室内濃度指針値見直しスキーム・曝露情報の収集に資する室内空気中化学物質測定方法の開発

文献情報

文献番号
201725015A
報告書区分
総括
研究課題名
室内濃度指針値見直しスキーム・曝露情報の収集に資する室内空気中化学物質測定方法の開発
課題番号
H27-化学-指定-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 神野 透人(名城大学 薬学部)
  • 酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 香川 聡子(横浜薬科大学 薬学部)
  • 上村 仁(神奈川県衛生研究所 理化学部)
  • 田辺 新一(早稲田大学 創造理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
室内濃度指針値の見直しのため、室内汚染実態の正確な調査データが求められている。指針値を新規設定する際には妥当性が確認された標準試験法の提示が必要である。本研究では、総揮発性有機化合物(TVOC)並びに今後室内濃度指針値が策定される可能性のある揮発性有機化合物(VOC)及び準揮発性有機化合物(SVOC)の試験法を開発し、それらの妥当性を評価するとともに、室内空気測定法に関わる国際規格等から情報収集して、国際的に整合する標準試験法を提案することを目的とした。TVOCに関しては、試験法確立に必須となる標準試料の作成法とパッシブサンプリング法の代替可能性を検討した。VOCに関しては加熱脱離-GC/MS法(加熱脱離法)及び固相吸着-溶媒抽出-GC/MS法(溶媒抽出法)に用いる捕集管の比較や条件等基礎的なデータを得ることとした。SVOCについては、殺虫剤のサンプリング法の確立、及びフタル酸ジ-n-ブチル及びフタル酸ジ-2-エチルヘキシルについては新指針値(案)を検出できる測定方法の提案を目的とした。
研究方法
TVOCの標準試料を作製し、その均一性を評価した。パッシブサンプリングまたはアクティブサンプリングしたときのTVOC値を比較した。Tenax単層ステンレスチューブ等3種の捕集管に2-エチル-1-ヘキサノールを捕集管に添加し、ブランクのチェック、併行精度、検量線安定性等を評価した。溶媒抽出法によるグリコールエーテル類及び環状シロキサン類を含むVOCの各種捕集管からの回収試験を行った。ピレスロイド系殺虫剤及びネオニコチノイド系殺虫剤のODSフィルターとPUFフィルターからの溶媒抽出による回収率を比較した。フタル酸ジ-n-ブチル及びフタル酸ジ-2-エチルヘキシルを負荷した2種類の捕集管を複数研究室で分析し、ばらつきを評価した。市販のPVC建材の試験片を用い、JIS A 1904の条件に従ってマイクロチャンバー法及び現場測定方法を実施した。2017年度のISO/TC146/SC6の事務局報告書を参考にし、室内空気質関連の規格・新提案等について調査した。
結果と考察
一般家庭の室内空気をアクティブサンプリング法で同時に短時間吸着管に採取することによって、TVOCの妥当性評価に用いることのできる均一性に優れた試料を作製できることがわかった。パッシブサンプリング法は代替指標を用いることで簡易試験法としての可能性を示した。2-エチル-1-ヘキサノールの加熱脱離測定法に際し、Tenax単層捕集管が適することを明らかにした。湿度が高くなるほど活性炭系捕集管からのVOCの回収率が減少する傾向が見られた。グリコールエーテル類と環状シロキサン類の計24化合物の抽出溶媒に二硫化炭素を、捕集剤にカーボンビーズを用いた場合、プロピレングリコールを除き60%以上の回収率となった。ピレスロイド系及びネオニコチノイド系殺虫剤のサンプリングファイルターとして国際規格等で採用が検討されているPUFフィルターは、概ね良好な回収率が得られるが、ODSフィルターを用いるよりも定量下限が上がった。フタル酸ジ-n-ブチル及びフタル酸ジ-2-エチルヘキシルについては新指針値の1/10~1/100の濃度を検出する試験法を開発し、バリデーションの結果、妥当性が評価された。マイクロチャンバーを応用した方法の、現場仕上げ材からのSVOC放散速度の測定方法としての可能性を確認した。室内空気汚染濃度の測定・分析方法に関する国際規格を調査した。2017年にISO 12219-6、ISO 12219-7、及び可塑剤分析のISO 16000-33が正式な規格となったことを示した。
結論
各種VOC及びSVOCの測定方法の開発及び妥当性評価を行うとともに、引き続き国際規格等の情報収集を行った。TVOC標準試料の作製方法を提案するとともに、サンプリング法としてパッシブ法とアクティブ法を比較した。2-エチル-1-ヘキサノールを加熱脱離法によって測定する際の適切な捕集管を示した。また、VOC各種の溶媒抽出法で用いる捕集管についても比較検討した。空気中の殺虫剤のサンプリングに用いるフィルターとして、ODSフィルターの優位性を明らかにした。フタル酸ジ-n-ブチル及びフタル酸ジ-2-エチルヘキシルの新規指針値案に対応する測定方法の妥当性を確認した。マイクロチャンバーを応用した現場測定方法の可能性を評価した。可塑剤他の分析法に関する国際規格が成立し、注視していく必要があることを示した。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201725015B
報告書区分
総合
研究課題名
室内濃度指針値見直しスキーム・曝露情報の収集に資する室内空気中化学物質測定方法の開発
課題番号
H27-化学-指定-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 神野 透人(名城大学 薬学部)
  • 酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 香川 聡子(横浜薬科大学 薬学部)
  • 上村 仁(神奈川県衛生研究所 理化学部)
  • 田辺 新一(早稲田大学 創造理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現行の室内濃度指針値が策定されて15年が経過し、それらの代替化合物による新たな室内空気汚染の可能性が指摘されている。厚生労働省のシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会では室内濃度指針値の見直し作業を進めているが、候補対象物質の詳細リスク評価が必要であり、室内汚染実態の正確な調査データが求められる。しかし、室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)や準揮発性有機化合物(SVOC)の測定方法は必ずしも十分に整備されていない。また、室内濃度指針値を新規設定する際には信頼性・妥当性が確認された標準試験法の提示が必要である。本研究は、化学物質の室内空気汚染に対応し、室内濃度指針値を策定する上で必要となる室内空気中化学物質の測定方法を開発する。
研究方法
対象化合物をVOCとSVOCに分類して測定方法の開発及び妥当性評価を行った。国際的な整合性が図られるよう、空気試験法に関する国際規格の進捗状況を調査した。
結果と考察
1. 揮発性有機化合物
総揮発性有機化合物(TVOC)の測定に際して間欠サンプリングポンプを開発するとともに、吸着管汚染防止策を示した。TVOC標準試料として、室内空気をアクティブサンプリング法で同時に短時間Tenax TA吸着管に採取したものが均一性に優れていることを示した。パッシブサンプリング法は代替指標を用いることにより簡易試験法として活用できる可能性があった。
2-エチル-1-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、グリコールエーテル類、環状シロキサン類を対象とした固相吸着-加熱脱離-GC/MS法(加熱脱離法)及び固相吸着-溶媒抽出-GC/MS法(溶媒抽出法)の開発を行った。加熱脱離法にはTenax系捕集管が優れていた。溶媒抽出法はカーボンビーズ(活性炭)系捕集剤と二硫化炭素を用いたとき概ね良好な結果であった。
2.準揮発性有機化合物
可塑剤のフタル酸エステル類7種を対象にして検討した。フタル酸ジイソノニル及びフタル酸ジイソデシルの適切なGC分析条件の設定を行った。空気捕集剤は、ブランク値や添加回収試験の結果から、ろ紙サンプラー及びAEROカートリッジを候補とした。フタル酸2-エチルへキシル及びフタル酸ジn-ブチルの標準試験法を作成した。バリデーションを実施した結果、真度、併行精度及び室間精度は妥当性ガイドラインの目標値を満たした。
難燃剤リン酸トリエステル類及びフタル酸エステル類のGC/MS一斉分析法を開発した。リン酸トリエステル類のみを分析する場合はMS検出器よりもNPD及びFPDが高感度なことがわかった。空気捕集用の各種サンプラーへの添加回収試験を実施した結果、一部を除き各物質とも80%以上であった。空気中からはリン酸トリエステル類5物質、フタル酸エステル類5物質が検出された。
ピレスロイド系殺虫剤9種及びネオニコチノイド系殺虫剤9種については、捕集剤として石英フィルターとODSディスクを積層したものを使用し、アセトン又はアセトニトリル溶液で抽出後、GC/MS及びLC/MSで分析する方法を開発した。
実空間における仕上げ材からのSVOC放散速度の測定方法の可能性を示した。
3.室内空気中化学物質試験法の国際規格の調査
室内空気質と関連する国際規格と対応する日本標準規格(JIS)を調べた。ISO/TC146/SC6における殺虫剤、難燃剤、可塑剤等SVOCの測定方法の動向を収集した。ISO 12219-6、ISO 12219-7の車内空気の分析法、及びISO 16000-33の可塑剤分析法が正式な規格となり、新たな審議の予備段階にある項目についても引き続き注視する必要があった。
結論
室内濃度指針値の策定候補となっている各種VOC及びSVOCの測定方法の開発及び妥当性評価を行うとともに、国際規格等の情報収集を行った。TVOCの測定に間欠サンプリング法を考案、ポンプの開発を行うとともに、吸着管の汚染防止策や標準試料の作製方法を提案した。2-エチル-1-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート等VOCについて、固相吸着-加熱脱離-GC/MS法(加熱脱離法)及び固相吸着-溶媒抽出-GC/MS法(溶媒抽出法)の開発を行い、各種捕集管を比較検討した。空気中殺虫剤、可塑剤、難燃剤等SVOCの分析方法を開発、及び各種捕集管の比較を行った。フタル酸エステル2種の新規指針値案に対応する測定方法を開発し妥当性評価を行った。可塑剤等の分析法に関する国際規格が成立した。その他についても規格化に向けた進捗状況を引き続き注視していく必要があった。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201725015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今後室内濃度指針値が策定された際に標準試験法として提案できる妥当性のとれた測定方法を開発した。日本薬学会編纂の「衛生試験法・注解」等に公表、及びJISやISOに提案することによって、室内環境測定の標準として活用される。本測定方法を用いることによって、様々な試験研究機関から質のそろった実態調査等データの提供を受けることができるようになり、室内空気汚染物質に関する全国規模及び国際的データを定量的に比較することが可能になる。

臨床的観点からの成果
本研究で開発、確立した測定方法を用いて得られた詳細曝露評価の結果は厚生労働省のシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会での議論を加速化し、室内濃度指針値の早期見直し及び新規候補物質の設定に寄与する。室内濃度指針値が策定された際は早期に標準測定方法として提示できることから、行政施策の円滑な遂行が図られる。室内空気質の向上にかかわる行政施策の策定を通じて、国民の安心・安全な生活に貢献する。
ガイドライン等の開発
第21回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会(2017年4月19日)、第20回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会(2016年10月26日)、第19回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会(2016年3月4日)

その他行政的観点からの成果
電子政府の総合窓口(e-Gov)パブリックコメント【案件番号:495170055】 室内空気中化学物質の指針値案に対する御意見の募集について(2017年6月5日)厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課化学物質安全対策室
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
36件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takeuchi S., Tanaka-Kagawa T., Saito I.,et al.
Differential determination of plasticizers and organophosphorus flame retardants in residential indoor air in Japan.
Environ. Sci. Poll. Res. , 113-120  (2015)
10.1007/s11356-015-4858-z
原著論文2
佐藤学,上村仁,小坂浩司,他
神奈川県相模川流域における河川水及び水道水のネオニコチノイド系農薬等の実態調査.
水環境学会誌 , 39 ((5)) , 153-162  (2016)
原著論文3
今村奈津子,金炫兌,田辺新一,他
マイクロチャンバーを用いた SVOC 物質の現場測定方法の開発.
日本建築学会中国支部研究報告集 , 41 , 365-368  (2018)
原著論文4
Takeuchi S., Tanaka-Kagawa T., Sait I., et al.
Differential determination of plasticizers and organophosphorus flame retardants in residential indoor air in Japan.
Environ Sci Pollut Res. , 25 , 7113-7120  (2018)

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201725015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,000,000円
(2)補助金確定額
19,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,022,907円
人件費・謝金 495,000円
旅費 1,396,927円
その他 2,086,086円
間接経費 0円
合計 19,000,920円

備考

備考
物品購入に自己資金を充てたため

公開日・更新日

公開日
2018-12-07
更新日
-