文献情報
文献番号
201726010A
報告書区分
総括
研究課題名
化学・爆弾テロ等重大事案(事件)に対する机上シミュレーションによる訓練・対応手法検討に関する研究
課題番号
H28-健危-一般-010
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
布施 明(日本医科大学 医学部 救急医学)
研究分担者(所属機関)
- 林 春男(国立研究開発法人防災科学技術研究所)
- 鈴木 進吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
- 河本 志朗(日本大学 危機管理学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,273,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、“化学・爆弾テロなど特殊事件における迅速でより安全な新たなプレホスピタル対応手法を開発し施策として提案すること”である。
研究方法
【CBRNE災害・テロ等における医療活動のための報告書等の統合マニュアル】
H28年度救助技術の高度化等検討会報告書(消防庁国民保護・防災部参事官付)の第1編 検討会の概要及び第IV編 爆弾テロ災害時における消防機関が行う活動マニュアルより、爆弾テロ対応時の留意事項、連絡体制、初動措置の動きなどを、さらに同報告書の第II編 化学災害又は生物災害時における消防機関が行う活動マニュアルより、化学災害又は生物災害時の留意事項、連絡体制、初動措置の動きなどから、化学・爆弾テロ等重大事案(事件)に対する机上シミュレーションによる訓練・対応手法を検討するうえで参考となる留意事項をまとめた。加えて、NBCテロ対策幹事会(事務局:内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付)が2001(平成13)年にとりまとめ、2016(平成28)年に改訂した「NBCテロその他大量殺傷型テロ対処現地関係機関連携モデル」を精査し、化学・爆弾テロ等重大事案(事件)に対する机上シミュレーションによる訓練・対応手法を検討するうえで参考となる記述を抽出した。抽出した記述は、他の報告書等との整合性を比較しやすいようにシーンごとに整理した。さらに、国家公安委員会・警察庁国民保護計画に記述された内容を統合した。
【テロ対応医療シミュレーションシステムの構築】
爆発テロ・災害時の医療資源の配分手法を分析するため、待ち行列の解析で使用される離散事象(DES、Discrete Event Simulation)の手法を利用した。シミュレーションを行う際に以下のものを設定した。負傷者、現場負傷者集積地点、搬送方法、トリアージ、対象地域、救急隊、搬送先決定、搬送内容である。シミュレーションでは確率的に多岐にわたる状態が発生するため、実行回数は1ケースあたり500回行うものとし、その平均値を結果として算出した。出力として検討したのは下記の項目である。負傷者の発見時点におけるタグ別負傷者数、死亡または病院収容時点におけるタグ別負傷者数、最終状態が赤タグまたは黄タグの負傷者の、負傷者発見から警察が救出を始めるまでの時間、警察官の救出開始からB地点に到達するまでの時間、B地点からC地点までの時間、C地点からD地点の間及びトリアージにかかる時間、D地点から救急車が出発するまでの時間、救急車が出発してから医療機関に収容されるまでの時間、である。ここで、B地点は「ホットゾーンとウォームゾーンの境界であって、負傷者が搬送される地点」、C地点は「コールドゾーンの負傷者集積地点」、D地点は「救急車による搬送を開始する地点」とした。
H28年度救助技術の高度化等検討会報告書(消防庁国民保護・防災部参事官付)の第1編 検討会の概要及び第IV編 爆弾テロ災害時における消防機関が行う活動マニュアルより、爆弾テロ対応時の留意事項、連絡体制、初動措置の動きなどを、さらに同報告書の第II編 化学災害又は生物災害時における消防機関が行う活動マニュアルより、化学災害又は生物災害時の留意事項、連絡体制、初動措置の動きなどから、化学・爆弾テロ等重大事案(事件)に対する机上シミュレーションによる訓練・対応手法を検討するうえで参考となる留意事項をまとめた。加えて、NBCテロ対策幹事会(事務局:内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付)が2001(平成13)年にとりまとめ、2016(平成28)年に改訂した「NBCテロその他大量殺傷型テロ対処現地関係機関連携モデル」を精査し、化学・爆弾テロ等重大事案(事件)に対する机上シミュレーションによる訓練・対応手法を検討するうえで参考となる記述を抽出した。抽出した記述は、他の報告書等との整合性を比較しやすいようにシーンごとに整理した。さらに、国家公安委員会・警察庁国民保護計画に記述された内容を統合した。
【テロ対応医療シミュレーションシステムの構築】
爆発テロ・災害時の医療資源の配分手法を分析するため、待ち行列の解析で使用される離散事象(DES、Discrete Event Simulation)の手法を利用した。シミュレーションを行う際に以下のものを設定した。負傷者、現場負傷者集積地点、搬送方法、トリアージ、対象地域、救急隊、搬送先決定、搬送内容である。シミュレーションでは確率的に多岐にわたる状態が発生するため、実行回数は1ケースあたり500回行うものとし、その平均値を結果として算出した。出力として検討したのは下記の項目である。負傷者の発見時点におけるタグ別負傷者数、死亡または病院収容時点におけるタグ別負傷者数、最終状態が赤タグまたは黄タグの負傷者の、負傷者発見から警察が救出を始めるまでの時間、警察官の救出開始からB地点に到達するまでの時間、B地点からC地点までの時間、C地点からD地点の間及びトリアージにかかる時間、D地点から救急車が出発するまでの時間、救急車が出発してから医療機関に収容されるまでの時間、である。ここで、B地点は「ホットゾーンとウォームゾーンの境界であって、負傷者が搬送される地点」、C地点は「コールドゾーンの負傷者集積地点」、D地点は「救急車による搬送を開始する地点」とした。
結果と考察
“all hazard approach”によるCBRNEテロ・災害における留意事項、連絡体制、初動の動き等がはじめて統合された。統合された「CBRNE災害・テロ災害時における医療活動のための報告書等の統合マニュアル」を参考として、本マニュアルと整合性のあるシミュレーションシステムを開発し、導き出されたデータをもとに現場での医療支援の在り方を検討した。
傷病者数が比較的少ない場合(20人~100人程度)は、救急車数やトリアージの手法等によらず死亡者数に差がほとんど出ないことが分かった。
さらに350人~700人規模の傷病者の場合、患者集積場所を前方に設置したほうが、死亡者の増加が少ないことがシミュレーションの結果として示された。現場でトリアージを行い、適切な病院に搬送するほうが、トリアージを行わないで、すぐに近い病院に搬送するより死亡者の増加は少ない。また、救急車を多く投入したほうが、死亡者数増加が少ないことも示された。
傷病者数が比較的少ない場合(20人~100人程度)は、救急車数やトリアージの手法等によらず死亡者数に差がほとんど出ないことが分かった。
さらに350人~700人規模の傷病者の場合、患者集積場所を前方に設置したほうが、死亡者の増加が少ないことがシミュレーションの結果として示された。現場でトリアージを行い、適切な病院に搬送するほうが、トリアージを行わないで、すぐに近い病院に搬送するより死亡者の増加は少ない。また、救急車を多く投入したほうが、死亡者数増加が少ないことも示された。
結論
シミュレーションシステムを用いて様々な状況を想定して、データをもとに施策の有効性を検討することが可能となった。また、直近の災害事象の個別的な課題にとらわれない議論を可能とし、普遍的な施策決定を行いやすくなる。今回の研究では、シミュレーションシステムを開発し、爆弾テロ・災害でのデータを算出した。
今後、本シミュレーションをさらに改良して、様々な状況を設定して、データを算出する予定である。化学テロ・災害時、ダーティボムなど爆弾テロ・災害に化学テロ・災害が併発した場合、現場最前線における法執行機関による救護処置等の有用性などは引き続いての検討が可能である。
さらに、東京五輪・パラリンピックを想定して、適切な現場(医療)対応手法がテロ・災害発生場所によって左右されるかどうかの検討も必要と考えられる。今後は、道路閉塞/遮断状況も加味しての検討を行う予定である。
今後、本シミュレーションをさらに改良して、様々な状況を設定して、データを算出する予定である。化学テロ・災害時、ダーティボムなど爆弾テロ・災害に化学テロ・災害が併発した場合、現場最前線における法執行機関による救護処置等の有用性などは引き続いての検討が可能である。
さらに、東京五輪・パラリンピックを想定して、適切な現場(医療)対応手法がテロ・災害発生場所によって左右されるかどうかの検討も必要と考えられる。今後は、道路閉塞/遮断状況も加味しての検討を行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2018-07-11
更新日
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