文献情報
文献番号
201801018A
報告書区分
総括
研究課題名
ナショナルデータベース(NDB)データ分析における病名決定ロジック作成のための研究
課題番号
H30-政策-指定-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
満武 巨裕(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
研究分担者(所属機関)
- 喜連川 優(東京大学 生産技術研究所)
- 合田 和生(東京大学 生産技術研究所)
- 横田 治夫(東京工業大学 情報理工学院)
- 北川 博之(筑波大学)
- 櫻井 保志(熊本大学 大学院先端科学研究部)
- 酒井 未知(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 )
- 佐久間 淳(筑波大学 システム情報系)
- 豊田 正史(東京大学 生産技術研究所)
- 杉山 麿人(国立情報学研究所)
- 小笠原 克彦(北海道大学 大学院保健科学研究院)
- 藤森 研司(東北大学 大学院・医学系研究科)
- 東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センターがん臨床情報部)
- 大江 和彦(東京大学 医学部附属病院)
- 山本 隆一(東京大学 医学部附属病院)
- 橋本 英樹(東京大学 大学院医学系研究科)
- 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
- 伏見 清秀(東京医科歯科大学)
- 宮田 裕章(慶應義塾大学)
- 津本 周作(島根大学 医学部)
- 松田 晋哉(産業医科大学)
- 中島 直樹(九州大学病院メディカルインフォメーションセンター)
- 永井 良三(自治医科大学)
- 山縣 邦弘(筑波大学)
- 横手 幸太郎(千葉大学)
- 秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院)
- 戸谷 義幸(横浜市立大学附属病院)
- 亀井 美和子(日本大学 薬学部)
- 尾島 俊之(浜松医科大学)
- 谷澤 幸生(山口大学 大学院医学系研究科医学専攻)
- 森田 朗(津田塾大学 総合政策学科)
- 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
- 飯島 勝矢(東京大学高齢社会総合研究機構)
- 後藤 励(慶應義塾大学経営管理研究科)
- 野田 光彦(学校法人 埼玉医科大学)
- 佐方 信夫(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 )
- 酒井 未知(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
19,266,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の6年間データを保有する「次世代超高速・超学際NDBデータ研究基盤」を活用して、病名決定ロジックを適用した患者数の算出と疾病別医療費の推計を行うことが目的である。
研究方法
初年度は、生活習慣病を対象に、病名や処置等のレセプト情報の定義(ロジック)を作成した。日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会、日本腎臓学会、日本高血圧学会との連携のもと、学会の理事・評議員を中心に検討を行った。2009-2014年のNDBにおける医科・調剤レセプトデータを活用し傷病名マスタより各疾患の病名を定義した。同様に処置や医薬品も定義をした。疾患によっては、都道府県別、医療機関規模別、性別、年齢階級別患者数や2014年の全国人口を基準人口として、男女ごとに年齢調整した都道府県別受療率(10万人対)を算出する。ロジックを実装した解析を実施する前段階として、NDBによる抽出の実行可能性を検証する目的で糖尿病、急性心筋梗塞、高血圧、悪性新生物について病名のみの患者数の集計を実施した。さらに、悪性新生物の中から大腸がんを対象とし、公衆衛生学・疫学についての専門家、大腸がんに関する臨床専門家とエキスパートパネルを作成し、病名決定ロジックを作成した。ロジックの作成において、診療行為、医薬品の特定には最新の診療ガイドラインを参照するが、ガイドラインにおける推奨と実臨床の診療行為・医薬品処方には乖離が存在する。こうしたエビデンス診療ギャップが、NDB解析に影響を及ぼさぬようにエキスパートパネルで協議の上、該当疾患患者の可能性を示す診療行為・医薬品処方を特定する。具体的には、手術、放射線治療、薬物療法(化学療法)に関する治療行為を想定し、必要に応じて加算などもロジックに含むこととした。また、検査結果などの臨床的な情報が不足しているため、病名決定ロジックにおいて罹患状態である人を見落とし、過少報告する可能性が示唆される。そのため、「罹患である人を見落とすかもしれないが確実に罹患と考えられる」定義を「狭義の定義」とし、「罹患でない人が含まれるかもしれないが、見落とさない」定義を「広義の定義」として設定した。
上記ロジックに基づき、解析計画を作成し2014年度を対象にした集計を試みた。ロジックを活用するように効果を検証するために、病名のみの集計と、広義と狭義の定義によるロジックを活用した集計を行い、それぞれの結果を比較した。
上記ロジックに基づき、解析計画を作成し2014年度を対象にした集計を試みた。ロジックを活用するように効果を検証するために、病名のみの集計と、広義と狭義の定義によるロジックを活用した集計を行い、それぞれの結果を比較した。
結果と考察
2014年度において全国の糖尿病、悪性新生物、急性心筋梗塞、脳卒中、大腸がんの患者数はそれぞれ15,001,988人、12,895,963人、7,650,226人、5,065,805人であった。広義の大腸がんについての患者数は1,113,958人(男性:657,294人、女性:486,664人)であり、同様に狭義の大腸がん患者数では1,081,466人(男性:613,081人、女性:468,385人)であった。本研究でエキスパートパネルとの協働により作成したロジックの内、狭義の診療行為と医薬品処方とを合わせた集計では、広義の大腸がん患者数は248,144名(男性:148,961人、女性:99,183人)、狭義の大腸がん患者数は239,658人(男性:145,070人、女性:94,588人)であった。大腸がんにおいては、ロジックの使用によって、広義の場合で22.3%、狭義の場合で22.2%まで患者数が減少することが分かった。
NDB等、レセプトデータを使用した解析において、特定の疾患についての患者数、受療者数を集計する際に、レセプトで使用されている「傷病名」をそのまま使用した単純集計は妥当性について課題が指摘されている。第一に、レセプトに記載されている病名には、検査などを実施する際に付与される疑い病名を含んでおり、この疑い病名が付与されているレセプトを含んで患者数を集計した場合、患者数を過大評価すると考えられる。そのため、疑い病名フラグを使用し、単純集計から除外するなどして、この「疑い病名」を含んだレセプトデータについての処理を解析計画に含む必要がある。第二に、レセプト病名には複数の病名を記載されることが許容されるため、主病名フラグに対する処理を含んだ解析を実施しても、その集計が当該疾患の患者像を反映した値であるかについては検証ができないという課題がある。第三に、レセプトに記載されている病名の精度についての課題である。
NDB等、レセプトデータを使用した解析において、特定の疾患についての患者数、受療者数を集計する際に、レセプトで使用されている「傷病名」をそのまま使用した単純集計は妥当性について課題が指摘されている。第一に、レセプトに記載されている病名には、検査などを実施する際に付与される疑い病名を含んでおり、この疑い病名が付与されているレセプトを含んで患者数を集計した場合、患者数を過大評価すると考えられる。そのため、疑い病名フラグを使用し、単純集計から除外するなどして、この「疑い病名」を含んだレセプトデータについての処理を解析計画に含む必要がある。第二に、レセプト病名には複数の病名を記載されることが許容されるため、主病名フラグに対する処理を含んだ解析を実施しても、その集計が当該疾患の患者像を反映した値であるかについては検証ができないという課題がある。第三に、レセプトに記載されている病名の精度についての課題である。
結論
現在のNDBオープンデータは年々公開データの量と質が向上しているが、疾病別患者数データは公表されていない。本年度は、生活習慣病を中心として性別、年齢階級別、都道府県別の患者数算出を実施した。当該研究の成果がNDBオープンデータに資するよう、今後も対象疾病を拡大する。
公開日・更新日
公開日
2020-07-10
更新日
-