文献情報
文献番号
201725003A
報告書区分
総括
研究課題名
新規in vitro評価系とマーカーの開発によるナノマテリアルのリスク評価及びリスク低減化に関する研究
課題番号
H27-化学-一般-008
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 昌俊(三重大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 林 幸壱朗(九州大学 大学院歯学研究院)
- 戸塚 ゆ加里(国立がん研究センター研究所 発がん・予防研究分野)
- 中江 大(東京農業大学 応用生物学部)
- 宮島 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
- 花方 信孝(国立研究開発法人 物質・材料研究機構)
- 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
9,462,000円
研究者交替、所属機関変更
所属期間変更
研究代表者 渡邉昌俊
横浜国立大学大学院工学研究院から三重大学大学院医学系研究科へ変更(平成29年5月1日)
研究分担者 林 幸壱朗
名古屋大学 未来材料・システム研究所から九州大学大学院歯学研究院(平成29年9月1日)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、ナノマテリアルの適切な物性解析、新規in vitro評価系の確立、細胞内応答機構等の解析で従来の評価系との比較検討、新たなマーカーの確立、適切な動物実験等による妥当性の検証を目的とした。
研究方法
平成29年度、(1)ナノマテリアルの作製及びキャラクタリゼーション(林)、(2) 細胞応答に及ぼすナノマテリアルの物性解析(河上)、(3) ナノマテリアルの細胞毒性及び遺伝毒性発現メカニズムの解析(宮島)、(4)共培養系及び3D皮膚モデルを用いたナノマテリアルの遺伝毒性評価系の構築(戸塚)、(5) 3D皮膚モデルを用いたナノマテリアルの経皮毒性評価系構築(中江)、(6)ナノマテリアル曝露による網羅的遺伝子発現解析およびエピジェネティクスマーカーの検索(花方)、(7)切片担体培養系を用いたナノマテリアルのリスク評価系の構築およびナノマテリアルの細胞内動態の解析(渡邉)を物理化学的解析および生物学的解析により行った。
結果と考察
ナノ粒子の合成条件を最適化することによる精密な形状制御およびサイズ制御できる方法、一次粒子径や二次粒子径と細胞毒性との関係から、細胞毒性の要因として、溶出イオンや細胞内取り込みが重要である事を示した。依然解決しなければならない問題もあるが、マウス肺より樹立した細胞株(GDL1細胞) とマクロファージ(RAW264.7)の共培養システムの可能性を示した。3D皮膚モデル(LabCyte EPI-MODEL)を用いたナノマテリアルの経皮毒性評価系構築では、単層培養と比較しながら、病理学的、生化学的など多面的に解析し、皮膚組織のナノ粒子侵入に対するバリア機能などを明らかにし、in vivoに外装できる皮膚一般毒性評価系として使用できる事を示した。カーボンナノチューブ(CNT)のA549、DU145細胞への曝露実験で、網羅的遺伝子発現解析を行い、miRNA発現のクラスタリング解析から、ナノマテリアルによる特徴的なmiRNA変動、すなわちマーカー抽出の可能性を示した。組織特異的な特徴を示すA549細胞の切片担体培養系の使用可能性を示した。また、酸化鉄ナノ粒子の細胞への影響は、粒子側の修飾によるROS産生の有無を起点とするautophagyの関与を明らかにし、有害性発現経路に関わる結果を示した。
研究の実施経過:前年度より引き続き、(1)毒性を有する界面活性剤を用いないナノ粒子の新規作製法及び形態変化をもたらす新規作製法の開発、(2)異なる一次粒子径のナノ粒子よる同程度の二次粒子径の懸濁液の細胞毒性評価および一次粒子径が同じで二次粒子径が異なるナノ粒子の懸濁液による細胞毒性および免疫応答解析、(3)in vivoおよび共培養システムによる遺伝毒性試験、(4)3Dヒト皮膚再構成系におけるナノ粒子の表皮傷害性と表皮侵入性の解析、(5)ナノマテリアル曝露による網羅的遺伝子発現解析およびエピジェネティクスマーカーの検索、(6)切片担体培養系を用いたナノマテリアルのリスク評価系の構築およびナノマテリアルの細胞内動態の解析を行い、総括した。
研究の実施経過:前年度より引き続き、(1)毒性を有する界面活性剤を用いないナノ粒子の新規作製法及び形態変化をもたらす新規作製法の開発、(2)異なる一次粒子径のナノ粒子よる同程度の二次粒子径の懸濁液の細胞毒性評価および一次粒子径が同じで二次粒子径が異なるナノ粒子の懸濁液による細胞毒性および免疫応答解析、(3)in vivoおよび共培養システムによる遺伝毒性試験、(4)3Dヒト皮膚再構成系におけるナノ粒子の表皮傷害性と表皮侵入性の解析、(5)ナノマテリアル曝露による網羅的遺伝子発現解析およびエピジェネティクスマーカーの検索、(6)切片担体培養系を用いたナノマテリアルのリスク評価系の構築およびナノマテリアルの細胞内動態の解析を行い、総括した。
結論
ナノマテリアルの毒性評価において、ナノ粒子の物理化学的性状および形状・表面修飾は重要な因子である。また、in vitro実験系での二次粒子径あるいはコロナの形成等も重要な因子である。本研究グループにおいて、ナノ粒子の合成条件を最適化することによる精密な形状制御およびサイズ制御できる方法、一次粒子径や二次粒子径と細胞毒性との関係から、溶出イオンや細胞内取り込みの重要性を示した。共培養系や3D皮膚モデルを用いたナノマテリアルの経皮毒性評価系構築では、それぞれの有用性が示された。CNTのA549、DU145細胞への曝露実験で、網羅的遺伝子発現解析を行い、miRNAのクラスタリング解析から、ナノマテリアルによる特徴的なmiRNA変動、すなわちマーカー抽出の可能性を示した。組織特異性を示すA549細胞の切片担体培養系の使用可能性を認めた。また、酸化鉄ナノ粒子の細胞への影響は、粒子側の修飾によるROS産生の有無を起点とするautophagyの関与を明らかにし、有害性発現経路に関わる結果を示した。
公開日・更新日
公開日
2018-06-04
更新日
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