文献情報
文献番号
201725012A
報告書区分
総括
研究課題名
室内環境中の化学物質リストに基づく優先取組物質の検索とリスク評価
課題番号
H29-化学-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
雨谷 敬史(静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究分担者(所属機関)
- 小川久美子(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
- 小林剛(横浜国立大学 環境情報研究院)
- 久米一成(東京都市大学 環境学部)
- 三宅祐一(静岡県立大学 食品栄養科学部)
- 高須伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
室内環境ガイドラインが設定されて以降、現在でもシックハウス問題の懸念が存在している。本研究班では、平成26年~28年の本事業において、室内に存在する可能性がある化学物質1698種の名称、性状、用途、毒性情報、感作性情報を網羅的に収集した「室内環境中の化学物質リスト1698」を開発した。しかし、このリストには、曝露情報、毒性情報ともに空白があり、懸念が高い物質から空白を埋めていく必要がある。本研究は、曝露評価、ハザード評価、化学物質情報処理、エミッション評価の専門家が連携して、リストに基づく優先取組物質の検索と、予備的リスク評価を行うことにより、リストの空白を埋めることとした。
研究方法
曝露評価・リスク評価サブグループでは、防炎カーテン中の臭素系およびリン系難燃剤の網羅的な定量分析を行った。本研究で構築した完全溶解法と精密質量数を組み合わせた定性分析法を用いた。ハザード評価サブグループでは、難燃カーテンから曝露評価グループにより検出された新たな難燃剤のうち、げっ歯類を用いたハザード評価を優先して行う物質を選別するために、既存毒性情報や予測法による毒性情報の検討を行った。室内化学物質ライブラリの構築サブグループでは、室内化学物質のライブラリ拡充・活用として「室内環境中の化学物質リスト1698」の空白の情報を埋めるため、情報の確認、更新をすると共に、QSAR関連情報の収集と活用の検討を実施した。エミッション評価サブグループでは、曝露評価グループと共同で住宅内の市販の防炎カーテンやハウスダスト中の難燃剤の含有量調査を、四季を通じて行った。
結果と考察
曝露評価・リスク評価サブグループでは、新しい3種のリン系難燃剤を市販の防炎カーテンから初めて検出した。また、「室内に存在する化学物質リスト1698」から高懸念物質として挙がったグリオキサールやグルタルアルデヒドの分析方法を確立した。ハザード評価サブグループでは、新たに見つかった難燃剤3種について、既存毒性情報や予測法による毒性情報の精査を行い、ハザード評価物質を選定した。今後、本物質について想定される暴露量や暴露経路などを考慮し、げっ歯類を用いた反復投与毒性試験のための用量設定試験を実施すした。室内化学物質ライブラリの構築サブグループでは、曝露情報の更新を検討し、その用途や物性情報から、製品使用量ランクや含有率ランクに関する情報を拡充することができた。更に、QSAR関連情報を調査して、EPI suiteやOECD tool Boxによる情報の拡充を行った。エミッション評価サブグループでは、住宅内の市販の防炎カーテンやハウスダスト中の難燃剤の含有量分析手法の問題点を解決した。
結論
研究初年度の平成29年度は、室内環境中の化学物質リストの拡充に努めると共に、曝露評価・リスク評価グループで検出した新たな有機リン系難燃剤のハザード評価や発生源評価を行うべく、情報の収集・精査を行った。また、リストで取り組み優先度が高いとされたがその曝露情報がほとんど無いグリオキサールやグルタルアルデヒドの分析方法を開発した。このように、各グループの研究成果を活用することにより、優先的に取り組むべき化合物の選定やその簡易リスク評価につなげていきたいと考えている。
公開日・更新日
公開日
2018-06-07
更新日
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