輸血医療におけるトレーサビリティ確保に関する研究

文献情報

文献番号
201724012A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血医療におけるトレーサビリティ確保に関する研究
課題番号
H28-医薬-指定-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 栄史(愛知医科大学•輸血部)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター・臨床検査医学科)
  • 米村 雄士(熊本大学医学部附属病院・輸血・細胞治療部)
  • 藤井 康彦(山口大学医学部附属病院・輸血医学)
  • 紀野 修一(日本赤十字社北海道ブロック血液センター)
  • 大坂 顯通(順天堂大学医学部・輸血・幹細胞制御学)
  • 岡崎 仁(東京大学、輸血部)
  • 豊田 九朗(日本赤十字社・血液事業本部)
  • 平 力造(日本赤十字社・血液事業本部)
  • 北澤 淳一(福島医科大、輸血・移植免疫学)
  • 大谷 慎一(北里大学医学部・輸血学)
  • 松岡 佐保子(国立感染症研究所・血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血用血液製剤の製造情報とベッドサイドでの輸血実施状況をカップリングすることにより、輸血用血液製剤の安全性の観点だけではなく、医療施設における輸血製剤使用の実態を明確にする。平成29年度は個人情報保護法への対応のため、トレーサビィティのパイロットスタディが困難となったため、洗浄血小板製剤の副反応低減効果に関する検討及び貯血式自己血輸血の副作用の現状の解析を行った。
研究方法
洗浄血小板製剤の副反応低減効果に関する検討においては、2016年9月から日本赤十字社が医薬品として洗浄PCの製造販売を開始した。洗浄PCの使用により、副反応発生割合が低減したか多施設調査を実施した。また、また、貯血式自己血輸血の副作用の現状の解析については、10医療施設の貯血式自己血輸血による副作用を調査し、このインターネットを利用した副作用報告システムを用い2014年の1月から12月までで、47病院の同種血輸血による副作用データと比較した。
結果と考察
洗浄血小板製剤の副反応低減効果に関する検討において、洗浄PC販売開始前1年間(2015年9月-2016年8月)と後1年間(2016年9月-2017年8月)における日本の27の医療機関の洗浄PCの輸血使用数と副反応について調査した。調査の対象となったPC輸血使用量は全体の約8%を占める。PCの副反応発生割合は、洗浄PC販売開始前1年間4.30%から開始後1年間4.05%に有意に低下した。(P=0.02)副反応発生割合は、未洗浄PC 4.24%に対し、洗浄PC 0.64%と著明な低値を示した。(P<0.0001)重症アレルギー反応は、洗浄PCの使用では全く認められず、アレルギーの副反応が洗浄により有意に防止されており、日本における洗浄PC製剤の医薬品としての販売開始は副反応の低減に非常に効果があった。また、貯血式自己血輸血の副作用の解析の結果、2014年から2016年の3年間の、10施設の貯血式自己血輸血を行ったバック数の総計は13,432バッグであり、副作用の発生件数は53件で、発生率は0.39%であった。これは2014年、47病院の同種血赤血球輸血の副作用発生率1,368/253,885=0.54%と比較すると、わずかに少ない程度だった。しかし、副作用症状の種類に違いがあり、発疹・蕁麻疹のアレルギー症状は半分の発生率であった。一方、嘔気・嘔吐や血管痛などの症状が貯血式自己血輸血で多く発生していた。これまで、貯血式自己血輸血による副作用に関しては、ほとんど報告されていないが、今回のスタディーにより、重篤な副作用症状などは認めず、安全に貯血式自己血輸血が行われていることが明らかとなった。
結論
日本における洗浄PC製剤の医薬品としての販売開始が、PCによる輸血副反応の低減に非常に効果があったことが本研究により明らかになった。日本赤十字社が製造販売する洗浄PCが輸血副反応の防止に極めて有効な製剤であることが明らかになった。また、自己血輸血のヘモビジランスは、今後も自己血輸血体制を維持し、推進するのに重要である。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201724012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,600,000円
(2)補助金確定額
3,556,000円
差引額 [(1)-(2)]
44,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,427,611円
人件費・謝金 45,500円
旅費 885,129円
その他 1,198,507円
間接経費 0円
合計 3,556,747円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
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