文献情報
文献番号
201726016A
報告書区分
総括
研究課題名
建築物環境衛生管理基準の検証に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
林 基哉(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 開原 典子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 東 賢一(近畿大学 医学部)
- 中野 淳太(東海大学 工学部)
- 李 時桓(イ シファン)(信州大学 学術研究院工学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、平成26-28「建築物環境衛生管理に係る行政監視等に関する研究」による、空気環境衛生基準、衛生管理体制、新しい健康リスク等に関する提案に基づいて、環境衛生管理基準不適率の上昇が顕著である空気環境を中心に4つの研究を行い、建築物衛生環境の効果的向上を図るための基準改正に資する科学的根拠を示す。
研究方法
B-1基準案の検証(エビデンス整理)
国立情報学研究所論文情報ナビゲータ(CiNii)、科学技術振興機構J-Dream III、米国国立医学図書館Pubmedの文献検索等を行い、平成22年度「建築物環境衛生管理基準の設定根拠の検証について」以降のエビデンスについて調査及び整理を行った。
B-2測定評価法提案(ケーススタディー)
空間の用途、空調方式、立地の多様性を考慮した、空気環境の測定方法の提案を目的とし、ASHRAE:55-2017およびISO7730:2005を参考に空気環境測定法を提案し、実際の測定により有効性の検証を行った。
B-3測定評価法の検証(実建物試行)
B-3-1調査対象物件の建物特性
温度、相対湿度、二酸化炭素の2週間程度の連続測定を行う測定調査1、及び、浮遊粉じんの量、浮遊微生物や化学物質などの空気環境項目及び空調機内部の汚れ具合などの調査を行う測定調査2について、協力の得られる特定建築物の建物特性について整理を行った。
B-3-2健康影響に関する検証
自記式調査票を会社等に配付・回収した。「建築物の維持管理状況の調査」(管理者用調査)、「職場環境と健康の調査」(従業員用調査)を実施した。
B-4制度提案(自治体等ヒアリング)
B-4-1維持管理体制・測定値の代表性・立入検査時における課題抽出
行政報告データを用いて、不適率の要因に関する分析を行った。
国立情報学研究所論文情報ナビゲータ(CiNii)、科学技術振興機構J-Dream III、米国国立医学図書館Pubmedの文献検索等を行い、平成22年度「建築物環境衛生管理基準の設定根拠の検証について」以降のエビデンスについて調査及び整理を行った。
B-2測定評価法提案(ケーススタディー)
空間の用途、空調方式、立地の多様性を考慮した、空気環境の測定方法の提案を目的とし、ASHRAE:55-2017およびISO7730:2005を参考に空気環境測定法を提案し、実際の測定により有効性の検証を行った。
B-3測定評価法の検証(実建物試行)
B-3-1調査対象物件の建物特性
温度、相対湿度、二酸化炭素の2週間程度の連続測定を行う測定調査1、及び、浮遊粉じんの量、浮遊微生物や化学物質などの空気環境項目及び空調機内部の汚れ具合などの調査を行う測定調査2について、協力の得られる特定建築物の建物特性について整理を行った。
B-3-2健康影響に関する検証
自記式調査票を会社等に配付・回収した。「建築物の維持管理状況の調査」(管理者用調査)、「職場環境と健康の調査」(従業員用調査)を実施した。
B-4制度提案(自治体等ヒアリング)
B-4-1維持管理体制・測定値の代表性・立入検査時における課題抽出
行政報告データを用いて、不適率の要因に関する分析を行った。
結果と考察
C-1基準案の検証(エビデンス整理)
温度では、日中最大値28℃以下、低温側では高齢者の血圧上昇、血中コレステロールの上昇、肺機能低下などから18℃以上が推奨されている。相対湿度では、低温乾燥状態ではインフルエンザウイルス、RSウイルス、肺炎球菌、ライノウイルスへの感染リスクから、23℃程度では40%程度以上必要と推定されている。二酸化炭素では、1000 ppm程度の低濃度域における生理学的変化(二酸化炭素分圧、心拍数等)及びシックビルディング症候群関連症状や小児喘息との関係が報告されている。浮遊粉じんについては、2005年にはWHOが循環器疾患に関する疫学調査に基づきPM2.5の空気質ガイドラインを公表し、諸外国でもPM2.5の室内空気質ガイドラインを策定しているなど、PM2.5対策に移行している。一酸化炭素では、WHOが有害性の再評価を行い、2010年に室内空気質ガイドラインとして7 mg/m3を新たに加えている。
C-2測定評価法提案(ケーススタディー)
温熱環境に関する快適性の基準が時代の要請に合わせて改定されているのに対し、測定方法には大きな変更が見られないことが確認されたため、ASHRAE 55基準に準拠した測定方法を提案し、北海道、東京、大阪の実際のオフィスを3季節に分けて調査した。従来の測定法に比べ、水平方向や垂直方向の温熱環境の分布を詳細に評価できることが確認された。
C-3測定評価法の検証(実建物試行)
測定調査1に協力できると22件から回答が得られた。また、この22件のうち、測定調査1に加え、測定調査2に協力できると16件から回答が得られた。
建築物利用者の健康状態の実態調査については、冬期の断面調査として、平成30年1月5日に500社に対してアンケート調査を依頼した。本調査では、非特定建築物と比較評価するために、非特定建築物も約半数含めた。また、建築物の調査数を補うために、別途、東京と大阪の6つの事務所にもアンケート調査を依頼した。その結果、2018年4月3日時点で184社、1961名からアンケートの回答を得た。
C-4制度提案(自治体等ヒアリング)
空気環境の湿度、気温、二酸化炭素の不適率は、持続的に増加して高いレベルに達している。ビルメンテナンス業による定期的測定のデータを利用して判断される報告徴取の増加がこの一因であることが確認された。
温度では、日中最大値28℃以下、低温側では高齢者の血圧上昇、血中コレステロールの上昇、肺機能低下などから18℃以上が推奨されている。相対湿度では、低温乾燥状態ではインフルエンザウイルス、RSウイルス、肺炎球菌、ライノウイルスへの感染リスクから、23℃程度では40%程度以上必要と推定されている。二酸化炭素では、1000 ppm程度の低濃度域における生理学的変化(二酸化炭素分圧、心拍数等)及びシックビルディング症候群関連症状や小児喘息との関係が報告されている。浮遊粉じんについては、2005年にはWHOが循環器疾患に関する疫学調査に基づきPM2.5の空気質ガイドラインを公表し、諸外国でもPM2.5の室内空気質ガイドラインを策定しているなど、PM2.5対策に移行している。一酸化炭素では、WHOが有害性の再評価を行い、2010年に室内空気質ガイドラインとして7 mg/m3を新たに加えている。
C-2測定評価法提案(ケーススタディー)
温熱環境に関する快適性の基準が時代の要請に合わせて改定されているのに対し、測定方法には大きな変更が見られないことが確認されたため、ASHRAE 55基準に準拠した測定方法を提案し、北海道、東京、大阪の実際のオフィスを3季節に分けて調査した。従来の測定法に比べ、水平方向や垂直方向の温熱環境の分布を詳細に評価できることが確認された。
C-3測定評価法の検証(実建物試行)
測定調査1に協力できると22件から回答が得られた。また、この22件のうち、測定調査1に加え、測定調査2に協力できると16件から回答が得られた。
建築物利用者の健康状態の実態調査については、冬期の断面調査として、平成30年1月5日に500社に対してアンケート調査を依頼した。本調査では、非特定建築物と比較評価するために、非特定建築物も約半数含めた。また、建築物の調査数を補うために、別途、東京と大阪の6つの事務所にもアンケート調査を依頼した。その結果、2018年4月3日時点で184社、1961名からアンケートの回答を得た。
C-4制度提案(自治体等ヒアリング)
空気環境の湿度、気温、二酸化炭素の不適率は、持続的に増加して高いレベルに達している。ビルメンテナンス業による定期的測定のデータを利用して判断される報告徴取の増加がこの一因であることが確認された。
結論
最新知見によって基準改正の対象候補となる項目決定の基礎が得られつつある。
主に温熱環境に関する評価方法の進歩が大きい中、温度、湿度、気流等の温熱環境に関する基準の追加、組み換えの提案に資する知見が得られた。
測定評価法の提案に基づく実物件での検証の準備として、対象建物の選定及び属性分析を行うとともに、衛生管理、室内環境と健康影響に関する調査を開始した。
行政報告における不適率上昇の分析、自治体における立入検査及びその報告に関する状況把握を行い、制度的な対応の必要性に関する知見を得た。
主に温熱環境に関する評価方法の進歩が大きい中、温度、湿度、気流等の温熱環境に関する基準の追加、組み換えの提案に資する知見が得られた。
測定評価法の提案に基づく実物件での検証の準備として、対象建物の選定及び属性分析を行うとともに、衛生管理、室内環境と健康影響に関する調査を開始した。
行政報告における不適率上昇の分析、自治体における立入検査及びその報告に関する状況把握を行い、制度的な対応の必要性に関する知見を得た。
公開日・更新日
公開日
2018-07-11
更新日
-