学校の療養生活の場における医療的ケア児への質の高い医療的ケアの提供に資する研究

文献情報

文献番号
201801016A
報告書区分
総括
研究課題名
学校の療養生活の場における医療的ケア児への質の高い医療的ケアの提供に資する研究
課題番号
H30-政策-指定-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
田村 正徳(埼玉医科大学 総合医療センター小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 田角 勝(大田区立障がい者総合サポートセンター・診療所)
  • 米山 明(心身障害児総合医療療育センター 外来診療部)
  • 大田 えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院看護研究科 国際看護学)
  • 岩本 彰太郎(三重大学 医学部附属病院小児トータルケアセンター)
  • 横山 由美(上田 由美)(自治医科大学 看護学部)
  • 前田 浩利(医療法人財団はるたか会)
  • 田中 総一郎(医療法人財団はるたか会 あおぞら診療所ほっこり仙台)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
12,316,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、学校における高度医療的ケア児への訪問看護師の介入の利点と課題を明らかにする。更に医療的ケア児を支援する訪問看護ステーションに調査を行い、学校との連携の意義や課題を明らかにする。それらの課題を解決するための実施プロトコル試案を作成した上で診療報酬等の政策検討に活用できる具体的な提言を行う。
研究方法
1.自宅での呼吸器ケアに習熟した訪問看護師が学校での医療的ケアに関与することによって、人工呼吸器装着児の保護者の付き添いを解消することの利点と課題を明らかにするために以下の4パターンでの介入研究を実施した。
Ⅰ型(訪問看護師の付き添い):訪問看護師が付き添い学校での医療的ケアを全て行う。Ⅱ型(訪問看護師による伝達):訪問看護師が学校看護師にケアの方法などを伝達する。Ⅲ型(訪問看護師によるケア+伝達)訪問看護師が学校看護師にケアの方法などを伝達し、同時に訪問看護師もケアを実施する。IV型(訪問看護師が複数の児の付き添い):訪問看護師が複数の人工呼吸器児の医療的ケアを行う。
介入効果の検証の資料とするため、介入前後の関係者の質問調査票を疫学的調査専門家の指導の下に作成し、介入研究終了後にはこれらの介入前後の調査票を元に介入の効果と課題を検討した。
2. 全国の訪問看護ステーション11,754箇所を対象に児在宅医療支援状況についてアンケート調査を実施した。
結果と考察
1-1)22例の事例において安全に介入研究を実施出来た。パターン別にはI型18例、II型2例、III型4例で全22例であった。2人に対しては、同一事例に対してI型とIII型を別の日程で実施した。IV型の介入は、対象児の体調不良で今回の研究期間では行えなかった。全ての介入研究を事故やトラブルなど無く安全に実施することが出来た。
1-2)事前と事後のアンケート調査の比較から示される訪問看護師介入の利点と課題
イ. すべてのパターンに共通する利点としては、①保護者の身体的負担と精神的ストレスが減少。②保護者との分離による対象児の自立や社会性と周囲の児童の仲間意識の形成の促進。③担任は授業に専念できた。④学校看護師にとって児の医療的ケアを客観的に理解する好機となった。
ロ. すべてのパターンに共通する課題としては、①学校関係者も訪問看護師も医療的トラブルや事故が発生したときの責任問題を危惧していた。②訪問看護師と学校関係者と主治医との協議に多大な労力と時間を割かねばならなかった。③特別支援学校では、医療的ケアに関する規則が決まっていたため、訪問看護師と学校看護師とで変更する余地は少なかった。④対象となった学校看護師は2/3が非常勤で、医師不在のなかで医療的ケアを実践していた。
以上の様に訪問看護師が医療的ケアを実施する事に対して、対象の児の保護者、担任、学校看護師、養護教諭が、訪問看護師が学校での医療的ケアに関わることは有用であったという意見が多かった反面、学校関係者は第三者が入ってくることによる教育の現場の混乱を危惧しており、学校看護師や養護教諭は種々の制約のある中での訪問看護師並みの医療的ケアを保護者から要求されることに警戒感を示す意見も見られた。
2-1)一次調査での回収数は2,312、有効回答数1,830であり、過去1年間に18歳以下で医療的ケアを有する利用者があったのは748ヵ所であった。学校で医療的ケアを実施している訪問看護ステーションは78ヵ所で、実施依頼者が利用者の親が53、次いで学校が29、教育委員会が24であった。
2-2)二次調査では了承が得られた訪問看護ステーション37施設中23施設から返信があり、対象児数は34人だった。訪問した学校種別では、国公立学校14施設、特別支援学校14施設であった。連携を取りやすい学校関係者は担任教諭(N=33の82%)で、取りにくいのはコ―ディネータ(N=9の55%)との回答であった。学校で医療的ケアの責任を負うことへの負担や学校訪問によって本来業務に支障をきたすことに負担を訴える施設が多かった。訪問看護ステーション看護師が学校に訪問した利点として挙げた点は、子どもと家族とより良い関係を築けた(89%)、教員に適切なケアを理解してもらえた(76%)、子どもの自立(70%)が多かった。調査2で訪問看護ステーションの管理者が回答した学校での医療的ケア児への訪問看護活動の利点と課題が、1の介入研究で報告された利点と課題と多くの点で一致していた。
結論
研究1と2から、教育機関における高度医療的ケア児に訪問看護師が係わることが、学校教育上も児の適切な医療的ケア上も大きな利点が示された一方で、訪問看護師と学校側の相互理解の推進や医療トラブル発生時の責任問題などの課題が明らかになった。次年度はこうした課題の解決法を具体的に提示することが必要である

公開日・更新日

公開日
2019-11-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-11-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201801016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,753,000円
(2)補助金確定額
14,753,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,356,765円
人件費・謝金 1,138,289円
旅費 426,536円
その他 8,394,438円
間接経費 2,437,000円
合計 14,753,028円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-10-31
更新日
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