大規模データを用いた漢方製剤のアウトカム評価および費用分析に関する研究

文献情報

文献番号
201801012A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模データを用いた漢方製剤のアウトカム評価および費用分析に関する研究
課題番号
H30-政策-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
康永 秀生(東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 純人(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,876,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は大規模医療データベースを用いて、漢方製剤のアウトカム評価及び費用分析、および漢方製剤に関する医療現場におけるプラクティス・パターン分析を行うことを目的とする。本年度は以下のテーマ等について研究を実施した。
研究方法
既存の大規模データベースであるDPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースおよびJMDC Claims Databaseを用いて以下の分析を実施した。
(i)大建中湯の慢性閉塞性肺疾患後期高齢患者における再増悪入院または死亡リスク低下
(ii) 半夏瀉心湯のイリノテカン忍容性に対する改善効果
(iii) 妊娠悪阻に対する漢方薬治療の安全性と有効性
(iv) 癌入院患者に対する漢方薬治療のプラクティス・パターン
結果と考察
(i)大建中湯の慢性閉塞性肺疾患後期高齢患者における再増悪入院または死亡リスク低下
大建中湯は、後期高齢者のCOPDにおいて、再増悪または死亡のリスクを低下させた。これには、LAMAsのアドヒアランス改善が関与していると考えられた。大建中湯は、高齢のCOPD患者において問題となるLAMAsの副作用である消化器症状を緩和し、LAMAsのアドヒアランスを改善することにより、結果的にCOPDの再増悪の低下と関連していることが示唆された。
(ii) 半夏瀉心湯のイリノテカン忍容性に対する改善効果
半夏瀉心湯は、イリノテカンの副作用である下痢などの症状緩和を介して、イリノテカンの忍容性改善および在院死亡率の低下と関連していることが示唆された。半夏瀉心湯はイリノテカンの補助療法として推奨される。
(iii) 妊娠悪阻に対する漢方薬治療の安全性と有効性
妊娠悪阻に対して漢方薬は安全に使用できることが明らかとなった。漢方薬は西洋薬と比較して、妊娠悪阻による予定外入院を有意に減らし、総医療費も低いことから、治療効果や医療費の面からも推奨される。
(iv) 癌入院患者に対する漢方薬治療のプラクティス・パターン
がん入院患者のうち漢方薬を使用していた患者は約13%であり、特に女性生殖器の癌では約3割と高かった。がん診療において漢方治療が浸透していることがうかがえた。
結論
大規模データベース研究という新たな手法を用いて漢方製剤のエビデンスの確立に貢献するとともに、入院医療等で用いられる漢方製剤の有効性や費用を明らかにすることにより、日常臨床における漢方製剤の役割やその位置づけを明確にすることができる。

公開日・更新日

公開日
2019-11-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201801012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は大規模医療データベースを用いて、漢方製剤のアウトカム評価及び費用分析、および漢方製剤に関する医療現場におけるプラクティス・パターン分析を行った。
臨床的観点からの成果
既存の大規模データベースであるDPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースおよびJMDC Claims Databaseを用いて以下の分析を実施した。
(i)大建中湯の慢性閉塞性肺疾患後期高齢患者における再増悪入院または死亡リスク低下
(ii) 半夏瀉心湯のイリノテカン忍容性に対する改善効果
(iii) 妊娠悪阻に対する漢方薬治療の安全性と有効性
(iv) 癌入院患者に対する漢方薬治療のプラクティス・パターン
上記を原著論文3本にまとめた。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
大規模データベース研究という新たな手法を用いて漢方製剤のエビデンスの確立に貢献するとともに、入院医療等で用いられる漢方製剤の有効性や費用を明らかにすることにより、日常臨床における漢方製剤の役割やその位置づけを明確にできた。
その他のインパクト
2019年2月5日に『国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2018』で研究内容を報告した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Jo T, Michihata N, Yamana H, et al.
Reduction in exacerbation of COPD in patients of advanced age using the Japanese Kampo medicine Dai-kenchu-to: a retrospective cohort study.
International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease , 14 , 129-139  (2019)
原著論文2
Urushiyama H, Jo T, Yasunaga H, et al.
Effect of Hangeshashin-To (Japanese Herbal Medicine Tj-14) on Tolerability of Irinotecan: Propensity Score and Instrumental Variable Analyses.
Journal of Clinical Medicine , 7 , 246-  (2018)
原著論文3
Michihata N, Shigemi D, Sasabuchi Y, et al.
Safety and effectiveness of Japanese herbal Kampo medicines for treatment of hyperemesis gravidarum.
International Journal of Gynecology & Obstetrics.  (2019)

公開日・更新日

公開日
2021-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201801012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,338,000円
(2)補助金確定額
6,338,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 214,356円
人件費・謝金 3,369,217円
旅費 55,720円
その他 1,236,707円
間接経費 1,462,000円
合計 6,338,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
-