患者調査等、各種基幹統計調査におけるNDBデータの利用可能性に関する評価

文献情報

文献番号
201801009A
報告書区分
総括
研究課題名
患者調査等、各種基幹統計調査におけるNDBデータの利用可能性に関する評価
課題番号
H29-政策-指定-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 源太(京都大学医学部附属病院 診療報酬センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田村 寛(京都大学国際高等教育院 データ科学イノベーション教育研究センター)
  • 平木 秀輔(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部)
  • 酒井 未知(京都大学大学院医学研究科)
  • 大寺 祥佑(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部)
  • 野田 龍也(奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 佐藤 大介(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
  • 奥村 泰之(東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
7,873,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、医療計画の策定のみならず、中央社会保険医療協議会や社会保障審議会医療部会など、厚生労働省主幹の各種会議における検討資料や白書等の資料として広く活用されている患者調査を、レセプト情報等データベース(NDB)での代替が可能かどうかについて評価を行うことを目的とするものである。患者調査で集計されている各項目と、NDBに含まれるレセプト情報の項目とについては、それらの定義に照らして「NDBの項目からそのまま分析可能」、「NDBのコード分類等処理を行うことで分析可能」、「NDBのコード分類等処理を行うことで、一部分析可能」、「NDBに該当情報が含まれない」の、4つのパターンに分類することができた。そのうち、「NDBの項目からそのまま分析可能」、「NDBのコード分類等処理を行うことで分析可能」といった項目のみで構成される患者調査の集計表に限定して、NDBデータを用いてどの程度再現することが可能かについて、評価を行った。
研究方法
平成26(2014)年度の患者調査と比較することを目的として、平成26年度診療分のNDBデータを、「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」での審査を経て入手した。その際、レセプトの各種コードを「すべて提供する」ことを原則として認めていない有識者会議での審査基準を踏まえ、集計結果に大きな影響が及ばない範囲内で患者の特定可能性を下げることを目的として、医科入院、医科入院外、DPC、調剤、歯科それぞれのレセプトで年間の出現頻度が1,000件未満となる傷病名コード、診療行為コードを含まない、という条件のもと、NDBデータ入手の承諾を得た。研究の前段階であるNDBデータの取り込みについては、試行錯誤を経て所要時間を削減できたとはいえ、当初よりかなりの時間を要すると見込まれたことから、患者調査の調査時期に近い平成26(2014)年の9月、10月、11月診療分の医科、DPCデータのうち、医療機関情報レコード(識別情報IR)、レセプト共通レコード(識別情報RE)、傷病名レコード(識別情報SY)、診断群分類レコード(識別情報BU)、診療行為レコード(識別情報SI)、コーディングデータレコード(識別情報CD)をまず取り込んで、その3カ月分のデータをもとに作業を行うこととした。取り込んだ際のデータ容量はおよそ700GBに達した。
結果と考察
患者調査のうち上巻第1表、上巻第2-4表、上巻第4-4表、上巻第7-3表、上巻第11表について、「推計患者数の算出」、「病院か一般診療所かの区別」、「入院患者か外来患者かの区別」、「新入院か繰り越し入院かの区別」、「初診か再来かの区別」、「往診の区別」、「性・年齢階級別で得られた値の評価」、「入院患者における在院日数の評価」といった各項目を、NDBの「ID1」を用いて集計を行った。その結果、医療機関数は総数で80,074施設、うち病院が8,121施設、診療所が71,953施設となった。その条件下において、基本的な推定患者数については、概してNDBデーの集計値の方が患者調査の値と比べて少ない値となっていた。「在院日数」については、DPCレセプトにおいては患者調査と近い値となったが、医科レセプトにおいては患者調査と比べて軒並み長くなっていることが明らかとなった。NDBデータを集計するにあたっては、「①:診療報酬算定ルールを踏まえたバリデーション処理」、「②:分析者のデータ解釈を踏まえたバリデーション処理」、「③:患者調査の集計・推計方法による患者数と、NDBによる患者数とのずれ」を考慮に入れなければならず、非常に複雑な処理を伴う。一方で、層化無作為抽出のうえで得られた結果を推定する処理よりも、NDBのような悉皆性の高いデータからそのまま集計を行えるのであれば、そのほうがデータの精度として信頼度が高いとも考えられることから、NDBの集計値を無理に患者調査の値に合わせようとすると、見方によっては不自然な処理としてとらえられてしまう可能性も否定できない。NDBによる代替可能性の評価を継続するのであれば、患者調査の値とNDBデータを用いた集計値との相違を無理に埋めることよりも、まずは両者の集計結果を併記するなどして、両者の数値の相違に対する「慣れ」を利用者間に醸成するべきではないかと思われた。
結論
患者調査における各種集計項目のうち、複雑なバリデーション処理なしにNDBから再現が可能と思われた各項目について集計を行い、患者調査の結果との比較を行った。基本的な項目に絞った再現調査であったが、患者調査とNDBデータの集計値とでは差がみられたが、年齢階級や性別、入院・外来の区別ごとに一定の傾向を認めることができた。在院日数については、NDB医科レセプトにおいて患者調査よりも大きな値が出る傾向がみられた。

公開日・更新日

公開日
2019-11-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-11-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201801009B
報告書区分
総合
研究課題名
患者調査等、各種基幹統計調査におけるNDBデータの利用可能性に関する評価
課題番号
H29-政策-指定-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 源太(京都大学医学部附属病院 診療報酬センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田村 寛(京都大学国際高等教育院 データ科学イノベーション教育研究センター)
  • 平木 秀輔(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部)
  • 酒井 未知(京都大学大学院医学研究科)
  • 大寺 祥佑(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部)
  • 野田 龍也(奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 佐藤 大介(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
  • 奥村 泰之(東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、医療計画の策定のみならず、中央社会保険医療協議会や社会保障審議会医療部会など、厚生労働省主幹の各種会議における検討資料や白書等の資料として広く活用されている患者調査を、レセプト情報等データベース(NDB)での代替が可能かどうかについて評価を行うことを目的とするものである。患者調査で集計されている各項目と、NDBに含まれるレセプト情報の項目とについては、それらの定義に照らして「NDBの項目からそのまま分析可能」、「NDBのコード分類等処理を行うことで分析可能」、「NDBのコード分類等処理を行うことで、一部分析可能」、「NDBに該当情報が含まれない」の、4つのパターンに分類することができた。そのうち、「NDBの項目からそのまま分析可能」、「NDBのコード分類等処理を行うことで分析可能」といった項目のみで構成される患者調査の集計表に限定して、NDBデータを用いてどの程度再現することが可能かについて、評価を行った。
研究方法
平成26(2014)年度の患者調査と比較することを目的として、平成26年度診療分のNDBデータを、「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」での審査を経て入手し、それらのデータを利用してNDDデータの集計値を求めた。また、海外でも日本のようにレセプトデータや、あるいは他のデータと紐づけた保健医療データを行政担当者や研究者に提供し、保健医療領域のエビデンス構築に活用する事例が認められる。当事業が対象としている、NDBデータの今後の政策利用について活性化の在り様を探るため、アメリカ(CMSおよびResDAC)、イギリス(CPRD)、フランス(CNAMTS)および台湾(衛生福利部)の事例について調査を行った。
結果と考察
患者調査のうち上巻の5つの表について、「推計患者数の算出」、「病院か一般診療所かの区別」、「入院患者か外来患者かの区別」、「新入院か繰り越し入院かの区別」、「初診か再来かの区別」、「往診の区別」、「性・年齢階級別で得られた値の評価」、「入院患者における在院日数の評価」といった各項目を、NDBの「ID1」を用いて集計を行った。その結果、基本的な推定患者数については、概してNDBデーの集計値の方が患者調査の値と比べて少ない値となっていた。「在院日数」については、DPCレセプトにおいては患者調査と近い値となったが、医科レセプトにおいては患者調査と比べて軒並み長くなっていることが明らかとなった。NDBデータを集計するにあたっては、「①:診療報酬算定ルールを踏まえたバリデーション処理」、「②:分析者のデータ解釈を踏まえたバリデーション処理」、「③:患者調査の集計・推計方法による患者数と、NDBによる患者数とのずれ」を考慮に入れなければならず、非常に複雑な処理を伴う。一方で、層化無作為抽出のうえで得られた結果を推定する処理よりも、NDBのような悉皆性の高いデータからそのまま集計を行えるのであれば、そのほうがデータの精度として信頼度が高いとも考えられることから、NDBの集計値を無理に患者調査の値に合わせようとすると、見方によっては不自然な処理としてとらえられてしまう可能性も否定できない。NDBによる代替可能性の評価を継続するのであれば、患者調査の値とNDBデータを用いた集計値との相違を無理に埋めることよりも、両者の集計結果を併記するなどして、両者の数値の相違に対する「慣れ」を利用者間に醸成し、そのうえで徐々に、NDBによる代替を検討するべきではないかと思われた。海外調査については、アメリカ(CME, ResDAC)、イギリス(CPRD)、フランス(CNAMTS)、台湾(衛生福利部)におけるデータの二次利用について調査を行ったが、いずれの事例においても、多数の提供依頼申出に対してデータの提供が行われていることが明らかにされたとともに、一定以上の人員を確保して利用者の支援を充実させている事例が認められた。日本においても、今後さらにレセプトデータの第三者提供、およびそれを支援する体制が拡充されることが期待される。
結論
患者調査における各種集計項目のうち、複雑なバリデーション処理なしにNDBから再現が可能と思われた各項目についてNDBデータを用いた集計を行い、患者調査の結果との比較を行った。基本的な項目に絞った再現調査であったが、患者調査とNDBデータの集計値とでは差がみられたが、年齢階級や性別、入院・外来の区別ごとに一定の傾向を認めることができた。在院日数については、NDB医科レセプトにおいて患者調査よりも大きな値が出る傾向がみられた。海外においては、日本のNDB以上に利用者に対してデータ提供を行っている事例が認められた。

公開日・更新日

公開日
2019-11-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-11-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201801009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、NDBの全数データを用いて、患者調査における基本的な項目について試行的に集計を行い、患者調査の再現を試みたものである。その結果、入院・外来ともいくつかの集計区分で例外は見られたものの、推定患者数は患者調査の集計値のほうがNDBデータの集計値よりも大きい値となった。両者に隔たりが生じる理由として、「①診療報酬算定ルールを踏まえたバリデーション処理」、「②分析者のデータ解釈を踏まえたバリデーション処理」、「③患者調査の集計・推計方法による患者数と、NDBによる患者数とのずれ」が考えられた。
臨床的観点からの成果
患者調査の集計値とNDBデータの集計値の間には隔たりがみられたが、両者の隔たりが一定の傾向を示していたことから、特定の傷病については、抽出アルゴリズムを適切に定められればNDBデータから患者調査の傷病別推定患者数の推計を行いうることが示唆された。試行的に行った急性心筋梗塞症例の評価では患者調査とNDBとで隔たりが見られたが、DPCレセプトと医科レセプトとで隔たりの傾向が異なることがわかり、出来高レセプトにおける入院期間の評価が傷病滅患者数の再現を行うにあたって重要であることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
本研究は特定の疾患や治療等を対象とするものではなく、その点でガイドライン等の開発に直接貢献するものではないが、疾患群ごとの患者数という医療統計における基本的な事項を対象とする患者調査を再現するものであることから、本研究、及び同様の趣向の今後の研究によって得られた知見をNDBデータの活用に生かすことができれば、様々なガイドラインを開発する際の基礎資料として利用できるようになることが期待できる。
その他行政的観点からの成果
患者調査は、各種政策や白書作成の基盤となる情報を提供する歴史のある調査であるが、調査が3年に1度しか実施されておらず、実施時期も9月~10月に限定されているため、得られる知見には一定の限界が認められる。NDBデータは毎月集められるデータであることから、NDBによる患者調査の再現が部分的にでも実現できれば、患者調査の質の向上を期待することができる。本研究で行った再現は基本的項目に限定されてはいるが、今後の研究次第で、患者調査の更なる充実に貢献できる知見を得ることが期待できる。
その他のインパクト
NDBデータのより活発な利用について議論する機会として、平成30年11月に開催された医療情報学連合大会においてシンポジウム「レセプトデータ活用環境の充実化に向けて:日本および海外の動向から」を主催し、フランスおよび台湾のレセプトデータ利用者、運営者を招へいして、日本の動向も交えて、各国におけるレセプトデータ利活用の現況について意見交換する機会を設けた。医療情報分野にかかわる幅広い聴衆を集め、レセプトデータの利活用の重要性について理解を深めるという成果を得ることができた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201801009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,234,000円
(2)補助金確定額
10,234,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,031,614円
人件費・謝金 740,287円
旅費 857,916円
その他 5,243,183円
間接経費 2,361,000円
合計 10,234,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-05-21
更新日
-