文献情報
文献番号
201801008A
報告書区分
総括
研究課題名
地域の実情に応じた自殺対策推進のための包括的支援モデルの構築と展開方策に関する研究
課題番号
H29-政策-指定-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
本橋 豊(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 自殺総合対策推進センター)
研究分担者(所属機関)
- 椿 広計(統計数理研究所)
- 清水康之(特定非営利活動法人自殺対策支援センターライフリンク)
- 近藤伸介(東京大学医学部附属病院精神神経科)
- 猪飼周平(一橋大学大学院社会学研究科)
- 井門正美(北海道教育大学教職大学院)
- 藤原武男(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
- 岩瀬博太郎(千葉大学大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の自殺対策のビジョンとしての「生きることの包括的支援としての自殺対策」を地域の実情に応じて実現するために求められる包括的支援モデルを示し、将来の我が国の自殺対策の推進に資することが本研究の目的である。具体的には、大綱において重点課題として示された子ども・若者対策(SOSの出し方教育およびソーシャルメディア対策等を含む)、関連諸施策との連動に基づく地域自殺対策包括支援モデルの具体的な展開、地域自殺対策を支える最新の統計分析とその活用、適切な医療保健福祉モデルの構築に関して、研究成果を踏まえて政策的方向性を示す。これにより厚生労働行政における自殺対策の施策展開に資することを最終的な目標とするものである。
研究方法
研究代表者及び研究分担者8名で、4つの大きな研究領域について研究分担を行った。4つの研究領域とは、(1)自殺対策の包括的支援モデルの構築と若者の自殺対策とくにソーシャルメディアの役割、(2)地域における自殺対策を医療保健福祉の統合的立場から俯瞰的に見直す研究、(3)教育分野におけるSOSの出し方教育の研究と実践および都市部における子供の貧困と自殺対策の関連に関する研究と実践、(4)自殺対策における公的データベースの利活用に関する研究および死因究明制度と連動した死亡情報データの自殺対策の活用に関する研究である。研究方法としては、臨床の場における事例検討、児童生徒を対象とした質問紙調査、データベース構築に関する数理モデル構築の検討会議開催等である。調査の実施にあたっては、倫理審査委員会の審査を受けた。
結果と考察
平成30年度においては(1)「SNS時代の若者に対する新たな自殺対策の構築」シンポジウムを開催し、Zero-suicide 宣言の日本語訳を完成させた。(2)適切な精神科医療体制の在り方に関する研究では、救命救急センターおよび精神科病棟を擁する総合病院での未遂者支援事例を検討した。自殺対策と生活支援の関連に関する研究については、小田原市民を対象に生活保護に関する意識調査を実施した結果、高所得層に相対的に強い生活保護制度に対する批判があり、低所得層には、相対的に日本版K6のスコアが高い一方で、生活が困窮しても軽々に生活保護を受けるべきでないという規範が存在していることが推察された。(3)SOSの出し方教育の研究と実践では、命の教育に関する韓国訪問調査および命の教育シンポジウムを開催した。子供の貧困と自殺対策については、子どもの自己肯定感は、ロールモデルおよびサードプレイスの存在によって高められることが明らかになった。(4)自殺対策の公的データベース構築については、オンサイト利用統計拠点の整備、情報可視化技術の開発等を行った。死因究明制度については、千葉大学法医学教室の解剖記録から、他殺をも含むHomicide-Suicide発生の実態調査を行った。
結論
平成30年度の研究の成果を要約すると、(1)若者の自殺対策におけるSNS相談の課題と解決の解決の方向を示し、Zero-suicide 宣言の日本語訳を完成させた。(2)総合病院における未遂者支援の在り方および、生活保護に関する意識調査を通じた課題の整理を行った。(3)児童生徒のSOSの出し方に関する研究モデルを構築した。(4)地域の実情に応じた自殺対策推進のためオンサイト利用統計システムに基づく自殺実態分析の基盤を整備し、自殺対策と連動する死因究明制度において、無理心中事案の背景について一端を明らかにした。以上より、次回の大綱の改訂に向けた学際的研究成果を蓄積することができた。
公開日・更新日
公開日
2019-11-26
更新日
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