発達期における統合的な遅発性神経毒性試験法の開発

文献情報

文献番号
201725007A
報告書区分
総括
研究課題名
発達期における統合的な遅発性神経毒性試験法の開発
課題番号
H28-化学-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
諫田 泰成(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
研究分担者(所属機関)
  • 宇佐見 誠(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部 )
  • 山崎 大樹(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部 )
  • 吉田 祥子(豊橋技術科学大学)
  • 上野 晋(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 秦 健一郎(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
10,624,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、自閉症など発達障害が急速に増加し社会問題となっている。その原因 の一つは発達期における化学物質の曝露とされる。発達期の神経系は成体と比 較して感受性が高く、健康被害が長期間あるいは遅発性に生じることが考えら れ、子どもの健康影響評価法の確立が強く望まれる。 現在、OECDやEPAによって、妊娠ラットを用いる発達神経毒性試験ガイド ラインが制定されているが、試験方法が複雑で、試験期間は1年以上、動物数 は720にも及び経費も膨大である。さらに、日本ではこのようなガイドライン は未整備である。そこで我々は、発達期における細胞機能異常と神経回路異常 の毒性作用メカニズムに基づいて、新たにスループット性の高い発達神経毒性 評価スキームを作製し、評価指標の選定やプロトコルの最適化を行うことによ り統合的な発達神経毒性試験法の開発を行っている。
研究方法
ヒトiPS細胞(神経発生モデル細胞の評価系)やラット小脳および海馬(生後 初期における遅発性毒性評価系)を用いて、化学物質の影響評価に関する評価 指標の最適化を行った。特に、ラット海馬ニューロンを用いた、スループット性の高いスクリーニング系の構築に着手し、新たにHESI NeuToxと国際バリデ ーション実験を開始した。また、バルプロ酸などのメカニズムを理解する上で、 妊娠中の母親への摂取栄養の程度や栄養成分の偏りによって胎児のエピゲノ ムに影響し生後の発育や疾患の発症に寄与する、というDoHaDについて調査研究を行った。
結果と考察
【①ヒト幹細胞の分化による評価法】 ヒト iPS 細胞を用いて、化学物質の影響評 価に関する評価指標の最適化を行い、ATP 産 生と分化能を確定した。遅発性神経毒性が懸 念される化学物質の作用を検出でき、陰性対 照物質は影響を与えなかった。従って、ヒト iPS 細胞におけるミトコンドリア機能を指標 にして、成長期における化学物質の発達神経 毒性を評価できる可能性が示唆された。さら に、OECD DNT 専門委員、HESI steering committee として国際連携を推進した。 【②神経ネットワークによる評価法】 HESI NeuToxの多点電極システムサブチーム に参加し、プレバリデーションの議論を行い、プ ロトコルを決定した。これをもとに、バリデーション 試験のデータ取得を開始した。 【③生後小脳の神経回路】 遅発性神経毒性が考えられる化学物質であ るバルプロ酸、クロルピリホスを胎生期の動物に 投与し、生後の神経回路発達の変化を小脳神 経細胞の突起伸展と小脳構造の変化、動物の 行動変化から定量化して示した。また、行動異 常との相関も明らかにした。 【④幼若期海馬の神経回路機能】 遅発性神経毒性試験手法の妥当性を調べ る目的で、発達神経毒性の懸念がある 1BP について検討した結果、神経回路興奮性の亢 進をもたらすことを明らかにした。規制値と の比較を行うことにより妥当性を評価し、評 価指標の有用となる可能性を明らかにした。 【⑤既存毒性データ、ヒトデータとの検証】 陽性対照物質バルプロ酸などの作用メカ ニズムを明らかにするため、ヒトのエピゲノ ムデータに関して調査を開始した。調査研究 により、胎児期あるいは新生児期に受けた影 響により、ゲノムのメチル化が生じ生後長期 に渡って継続し、疾患リスクとなる可能性が 示唆され、バルプロ酸投与例の胎盤のエピゲ ノム解析に着手した。
結論
胎児期、成熟期において陽性対照となる化学物質を用いて、試験法の確立に向けて安定な評価指標とプロトコルを選定した。ラット 海馬ニューロンを用いたスループット性の 高いスクリーニング系を新たに構築し、国際バリデーション試験のデータ取得を開始し、 OECDとも専門委員として連携している。また、新たにヒト胎盤試料の有用性を明らかにするため、エピゲノム解析に着手した。 今後は、最適化された評価指標をもとに遅発性毒性評価系の統合化を行う。 さらに、OECDやHESIとの国際連携のもと試験法の議論を行い、ガイダンスに貢献する。

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201725007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,500,000円
(2)補助金確定額
11,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,660,596円
人件費・謝金 2,552,001円
旅費 1,383,236円
その他 1,028,167円
間接経費 876,000円
合計 11,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-29
更新日
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