公衆浴場等施設の衛生管理におけるレジオネラ症対策に関する研究

文献情報

文献番号
201726007A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆浴場等施設の衛生管理におけるレジオネラ症対策に関する研究
課題番号
H28-健危-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 八木田健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 泉山信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 黒木俊郎(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 磯部順子(富山県衛生研究所)
  • 長岡宏美(静岡県環境衛生科学研究所)
  • 森本 洋(北海道立衛生研究所)
  • 佐々木麻里(大分県衛生環境研究センター)
  • 中西典子(神戸市環境保健研究所)
  • 田栗利紹(長崎県環境保健研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
19,305,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
公衆浴場等のレジオネラ症対策の向上のために、レジオネラ検査法の改善、およびその普及が急務である。従来の1~2週間を要する培養法に対して、1~2日で結果が得られる迅速検査法が期待されており、迅速検査法の妥当性の検証およびさらなる改良を行う。培養法についても、実検体での検証を重ね、標準的検査法を提唱する。入浴施設等の効果的な衛生管理を達成するため、これまでその有用性を明らかにしてきたモノクロラミン消毒の実践、および入浴施設の設備構造上の問題を洗い出し、洗浄法の開発を行う。汚染源は半数が入浴施設に関連し、残り半分は不明とされることから、並行して入浴施設以外の環境のレジオネラ属菌汚染実態調査を行う。さらに感染源の同定に必要な分子疫学法の検証や、効率的にレジオネラ属菌を分離する方法の開発やそのための基礎的検討を行う。レジオネラ検査実施機関に対して、外部精度管理や研修を行うことで、レジオネラ検査の質の向上を図る。
研究方法
13の研究項目は、1から数名の研究分担者および研究協力者が参加し、実施された。レジオネラ属菌の検出・定量は新版レジオネラ症防止指針に準じて行なった。遺伝子検査法であるqPCR法とLAMP法は、複数の研究項目で実施された。qPCR法は、Cycleave PCR Legionella (16S rRNA) Detection Kit(タカラバイオ)を使用し、添付の取扱説明書に従い実施した。LAMP法は、Loopampレジオネラ検査キットE(栄研化学)を使用し、添付の取扱説明書に従い実施した。
結果と考察
平成29年度からは、建築設備設計の専門家が研究協力者として参加し、設備設計からみた適切な消毒・洗浄法について検討を行った。モノクロラミン消毒導入モデルスキームを作成し、3施設で運用した。pH10程度の温泉施設においてもモノクロラミン消毒が有効であることが確認できた。医療機関の給水・給湯系のレジオネラ汚染に、引き続き対応した。現行の当研究班によるレジオネラ検査推奨法を平成29年に改定されたISOと摺り合せた結果、本法を標準的な培養検査法の下敷きとすることが妥当であると思われた。民間検査機関を対象としたマニュアルの作成の検討をおこなった。前研究班から3年間にわたり、外部精度管理事業への助言を行い、事業の継続が達成できた。各種研修会で検査法について普及に努めたが、実技を含む継続的な研修会の具体的計画作成には至っていない。迅速検査法については、PALSAR法、LAMP法、EMA-LAMP法、qPCR法およびEMA-qPCR法を実施した。レジオネラ属菌の宿主アメーバに作用し、ファゴソーム内活性酸素産生を阻害するアポシニン、およびリソゾームの内部pHを中性化し、その加水分解酵素作用を阻害するクロロキンならびに塩化アンモニウムは、難培養性のレジオネラ属菌のアメーバ感染率を増加させ、生残性を高めた。感染源解明に有用な、特異的抗体を用いたLegionella pneumophila 血清群1株の選択的濃縮法の検討について、感染源調査に有用であることが示せたので、実用化に向けて具体的な使用手順などを検討する。L. pneumophilaの遺伝子型別について、従来のSBT法より簡便なMLVA法について、手法を確立できたので、検査数を蓄積し、分別能に優れていることが示された。また、過去の集団感染事例について解析し、その有用性が証明できた。レジオネラ属菌検査が現地で可能となるフローサイトメトリー技術の開発について、29年度は、レジオネラ特異染色液を作製し、L. pneumophilaとL. dumoffiiを特異的に検出することができた。
結論
公衆浴場等施設の衛生管理の向上を目指して、研究を実施した。
 入浴施設の衛生管理のうえで重要なろ過器の洗浄について既存の施設に導入可能な実地試験を行ない、効果があった。
 浴槽水、湯口水、シャワー水、カラン水、採暖槽水、河川水、屋内・浴室および道路沿いの空気等について培養検査および迅速検査を行い、レジオネラ属菌による汚染実態を明らかにした。レジオネラ培養には斜光法を取り入れ、一部の検体にはアメーバ共培養法、免疫磁気ビーズによる選択的濃縮法を適用した。レジオネラ属菌DNA・RNA・表層抗原等を検出対象とする各種迅速検査法を検討し、感度の向上、時間の短縮を図った。
 アポシニン、クロロキン、塩化アンモニウム存在下で、難培養性レジオネラの宿主アメーバへの感染が促進されることを見出した。遺伝子型別法として利便性の高いMLVA法を過去の集団感染事例に適用し、従来法のPFGE法やSBT法との相関性が確認できた。
 今後も、効果的な消毒法・検査法等の確立および普及、浴場等の衛生管理要領等の改正のための知見等を得るために、研究を継続実施する。

公開日・更新日

公開日
2018-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-07-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201726007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
20,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,108,359円
人件費・謝金 0円
旅費 2,918,855円
その他 2,278,077円
間接経費 695,000円
合計 20,000,291円

備考

備考
自己資金281円、預金利息10円

公開日・更新日

公開日
2019-02-25
更新日
-