2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた外国人・障害者等に対する熱中症対策に関する研究

文献情報

文献番号
201726021A
報告書区分
総括
研究課題名
2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた外国人・障害者等に対する熱中症対策に関する研究
課題番号
H28-健危-指定-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 康史(帝京大学 医学部 救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 敬樹(都立多摩総合医療センター 救命救急セ ンター)
  • 横堀 將司(日本医科大学 高度救命救急センター)
  • 登内 道彦((財)気象業務支援センター 振興部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
熱中症に関しては、高齢者、肉体労働者、スポーツ中の発生に関する研究がなされてきたが、2020年夏期のオリンピック・パラリンピックの開催に向け、外国人観光客の急増、そしてパラリンピックに向けて活性化する身体障害者の夏期の屋外活動が予想されるなか、この両群の熱中症に関する実態調査は皆無であり、その対策についても基本的情報が欠如している。これまでの日本救急医学会や総務省消防庁データを用いた熱中症患者の発生実態調査を補完しつつ、身体外国人・障害者の熱中症に関する基本情報と、特別に必要な熱中症対策について明らかにする。また重症例の治療に関して、新たな血管内冷却装置を用いた体温調節による集中治療症例を収集蓄積し、予後改善のための治療指針の策定を目指す。加えて、多方面より供給される気象データの中から熱中症対策に有効なものを選別したうえで、熱中症発生数のデータと気象データを統合し、より効果的な予防対策、熱中症危険度予測手法の開発を目指す。
研究方法
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の暑さ対策委員会、開催中の救急災害医療体制に係る学術連合体(コンソーシアム)、東京都の医療・救護計画ガイドライン改定部会、環境省による熱中症対策ガイドラインやマニュアルの策定、民間による予防啓発プロジェクト等への参画から、それぞれの活動を有機的に連動させた新たな熱中症予防のためのプランについて検討を進めた。
昨年度に続くFAXによる熱中症即時登録を行い、1日目と2日目の採血施行、冷却方法、冷却時間、抗DIC治療について登録、重症度評価として急性期DIC score, SOFA score, APACHEⅡscoreなどを算定し分析を行った。
日本救急医学会主導による登録データベースをもとに身体障害者における熱中症の特徴をまとめ、血管内冷却カテーテル(IVTM)における安全性と有効性を検討した。
熱中症発生数のデータと気象データを統合した熱中症危険度予測手法の開発として、①全国6都市の集計値から推定する熱中症搬送者数と日最高WBGT、および海外からの来訪者を想定した札幌のWBGTとの関連についての分析、②熱中症搬送者数における厚生労働省と消防庁のデータの比較や年ごとの傾向の分析、③2017年夏の暑熱度と熱中症搬送者に関する分析を行った。
結果と考察
熱中症予防に関する各組織での検討では、選手とそのスタッフ、ワークフォース、観客などに対して啓発や応急処置、救護施設の配置、ガイドラインやマニュアルの整備などにつき議論された。
平成29年夏期の厚生労働省熱中症の入院患者等即時発生情報については同省ホームページの熱中症関連情報より入手できる。全国134の救急医療機関から626例が登録され、外国人旅行者2件、身体障害者17件であった。身体障害者では全例が入院加療となっていた。
日本救急医学会主導によるデータベースでは重症244名が登録され、日常生活自立度2度以上の患者は47例(19%)で、健常群に比して有意に高齢で、有意に意識障害や痙攣があり、傾向として過去の熱中症の既往が多く、初診時体温が高かった。48時間以内に平温に達することができない症例が28%と多く。死亡も有意に高率であった。IVTMを用いた検討では完全回復群(6例)と後遺症残存群(6例)を比較し、来院時深部体温に差はなかったが、冷却速度がより早かった。
全国6都市の平均WBGTと搬送者数の関連の分析では、5月に全国的に急に暑くなった時に真夏の同じWBGTに比べ約2倍程度の搬送者がみられた。また札幌と6都市との比較で、WBGT25℃以上ではおよそ3倍札幌での熱中症の発生リスクが高かった。熱中症搬送者数の厚労省と消防庁のデータの比較では、厚労省データで高齢者、重症例が多くみられたが期間や地域の気象の差異により登録症例数にバラつきもみられた。2017年夏の暑熱度と熱中症搬送者に関しては、5~9月のWBGTが過去5年平均とくらべて高低の変動が大きく、平均を大きく上回った7月において救急搬送者が急増した。
結論
多くの組織が2020年夏の熱中症対策に向けて多様な活動を開始している。外国人観光客や身体障害者の熱中症実態調査では収集症例が少なく、軽症者が多い事がうかがえるが、身体障害者のスポーツによる熱中症に関しては、今後もスポーツ施設などでの調査が必要である。並行してアンケート調査などによる軽症例の実態把握も必要と考えられる。また障害者では高齢や意識障害、痙攣などが多くみられ、平温への到達は困難であり迅速な冷却がより重要と考えられた。熱中症の早期警戒警報を正しく発令できるシステム構築は夏期のスポーツ大会の開催時に有効であり、今後もより正確な予測を目指して検討を重ねていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201726021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 786,663円
人件費・謝金 1,027,208円
旅費 121,400円
その他 1,147,215円
間接経費 923,000円
合計 4,005,486円

備考

備考
自己資金:5,486円

公開日・更新日

公開日
2018-11-14
更新日
-