薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築

文献情報

文献番号
201724017A
報告書区分
総括
研究課題名
薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築
課題番号
H29-医薬-指定-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
藤吉 圭二(追手門学院大学 社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 哲彦(関西学院大学 社会学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、戦後の薬害事件に関連する資料を整理・公開して誰もが閲覧・活用できるようなアーカイブズを構築し、それを通じて薬害を二度と起こすことのないような社会の構築に寄与することを目的とする。このような遠大な目的は、小さな本研究班による数年の活動で達成できるものではないが、少しずつでも確実にそこに近づいていくべく研究活動を進める必要がある。
本研究班が取り組むのは「薬害資料データ・アーカイブズ」の構築であるが、このためには薬害に関わる諸資料を対象に、保存状況の調査、整理を踏まえ、そうした資料を共有・活用するシステムとしての「薬害資料データ・アーカイブズ」を構築することが重要である。この作業は、薬害資料を活用して持続可能な研究、教育、展示などのためのインフラストラクチャー、ハブ(Hub)機能を構築するものである。特に、将来的にはインターネット上での発信を想定し、国際標準に準拠したメタデータ作成を通して、薬害と関連している機関、被害者、研究者、一般の利用者などが、ネット上でデータをみられるような基盤を構築することが重要である。
研究方法
研究方法としては、アーカイブズ学の領域で彫琢されてきた資料管理方法およびメタデータ管理方法と手順に基づいて、対象となる資料を調査、選別、整理のうえ目録入力し、それを踏まえてデジタル化(保存状態の悪い文書を対象に)すること、さらには公開資料の選別、検索機能の設計、共有方法を検討することである。
 このような最終目標を念頭に置き今年度は、薬害被害者団体の所蔵する資料、また所蔵していた資料を対象に調査・整理を進め、薬害関連資料を体系的に管理し、広く利用に供するための基盤となる「薬害資料データ・アーカイブズ」の構築に向けた作業を実施した。
 発生当時はマスコミ等で大々的に報じられるものであっても、時間の経過とともに話題にのぼる機会は減っていく。しかし話題にのぼるかどうかに関わらず被害者の苦しみは被害者の生と共に持続する。加えて、実際に被害を受けた人々も時代の経過とともに高齢化し、当事者は少しずつ、しかし確実に減っていく。このような苦難を人々にこうむらせることが二度とないよう、その手がかりとして被害者の苦難の経験を保存・提供し、社会の共有財産とすることは、まさにアメリカ国立公文書館(ワシントンDC)の建物前に刻まれた言葉Eternal vigilance is the price of liberty.(絶えてやまぬ警戒は自由の代償である) を実践することにもなるだろう。
結果と考察
 前述のような方針に基づき、2017年度は以下のような活動を軸に研究を推進した。
(1)大阪人権博物館での資料整理と調査
 整理・調査に関わるメンバーがほぼ安定し、目録作成自体はおおむね順調に進行した。ただし、公開のためには被害当事者と共に保護すべき情報を確定する必要があり、この作業にかなりの労力が必要と見込まれている。また、作業メンバーが増えたことにより、目録記述にバラつきの出てきていることが問題視されており、これをどう標準化していくかについても検討が必要である。
(2)薬害資料整理のためのワークショップ
 当事者の所蔵する資料について、当事者のもとに出向いて資料整理のワークショップを実施した。自分たちの手で自分たちの資料を整理し、広く人々のために公開するという趣旨は理解されたが、限られた日数で作業が多岐にわたったため円滑な作業に困難の発生した部分もあった。この経験を生かし、よりはいっていきやすい作業の段取りについて検討を加えていくことが重要である。
(3)薬害被害者証言インタビュー映像の分析
 本研究班、薬害被害当事者、薬害研究者などの参加を得てインタビュー映像の上映会を実施した。映像そのものに関する検討を深めると共に、映像に対して見る側の示すリアクションもまた映像理解のための貴重な手がかりであることが確認されたが、それらを統合してどのような分析枠組みを構築していくかは今後の課題である。
結論
 今後も息の長い研究活動が求められるが、長期間にわたる作業を遂行する一方、各年度において一定の成果を確認できるよう進めていくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2019-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201724017C

収支報告書

文献番号
201724017Z