AOPおよびIATAに立脚した国際的な安全性評価手法の確立

文献情報

文献番号
201725016A
報告書区分
総括
研究課題名
AOPおよびIATAに立脚した国際的な安全性評価手法の確立
課題番号
H27-化学-指定-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 小川久美子(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 小野 敦(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 尾上誠良(静岡県立大学薬学部 薬物動態学分野)
  • 増村健一(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 山影康次(食品薬品安全センター 秦野研究所)
  • 仲井俊司(日本化学工業協会)
  • 松下幸平(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,OECDの進める安全性評価の国際的な潮流に乗り,日本が得意とする分野で主導的にAOP(Adverse Outcome Pathway)やIATA(Integrated Approaches to Testing and Assessment)の提案を目的とする.並行して化学物質の安全性評価のための行政試験法として見込みのある試験法について,バリデーションおよび第三者評価を実施または支援することにより,OECD試験法ガイドライン(TG)の成立または改定を目指す.具体的には,免疫抑制,生殖発生毒性,発がん性および光安全性に関する分野で日本発のAOPを作成する.一方,in vitro皮膚感作性試験 ヒト樹状細胞株を用いた検出法(h-CLAT:human Cell Line Activation Test),およびIL-8 Luc アッセイ,in chemico皮膚感作性試験ADRA,in vitro発がん性スクリーニング Bhas形質転換試験(Bhas42 CTA),in vitroアンドロゲン受容体転写活性化法(AR STTA),発生毒性試験スクリーニング Hand1-Luc ESTおよびin chemico 光化学的試験方法ROSアッセイ,遺伝毒性試験 チミジンキナーゼ遺伝子突然変異試験について,TGまたはガイダンスの成立または改定を目指す.
研究方法
当該年度は免疫毒性に関するAOP案”に関し、OECDでの内部評価の指示に従い修正した.鼻腔発がんに関するAOP案の作成を目標として,文献検索によって実験動物の鼻腔発がん誘発化学物質をリストアップし,異形成,過形成,化生,炎症など初期病変の性格および発生するがんの組織型等に関するデータの関連性を解析した.一方,ROS アッセイを主軸とした AOP を作成するため,光毒性物質の光生物化学的ならびに光化学的特性を精査することで光毒性反応機序のさらなる解明を行った.また,腎臓の代償性機構を解析することにより腎障害評価分子を抽出し,新たな安全性評価手法の確立を目指した.OECDTG490に記載された遺伝子突然変異試験(TK6試験)の運用について検討する多施設共同研究を実施し,発がん物質5化合物についてデータを蓄積した.
結果と考察
腎障害評価分子の探索のため,雌雄F344ラットに片側腎摘出を施した結果,術後2および3日に残存腎重量が有意に増加し,細胞増殖マーカーの発現が有意な増加あるいは増加傾向を示した.さらに雌雄ともにtransforming growth factor-β1のmRNA発現量に片側腎摘出の影響はみられなかったことから,腎臓の代償性機構には細胞の増数が寄与していることが示された.TGに関しては,in vitro皮膚感作性試験TG442E”の中に,IL-8 Luc アッセイが採択された.また, ROSアッセイについては,得られた科学的根拠をベースにパブリックコメントに対応し, TG 案を改定した.新たに,ADRAバリデーション研究報告書の取りまとめを行うとともに,OECDにTGを提案した.AR STTAについては,細胞利用におけるライセンス料の問題が指摘され,対応のためTGの修正と性能標準案をOECDに提案した.Bhas42 CTAにおけるMB染色による吸光度測定法による判定結果は,発がん物質の判定においては,従来の観察法による判定結果と同等の結果が得られた.IATAについては,非遺伝毒性発がん性および眼刺激性に関するIATA策定に協力した.OECDで承認されたIATAは,皮膚刺激性,眼刺激性,皮膚感作性の3つのみである.
結論
日本発の皮膚感作性試験代替法IL-8 LucアッセイをOECDのTGに採択させ,TG442Eに加えた.昨年度のh-CLATに引き続き,2年続けて日本発の皮膚感作性試験代替法を公定化することができた.ROSアッセイのTGについては,国際的な合意が得られず,決着は次年度となった.Hand1-Luc ESTも含め,次年度以降の課題である.AOPに関しては,免疫抑制のAOP案を修正し,内部評価を受けている.引き続き,発がん性,光安全性,生殖毒性のAOP開発を進め,次年度にはOECDの指定サイトに入力したい.

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201725016B
報告書区分
総合
研究課題名
AOPおよびIATAに立脚した国際的な安全性評価手法の確立
課題番号
H27-化学-指定-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 小川久美子(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 小野 敦(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 尾上誠良(静岡県立大学薬学部 薬物動態学分野)
  • 増村健一(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 山影康次(食品薬薬品安全センター 秦野研究所)
  • 仲井俊司(日本化学工業協会)
  • 松下幸平(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経済協力機構(OECD)の進める安全性評価の国際的な潮流に乗り,日本が得意とする分野で主導的にAOP(Adverse Outcome Pathway)やIATA(Integrated Approaches to Testing and Assessment)の提案を目的とする.並行して化学物質の安全性評価のための行政試験法として見込みのある試験法について,バリデーションおよび第三者評価を実施または支援することにより,OECD試験法ガイドライン(TG)を成立または改定させることを目指す.
研究方法
免疫抑制,生殖発生毒性,発がん性および光安全性に関する分野で日本発のAOPを作成する.一方,in vitro皮膚感作性試験 ヒト樹状細胞株を用いた検出法(h-CLAT),およびIL-8 Luc アッセイ,in chemico皮膚感作性試験ADRA,in vitro発がん性スクリーニング Bhas形質転換試験(Bhas42 CTA),in vitroアンドロゲン受容体転写活性化法(AR STTA),発生毒性試験スクリーニング Hand1-Luc EST およびin chemico 光化学的試験方法ROSアッセイ,遺伝毒性試験 チミジンキナーゼ遺伝子突然変異試験について, TGまたはガイダンス文書(GD)を成立または改定させることを目指している.さらに,OECDでのIATA作成を支援する.
結果と考察
AOPに関しては,免疫毒性に関するAOP案に関し,OECDでの内部評価の指示に準じ,採択に向け修正した.鼻腔発がんに関するAOP案の作成を目標として,化学物質によって誘導された鼻腔発がんに関する情報を収集し,情報を整理して,発生する腫瘍の分類とそれぞれの発生母地及び先行病変に関して体系的に取りまとめた.一方,ROS アッセイを主軸とした AOP を作成するため,光毒性物質の光生物化学的ならびに光化学的特性を精査することで光毒性反応機序のさらなる解明を行った.また,腎障害評価分子を抽出することを目的とし,F344ラットに片側腎摘出を施した結果,雌雄ともに腎臓の代償性機構には細胞の増数が寄与していることが明らかになり,細胞増殖関連因子が新たな腎障害評価分子となる可能性が考えられた.TGに関しては,平成28年1月にBhas42CTAのGDを,平成28年9月にin vitro皮膚感作性試験 ヒト樹状細胞株を用いた検出法(h-CLAT)をTG442Eとして,およびAR STTAをOECD TG458として採択させた.また,平成29年10月にIL-8 Luc アッセイをin vitro皮膚感作性試験TG442Eの中に採択させ,4試験法の採択に貢献できた.また,光安全性試験ROSアッセイについては,得られた科学的根拠をベースにパブリックコメントに対応した TG 案改定を実施した.新たに,in chemico皮膚感作性試験ADRA (Amino acid Derivative Reactivity Assay) バリデーション研究を終了し,バリデーション報告書の取りまとめを行うとともに,OECDにTG提案のためのSPSFを提出した.TGの改定に関する対応としては,TG490に記載された「チミジンキナーゼ遺伝子を用いた哺乳類細胞のin vitro遺伝子突然変異試験」の運用を検討するため,陽性対照物質2種類を用いたバリデーションを11機関で実施し,発がん物質5種類を用いて他の遺伝子突然変異試験との比較を行い,データを蓄積した.GDとして発行されたBhas 42CTAについては,形態観察による判定法を機械化による客観的方法に改良して汎用性の高いプロトコルとするため,GDに記載されている96ウェルプレート法にメチレンブルー(MB)染色による吸光度測定法を適用し,その有用性を確認できた.非遺伝毒性発がん性のIATA作成について,引き続きOECDに協力する.
結論
当該研究期間中に,Bhas42CTA,h-CLAT,AR STTAおよびIL-8 Luc アッセイの4試験法をOECD TGまたはガイダンスの成立にさせた.免疫抑制,生殖発生毒性,発がん性および光安全性に関するAOP作成を継続した.

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201725016C

収支報告書

文献番号
201725016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,000,000円
(2)補助金確定額
18,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,458,234円
人件費・謝金 2,629,728円
旅費 4,587,603円
その他 1,324,551円
間接経費 0円
合計 18,000,116円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-01-11
更新日
-