文献情報
文献番号
201725008A
報告書区分
総括
研究課題名
カーボンナノチューブ等の肺、胸腔及び全身臓器における有害性並びに発癌リスクの新規高効率評価手法の開発
課題番号
H28-化学-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
研究分担者(所属機関)
- 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究)
- 内木 綾(名古屋市立大学 大学院医学研究科 実験病態病理学分野)
- 山村 寿男(名古屋市立大学 大学院薬学研究科 細胞分子薬効解析学分野)
- 伴野 勧(静岡県立大学大学院食品栄養環境科学研究院 食品環境研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
10,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
多層カーボンナノチューブにはアスベストのような呼吸器発がん性が危惧されてきた。我々の今までの研究においてラットへの気管内投与にてMWCNT-Nに肺と胸膜中皮に発がんし、日本バイオアッセイ研究センターでは吸入暴露試験でMWCNT-7は肺のみに発がんすることが分かっている。MWCNTの肺と胸膜中皮における発がんは現在これら2報以外には無い。本研究では、ラットを用いて、急速に生産の増大する多種のMWCNTに対処するために、経気管肺内噴霧投与(TIPS)法を開発して、高額な曝露試験に代替し得る低コストで信頼性の高い評価法の開発を行い、現在の発がん性に関する情報の不足の解決を目指す研究をおこなう。併せて、検体の分散性、MWCNTの鉄含量の影響、Mφを介する気道における障害作用と発がん機序を明らかにする。
研究方法
(1)検体を2~8週間TIPS投与後に無処置観察1~4週間後および、(2)短期処置後に2年後まで無処置観察する短中期と長期試験系で以下の実験を行っている。検体はMWCNT-A(針状、直径150nm、210-215層)、MWCNT-B(綿菓子状、直径15nm、15-18層)、DWCNT(直径 2nm、2層)、夾雑鉄の無いフラーレンウィスカー(FLW:直径0.28±0.32micro-m)および、発がん性陽性対照としてMWCNT-N(針状、直径20nm、30層)またはMWCNT-7(針状、直径50-60nm、40層)を用いた。これらの検体の凝集を可能な限り少なくするために、0.1%Tween含有PF68コポリマーに分散懸濁、またはエアロソル分散したTaquann法にて分散したものを用いた。投与ラットの肺、気管・気管支、胸膜中皮、胸腔洗浄液について、炎症と障害、増殖病変、その機序について詳しく解析した。
結果と考察
TIPS投与後2年観察試験においてMWCNT-AとMWCNT-Bに肺発がん性が認めた(投稿中)。MWCNT-Bよりさらに細くて柔らかい2層壁のDWCNT(直径2nm)は、(1)の実験において、肺組織、胸膜、胸腔洗浄液の炎症関連因子の発現はMWCNT-7より軽度であった。鉄を含まないフラーレンウィスカー(FLW)の起炎症、発がん作用ついては解析中である。MWCNT-AとMWCNT-Bの発がん性に関しては、肺組織中DNAと容易に付加反応するラジカルの増加、さらに肺内に発生する脂質過酸化産物はいくつかの炎症関連因子IL種の遺伝子発現とDNA付加体を形成する可能性があり、がん細胞が増殖しやすい環境を作出し、検体の沈着によって持続する炎症反応は細胞回転を押し上げて発がんを促進ている可能性が示唆された。
結論
(1)の実験にてラットへMWCNTについて、短期TIPS投与(2~8週)にて肺、気管、胸腔、胸腔洗浄液等の炎症/毒性の増殖病変の把握が可能である。それらの変化は検体の沈着によって長期間作用して発がんの起死・促進作用となって腫瘍の発生となると考えられる。
したがって、(2)の短期TIPS投与後2年間無処置観察にて発がんを把握できる。この方法によって、低コストの有害・発がんリスク評価が可能となった。発がん機序として、肺組織の過酸化物がDNA傷害の他にがん細胞が増殖しやすい環境作りにも関与している可能性がある。
したがって、(2)の短期TIPS投与後2年間無処置観察にて発がんを把握できる。この方法によって、低コストの有害・発がんリスク評価が可能となった。発がん機序として、肺組織の過酸化物がDNA傷害の他にがん細胞が増殖しやすい環境作りにも関与している可能性がある。
公開日・更新日
公開日
2018-06-07
更新日
-