周産期関連の医療データベースのリンケージの研究

文献情報

文献番号
201803001A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期関連の医療データベースのリンケージの研究
課題番号
H28-ICT-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
森崎 菜穂(国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大田 えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学 大学院看護学研究科)
  • Mahbub Latif(マハブブ ラティフ)(聖路加国際大学 専門職大学院公衆衛生学研究科)
  • 康永 秀生(東京大学・大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター・生命倫理研究室)
  • 永田 知映(横尾 知映)(国立成育医療研究センター・臨床研究教育部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
9,385,000円
研究者交替、所属機関変更
研究代表者交替 森 臨太郎(平成30年4月1日~平成30年11月22日)→森崎 菜穂(平成30年11月23日~平成31年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では成育医療分野における各種統計や医学団体所有データベースを過去に活用し、また周産期医療関係の各種データベースをリンケージする手法に関する研究を行ってきたという経験を生かして、成育医療分野のデータベースを連結することで拡充し、さらに多くの臨床研究に活用する。また、公的統計の妥当性検証やデータベース同士の自動連結手法を確立することで今後の研究基盤を作成することが目的である。
研究方法
研究3年目である本年度は、i) 各分担の先生方と産婦人科医・小児科医・疫学者の協調を促し、周産期に関連する各種のデータベースを連結したデータベースの解析を行い単一のデータベースからは産出不可能であったエビデンスを産出する、ⅱ)他の大規模データベースを連結するための整備を行う、ことを目的として、これを実践した。
具体的には下記の方法で研究を行った。
日本語に対応した自然言語解析の技術の一つであるInterSystems IRIS Natural Language Processing (NLP) Japaneseを利用し、レセプト傷病名の自動類型化が可能であるかを検証する。(分担研究者:森)
周産期医療の入院診療の処置・投薬についての情報をレセプトから抽出し、新生児臨床データベース(NRN)などの臨床レジストリを代替するシステムを作れるかを検証する。 (分担研究者:森崎、康永)
人口動態統計の出生票および死産票に記載されている児の母の情報と、女性の死亡票を高精度にリンケージすることで、妊娠後の女性の死亡を把握するための方法を検証する(平成29年度から継続)。(分担研究者:森崎、ラティフ、永田、大田)
周産期関連の全国データベースや、これら同士を連結することで得られたデータベースを多角的に解析することで、妊婦および出生児の長期予後について、成育医療分野に有用なエビデンスを提供する。(平成28年度から継続)(分他研究者:森崎)
 既存の医療情報を医学研究のために利活用するに際して、適用される現行法令や指針にはどのようなものがあり、また、各法令等にはいかなる事項等が規定されているのかにつきまとめる。(分担研究者:掛江)
なお、本研究を実施するにあたり、医療データベースのリンケージに関する倫理的・法的側面の妥当性についても、研究分担者である倫理専門家の監督のもとで行った。
結果と考察
本年度は研究の最終年度として、研究最終年度である本年度は、研究1-2年目に活用してきた人口動態統計や周産期医療に関する臨床レジストリの継続的な利活用のみならず、レセプト・データベースやDPC情報へのリンケージの拡大を検討した。また、これらのデータとのリンケージ体制の構築と実務を通して、現状の可能性と問題点とまとめた。
また、引き続き、得られたデータベースの解析から、妊婦および児の予後に関係する医学的・社会的因子について、産科医・小児科医・疫学者とともに複数のエビデンスを発表した。
さらに、今後増加が見込まれる医療情報の二次利用による臨床研究を行う際に留意するべき現行法令や指針とまとめ、今後の参考資料とした。
結論
研究最終年度である本年度は、リンケージを行うデータベースの更なる拡張を行うと同時に、これらのデータとのリンケージ体制の構築と実務および医療情報の二次利用による臨床研究を行う際に留意するべき現行法令や指針とまとめることを通して、医療情報のデータ・リンケージとその利活用の可能性と問題点とまとめた。

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201803001B
報告書区分
総合
研究課題名
周産期関連の医療データベースのリンケージの研究
課題番号
H28-ICT-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
森崎 菜穂(国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター・政策科学研究部)
  • 康永秀生(東京大学・大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学)
  • 掛江直子(国立成育医療研究センター・生命倫理研究室)
  • 溝口史剛(前橋赤十字病院・小児科)
  • 永田知映(横尾知映)(国立成育医療研究センター・臨床研究教育部)
  • 大田えりか(伊東えりか)(聖路加国際大学大学院・看護学研究科/国際看護学)
  • Mahbub Latif(マハブブ ラティフ)(聖路加国際大学専門職大学院公衆衛生学研究科・医療統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児医療および周産期医療は、医療計画の「5疾病5事業」に含まれ、その医療体制整備は極めて重要である。本分野では関連学会が積極的にレジストリを作成し、政府統計も豊富に行われてきた。しかし、政府統計の多くは医学的情報に欠け、学会レジストリはカバレージに問題があり、有用なエビデンスを算出するには、いずれも一長一短であった。
本研究班構成員は、今までも成育医療分野における各種統計や医学団体所有データベースを連結・解析し、臨床的・医療政策的に有用なエビデンスの算出やリンケージ手法の倫理的妥当性に関する研究等を通して、研究基盤作成に貢献してきた経験を踏まえ、成育医療分野のデータベースを連結することで拡充し、さらに多くの臨床研究に活用し、公的統計の妥当性検証やデータベース同士の自動連結手法の確立することで今後の研究基盤を作成することを目的とした
研究方法
研究3年間を通して、小児慢性特定疾病登録情報を縦断的に連結し、さらに他のデータベースと連結するための分析が行われた(主に森班)。
DPC情報の死亡票や他レジストリとのリンケージについての妥当生評価は2016-2017年度に実施し(主に康永班)、当該分担研究班にアクセスがあるDPC情報は他の臨床情報とのリンケージが行えないという障害を克服するため研究3年目には他分担研究班(森崎班)と合同で新生児関連臨床レジストリのデータ・リンケージ体制の考案を行った。
小児死因統計の臨床的死因との合致性に影響する要因に関する分担研究は、死亡票に記載された死因の正確性について研究1-2年目に解析を行った(溝口班)。本研究テーマを主題とする別研究班(厚生労働科学研究費補助金(健やか次世代育成総合研究事業)「突然の説明困難な小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性に関する研究」)の開始により、こちらの研究班で継続実施される形となり、本分担研究(溝口班)は最終年度途中までの活動となった。
人口動態統計のリンケージの手法論の検討と実践は研究3年間のあいだ継続して実施され(主に永田・森崎班が担当)、方法論の更なる改善のために研究3年目より生物統計専門家を筆頭とする分担研究班が増設された(ラティフ班)。本リンケージデータを用いて産後1年以内の死亡数および死因、自殺者の社会背景を算出研究研究2-3年目に実施された(主に永田・大田班が担当)。
また、人口動態統計と臨床レジストリ情報をリンケージしたデータベースの解析は3年間を通じて実施され、多くの臨床疫学論文が作成された(主に康永班・森崎班)。
法律面・倫理面では、3年間を通して個別研究で用いられたリンケージ手法について、その倫理的妥当性の監督に加え、医療データベースのリンケージ研究実施に際して適用される法令等に関する検討が行われた(掛江班)。
なお、研究代表者の職場異動にあたり、3年目の年度途中で研究代表者の交代が行われた
結果と考察
本研究初年度は各分担班同士の情報共有を促し、各種データのリンケージ及び利活用の推進を行った。各分担班でも研究が進んでいるとともに、他分野のデータベースとの連結可能性についても模索が行われた。
研究2年目は、DPCデータベースや小児慢性特定疾病データベースなどの大規模データベースを他のデータとリンケージして活用する際に重要となる妥当性評価を行うとともに、平成15年より導入された人口動態統計オンライン報告システムに含まれている個人識別符号を利用して出生票とその母の死亡票を高精度にリンケージするなど、新たなリンケージ手法を検討した。
研究3年目は、研究1-2年目に活用してきた人口動態統計や周産期医療に関する臨床レジストリの継続的な利活用のみならず、レセプトやDPC情報へのリンケージの拡大を検討した。また、これらのデータとのリンケージ体制の構築と実務を通して、現状の可能性と問題点とまとめた。
3年間を通して、得られたデータベースの解析から、妊婦および児の予後に関係する医学的・社会的因子について、産科医・小児科医・疫学者とともに複数のエビデンスを数多く発表することができた。さらに、これらのデータとのリンケージ体制の構築と実務および医療情報の二次利用による臨床研究を行う際に留意するべき現行法令や指針とまとめることを通して、医療情報のデータ・リンケージとその利活用の可能性と問題点についてまとめることができた。
結論
-

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201803001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究から算出した成果として、Pediatrics, British Journal of Obstetrics and Gynecology, International Journal of Epidemiology, Archives of Diseases in Childhood: Fetal and Neonatal Editionなどの医学系科学雑誌に、英文原著論文29本を刊行した。また、一部の研究成果が一流雑誌Scienceに取り上げられた。
臨床的観点からの成果
上記の論文発表を通して、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、小児喘息、ウィルス(RSウィルス、インフルエンザ)等による感染症、川崎病、など数々の疾病について、その発症や増悪に関連する因子を報告した。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
疫学情報・医療情報のリンケージによる活用に関する先行例となった
その他のインパクト
当研究班にて発表した妊産婦死亡数と自殺数に関連する報告、高齢妊娠における妊娠予後に関する報告、妊娠中の体重増加の推奨量に関する報告、日本人の平均身長低下に関する報告はいずれも、テレビ・新聞・インターネットニュースなどのマスコミに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Motegi, Narumi; Morisaki, Naho; Suto, Maiko, et al.
Secular trends in longevity among people with Down syndrome in Japan, 1995–2016
Pediatrics International , 63 (1) , 94-101  (2021)
doi: 10.1111/ped.14354
原著論文2
Suto M, Isayama T, Morisaki N.
Population-Based Analysis of Secular Trends in Age at Death in Trisomy 18 Syndrome in Japan from 1975 to 2016.
Neonatology. , 118 (1) , 47-53  (2021)
doi: 10.1159/000512922.
原著論文3
Okubo Y, Miyairi I, Michihata N, et al.
Recent Prescription Patterns for Children With Acute Infectious Diarrhea
Journal of pediatric gastroenterology and nutrition , 68 ((1)) , 13-16  (2019)
10.1097/MPG.0000000000002115.
原著論文4
Ogawa K, Matsushima S, Urayama KY, et al.
Association between adolescent pregnancy and adverse birth outcomes, a multicenter cross sectional Japanese study
Scientific Reports , 9 ((1)) , 2365-  (2019)
10.1038/s41598-019-38999-5
原著論文5
Yamaoka Y, Morisaki N, Noguchi H, et al.
Comprehensive Assessment of Risk Factors of Cause-Specific Infant Deaths in Japan.
Journal of Epidemiology , advpub  (2018)
10.2188/jea.JE20160188
原著論文6
Smith LK, Morisaki N, Morken NH, et al.
An International Comparison of Death Classification at 22 to 25 Weeks' Gestational Age
Pediatrics , 142 ((1))  (2018)
10.1542/peds.2017-3324
原著論文7
Okubo Y, Morisaki N, Michihata N, et al.
Dose-dependent relationships between weight status and clinical outcomes among infants hospitalized with respiratory syncytial virus infections
Pediatric pulmonology , 53 ((4)) , 461-466  (2018)
10.1002/ppul.23949
原著論文8
Okubo Y, Michihata N, Uda K, et al.
Dose-response relationship between weight status and clinical outcomes in pediatric influenza-related respiratory infections
Pediatric pulmonology , 53 ((2)) , 218-223  (2018)
10.1002/ppul.23927
原著論文9
Okubo Y, Michihata N, Morisaki N, et al.
Effects of Glucocorticoids on Hospitalized Children With Anaphylaxis
Pediatric emergency care  (2018)
10.1097/pec.0000000000001544
原著論文10
Okubo Y, Michihata N, Morisaki N, et al.
Recent trends in practice patterns and impact of corticosteroid use on pediatric Mycoplasma pneumoniae-related respiratory infections
Respiratory investigation , 56 ((2)) , 158-165  (2018)
10.1016/j.resinv.2017.11.005
原著論文11
Okubo Y, Michihata N, Morisaki N, et al.
Association Between Dose of Glucocorticoids and Coronary Artery Lesions in Kawasaki Disease.
Arthritis care & research , 70 ((7)) , 1052-1057  (2018)
10.1002/acr.23456
原著論文12
Okubo Y, Michihata N, Morisaki N, et al.
Recent patterns in antibiotic use for children with group A streptococcal infections in Japan
ournal of global antimicrobial resistance , 13 , 55-59  (2018)
10.1016/j.jgar.2017.11.004
原著論文13
Okubo Y, Michihata N, Morisaki N, et al.
Recent trends in practice patterns and comparisons between immunoglobulin and corticosteroid in pediatric immune thrombocytopenia
International journal of hematology. , 107 ((1)) , 75-82  (2018)
10.1007/s12185-017-2322-1
原著論文14
Morisaki N, Isayama T, Samura O, et al.
Socioeconomic inequity in survival for deliveries at 22-24 weeks of gestation
Child Fetal Neonatal Ed , 103 ((3)) , F202-F207  (2018)
10.1136/archdischild-2017-312635
原著論文15
Okubo Y, Michihata N, Yoshida K, et al.
Impact of pediatric obesity on acute asthma exacerbation in Japan. Pediatric allergy and immunology
official publication of the European Society of Pediatric Allergy and Immunology , 28 ((8)) , 763-767  (2017)
10.1111/pai.12801
原著論文16
Ogawa K, Urayama KY, Tanigaki S, et al.
Association between very advanced maternal age and adverse pregnancy outcomes: a cross sectional Japanese study
BMC pregnancy and childbirth , 17 ((1)) , 349-  (2017)
10.1186/s12884-017-1540-0
原著論文17
Ogawa K, Morisaki N, Saito S, et al.
Association of Shorter Height with Increased Risk of Ischaemic Placental Disease.
Paediatric and perinatal epidemiology , 31 ((3)) , 198-205  (2017)
10.1111/ppe.12351
原著論文18
Darlow BA, Lui K, Kusuda S, et al.
International variations and trends in the treatment for retinopathy of prematurity
The British journal of ophthalmology , 101 ((10)) , 1399-1404  (2017)
10.1136/bjophthalmol-2016-310041
原著論文19
Helenius K, Sjors G, Shah PS, et al.
Survival in Very Preterm Infants: An International Comparison of 10 National Neonatal Networks
Pediatrics , 140 ((6))  (2017)
10.1542/peds.2017-1264
原著論文20
Morisaki N, Ogawa K, Urayama KY, et al.
Preeclampsia mediates the association between shorter height and increased risk of preterm delivery
International journal of epidemiology , 46 ((5)) , 1690-1698  (2017)
10.1093/ije/dyx107

公開日・更新日

公開日
2021-07-14
更新日
2023-05-29

収支報告書

文献番号
201803001Z