文献情報
文献番号
201725018A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質のヒト健康リスク評価における(定量的)構造活性相関およびカテゴリーアプローチの実用化に関する研究
課題番号
H27-化学-指定-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
- 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
- 小野 敦(岡山大学・医歯薬学総合研究科)
- 森田 健(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
- 山田 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
- 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究目的
現在、世の中には数万種に及ぶ既存化学物質が安全性評価未実施のまま流通しており、それら化学物質のリスク管理は、世界的な課題となっている。本研究では、規制の対象となるすべての化学物質のヒト健康リスクを評価するためのインシリコ手法を確立することことを目的とする。具体的には、カテゴリーアプローチと、構造活性相関(QSAR)手法により、各種毒性エンドポイントを定性・定量的に予測する手法を開発、改良し、化学物質のヒト健康リスク評価に利用することを実現させる。
現在、世の中には数万種に及ぶ既存化学物質が安全性評価未実施のまま流通しており、それら化学物質のリスク管理は、世界的な課題となっている。本研究では、規制の対象となるすべての化学物質のヒト健康リスクを評価するためのインシリコ手法を確立することことを目的とする。具体的には、カテゴリーアプローチと、構造活性相関(QSAR)手法により、各種毒性エンドポイントを定性・定量的に予測する手法を開発、改良し、化学物質のヒト健康リスク評価に利用することを実現させる。
研究方法
研究方法
遺伝毒性に関してはエームス試験、in vivo染色体異常試験のデータセットを整理・統合し、大規模データベースを構築し、予測モデルの検証・改良を行った。新規エーム試験データ4,409化合物の構造を11のQSARベンダーに提供し、エームス変異原性予測の国際コンペティションPhase III トライアルを行った。また、染色体異常に関しては拡張版CGXデータベースから抽出した440物質に対し、Derek、AWorksおよびMCaseの3つのQSARモデルで染色体異常の予測性を検証比較した。また、複数の遺伝毒性QSAR予測結果を総合的に判定するためのストラテジーの開発を試みた。
反復毒性に関しては、化審法の28日間試験が実施済みの化学物質を対象としてtanimoto係数による構造類似度を総当たり計算し、反復投与毒性試験における無毒性量の近似度の関係について解析し、無毒性量の予測性の検討を行った。また、MIP-DILI(ヒトの薬物性肝障害予測システムを目標としたコンソーシアム)のデータをと毒性試験データベースに統合し、リードアクロスモデルおよび機械学習モデルとしての有用性を検討した。カテゴリーアプローチによる反復投与毒性の評価事例としてベンゾトリアゾールを選択した。
遺伝毒性に関してはエームス試験、in vivo染色体異常試験のデータセットを整理・統合し、大規模データベースを構築し、予測モデルの検証・改良を行った。新規エーム試験データ4,409化合物の構造を11のQSARベンダーに提供し、エームス変異原性予測の国際コンペティションPhase III トライアルを行った。また、染色体異常に関しては拡張版CGXデータベースから抽出した440物質に対し、Derek、AWorksおよびMCaseの3つのQSARモデルで染色体異常の予測性を検証比較した。また、複数の遺伝毒性QSAR予測結果を総合的に判定するためのストラテジーの開発を試みた。
反復毒性に関しては、化審法の28日間試験が実施済みの化学物質を対象としてtanimoto係数による構造類似度を総当たり計算し、反復投与毒性試験における無毒性量の近似度の関係について解析し、無毒性量の予測性の検討を行った。また、MIP-DILI(ヒトの薬物性肝障害予測システムを目標としたコンソーシアム)のデータをと毒性試験データベースに統合し、リードアクロスモデルおよび機械学習モデルとしての有用性を検討した。カテゴリーアプローチによる反復投与毒性の評価事例としてベンゾトリアゾールを選択した。
結果と考察
考察と結果
エームス試験QSARの改良に関しては、新規4,409化合物を用いて、19のQSARツールについて予測精度の評価を行った(Phase III)。多くのQSARツールの予測精度は比較的高く、実際のエーム試験との一致率は平均76%であった。しかしながら、これまでより全体の予測率は低下した。その理由としてSpecificityの低下が考えられた。Phase IIIには分子量800以上のエームス陰性化合物が多く、これらを正しく陰性と予測できなかったことが原因と考えられた。3つのモデル(Derek、AWorks、MCase)によるIn vitro CA予測性(感受性/特異性)は、Derekでは56.0%/86.9%、AWorksでは67.7%/61.5%、MCaseでは91.0%/64.9%であった。CA予測の改善には、用いるデータの精緻化や代謝の考慮が必要と考えられた。
反復投与毒性については、化学構造の類似度と毒性試験における無毒性量の近似度の関係について解析により、構造類似度がおおよそ70%を超える物質では、構造類似度の増加にともなう無毒性量の近似が認められた。構造類似物質の無毒性量からの予測性について検討を行った結果、3物質以上の類似物質について情報が得られていれば、構造類似物質からの無毒性量の予測評価の可能性が示された。構造記述子と部分構造を用いた無毒性量の2クラス判別モデルの判別精度にモデル構築に用いたデータセットにおける構造類似物質数との関係は認められず、記述子等を用いた予測モデルは構造類似物質について情報が限られている場合でも有効であることが示された。肝毒性予測モデルに関しては、肝毒性エンドポイントに関連するMolecular Initiating EventやKey Eventと生体内経路プロファイルとの組み合わせによるKINMEワークフローを作成し、さらにCYPへの結合性の予測やMIP-DILIプロジェクトの結果を組み入れる改良を行った。また、プロファイラーで得られた予測結果の可視化ツールを作成した。
OECDのIATA Case Studies Projectでは、ベンゾトリアゾールの肝毒性を対象にIATAケーススタディの文書を作成し、メンバー国の専門家によるレビューを受けた。
エームス試験QSARの改良に関しては、新規4,409化合物を用いて、19のQSARツールについて予測精度の評価を行った(Phase III)。多くのQSARツールの予測精度は比較的高く、実際のエーム試験との一致率は平均76%であった。しかしながら、これまでより全体の予測率は低下した。その理由としてSpecificityの低下が考えられた。Phase IIIには分子量800以上のエームス陰性化合物が多く、これらを正しく陰性と予測できなかったことが原因と考えられた。3つのモデル(Derek、AWorks、MCase)によるIn vitro CA予測性(感受性/特異性)は、Derekでは56.0%/86.9%、AWorksでは67.7%/61.5%、MCaseでは91.0%/64.9%であった。CA予測の改善には、用いるデータの精緻化や代謝の考慮が必要と考えられた。
反復投与毒性については、化学構造の類似度と毒性試験における無毒性量の近似度の関係について解析により、構造類似度がおおよそ70%を超える物質では、構造類似度の増加にともなう無毒性量の近似が認められた。構造類似物質の無毒性量からの予測性について検討を行った結果、3物質以上の類似物質について情報が得られていれば、構造類似物質からの無毒性量の予測評価の可能性が示された。構造記述子と部分構造を用いた無毒性量の2クラス判別モデルの判別精度にモデル構築に用いたデータセットにおける構造類似物質数との関係は認められず、記述子等を用いた予測モデルは構造類似物質について情報が限られている場合でも有効であることが示された。肝毒性予測モデルに関しては、肝毒性エンドポイントに関連するMolecular Initiating EventやKey Eventと生体内経路プロファイルとの組み合わせによるKINMEワークフローを作成し、さらにCYPへの結合性の予測やMIP-DILIプロジェクトの結果を組み入れる改良を行った。また、プロファイラーで得られた予測結果の可視化ツールを作成した。
OECDのIATA Case Studies Projectでは、ベンゾトリアゾールの肝毒性を対象にIATAケーススタディの文書を作成し、メンバー国の専門家によるレビューを受けた。
結論
結論
本研究プロジェクトは順調に推移していると考える。特にエームス変異原性予測の国際コンペティションに関しては、世界的に注目され、多くのQSARツールの予測性の向上に貢献した。
本研究プロジェクトは順調に推移していると考える。特にエームス変異原性予測の国際コンペティションに関しては、世界的に注目され、多くのQSARツールの予測性の向上に貢献した。
公開日・更新日
公開日
2018-06-12
更新日
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