスクリーニングモデルを作成し、性能を評価した。
医療経済効果評価手法の検証として、協力医療機関から収集された実データによる試算を行った。検査費用削減効果として、クリニック受診患者の実際の患者状態のデータから、気道症状を有する患者の割合が66.1%、スクリーニング陽性の割合が40.1%として、全国で年間約2,033億円を削減できる可能性があると試算することができた。院外での来院判断を含む医療費削減効果として、風邪症状のない患者の割合が33.9%、気道症状はあるがスクリーニング陰性の割合が26.0%、スクリーニング陽性の割合が40.1%の場合、全国で年間約2,579億円を削減できる可能性があると試算することができた。
問診システムおよび診療支援システムを導入後、問診システムは順調に運用された。利用者からのフィードバックでは、問診システムに対してほとんどが好意的な結果を示し、入力時間もだとうなものであり、問診システムを含む診療支援システムの利用可能性が示された。今後、問診システムを含む診療支援システムが、臨床現場において広く利用されることが可能であると考えられた。
問診システムを導入している日本国内3カ所の小児科を含むクリニックにおいて、平成29年1月以降の当該研究期間中、問診システムを利用した対象者は5,352名だった。最終年度においては、患者の気になる症状は86.9%で入力されていた。診断名の入力割合は44%だった。気になる症状としては、鼻汁・鼻閉(56.9%)、咳嗽(55.3%)、発熱(47.8%)がほぼ半数程度の患者が訴えており、発疹(13.7%)、嘔吐(10.5%)が次いで多かった。診断名として最も多かったものが、急性上気道炎(57.6%)であり、半数以上で診断されていた。ついで、急性胃腸炎(8.9%)、インフルエンザ(7.4%)、気管支喘息(4.8%)、急性気管支炎(3.5%)、手足口病(2.7%)であった。問診情報の年齢、喘鳴、咳嗽、鼻汁・鼻閉、くしゃみの情報を用いて、RSV陽性患者のスクリーニングモデルを作成し、性能を評価した。
医療経済効果評価手法の検証として、協力医療機関から収集された実データによる試算を行った。検査費用削減効果として、クリニック受診患者の実際の患者状態のデータから、気道症状を有する患者の割合が66.1%、スクリーニング陽性の割合が40.1%として、全国で年間約2,033億円を削減できる可能性があると試算することができた。院外での来院判断を含む医療費削減効果として、風邪症状のない患者の割合が33.9%、気道症状はあるがスクリーニング陰性の割合が26.0%、スクリーニング陽性の割合が40.1%の場合、全国で年間約2,579億円を削減できる可能性があると試算することができた。
結論
本研究を通じて、医師所見入力支援ツールやスクリーニング支援システムをCDMS基盤上へ展開し、診療現場において利用し、患者問診に対応して検査推奨を提示することで診療を支援するシステムを実証した。CDMS基盤へスクリーニング支援システムのスクリーニング支援機能の追加と医師所見入力支援ツールの拡張、検査推奨機能の拡張を行った。また、問診システムの利用促進のために、院外から問診を利用し、医療機関で管理できるように予約管理システム・受付管理システムとの連携を実現した。臨床現場へ展開し、利用可能であることが確認された。これらの機能は診療を支援し、量・質ともに優れた臨床研究の基盤となり医療現場の基盤となることが示された。
公開日・更新日
公開日
2019-11-15
更新日
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