採血基準の見直しに関する研究

文献情報

文献番号
201724008A
報告書区分
総括
研究課題名
採血基準の見直しに関する研究
課題番号
H27-医薬-指定-011
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 一格(日本赤十字社 関東甲信越ブロック血液センター)
  • 松崎 浩史(福岡県赤十字血液センター)
  • 谷 慶彦(大阪府赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
赤血球製剤の有効期間を延ばした場合の経済的便益や血液廃棄の問題について考察した。また、現在の献血が永久にできない事項が、献血者数にいかなる影響を与えているかを検討して今後の採血基準の見直しの際の基礎資料を提供することが研究目的である。
研究方法
平成28年東京都輸血状況調査をもとに“指数関数”を用いて赤血球製剤の有効期間の延長が、廃棄血の減少に及ぼす経済効果などを検証した。なお、公表資料を用いて研究を遂行した。また、日本赤十字社の平成29年献血者の全国データから匿名加工されたデータを用いて解析した。加えて簡易生命表を用いて献血希望者の生存曲線を推計した。海外の献血基準として本報告書に邦訳を添付している「英国の献血ドナーにおける血液感染症の有病率」、「SaBTO要旨」そして「WHOの基準」を参考とした。
結果と考察
赤血球製剤の有効期間を36日まで延長すると10,791.34単位(U)の赤血球製剤の有効利用が図られる。これは400mL献血で約5,400人の献血者に相当する。5日延ばすだけでも、有効期限切れ赤血球製剤の8割の廃棄を防ぐことができる。7日延ばすと9割の廃棄を回避できる。有効期間の延長による経済効果は、最大で9千496万3,842円となる。こうした結果から、赤血球製剤の有効期間を元の42日間に戻す意義は薄れている。赤血球製剤の有効期間の見直しは、血液製剤の安全性などを科学的観点から審議し、結論を出せばよい事項である。また、献血永久禁止事項の該当者やHIV関連事項の該当者は少ないことから、欧米のように献血禁止期間を3か月に短縮してもその効果は少ないものと考えられる。リスク(特にbehaviour)をどう解釈するかで、永久か一定の期間かが決まりることから、欧米の方針も参考にしながら、科学的根拠に立脚しつつもわが国の献血者の行動特性やその他の社会経済因子も考慮しながら基準変更する必要がある。
結論
赤血球製剤の有効期間を延長する意義は薄れている。経済的にも血液製剤の量的にも延長する意義が乏しくなってきている。赤血球製剤の有効期間の見直しは、血液製剤の安全性などを科学的観点から審議し、結論を出せばよい事項となっている。すでに経済的、供給量的要因の議論は意味を持たなくなっているからである。献血永久禁止事項の該当者やHIV関連問診事項の該当者が少ないことから、献血者確保の観点からの見直しはあまり実益がない。リスク(特にbehaviour)をどう解釈するかで、永久か一定の期間かが決まりることから、欧米の方針も参考にしながら、科学的根拠に立脚しつつもわが国の献血者の行動特性やその他の社会経済因子も考慮しながら基準変更する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201724008B
報告書区分
総合
研究課題名
採血基準の見直しに関する研究
課題番号
H27-医薬-指定-011
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 一格(日本赤十字社 関東甲信越ブロック血液センター)
  • 松崎 浩史(福岡県赤十字血液センター)
  • 谷 慶彦(大阪府赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はこのような背景事情と献血者の健康保護の観点に立脚して採血基準の変更項目を同定し、将来に及ぶ安全な血液製剤の安定供給に寄与することを目的として行うものである。
研究方法
2014年10月1日から2015年9月30日の期間に成分献血を行なった献血者を日本赤十字社の献血者データ統一システムのデータから抽出して血小板成分採血から血漿をより多く確保する場合に献血者に与える健康影響を調べた。また、内外の文献や先行研究論文などをもとに、赤血球製剤の有効期間延長と安全性の問題をレビューした。加えて、赤血球成分採血に関する内外の論文をレビューし、わが国での導入の可能性を検討した。指数関数”を用いて赤血球製剤の有効期間の延長による廃棄血の減少が血液事業に及ぼす経済効果などを検証した。なお、公表資料を用いて研究を遂行した。加えて問診による献血永久不可やHIV関連問診項目該当者が血液事業に及ぼす影響を調べた。その他、ドイツの血液事業の詳細やMini-pool分画法の可能性を調べ、わが国への適用の可能性を検討した。
結果と考察
男性の血小板献血については採取血小板単位数の上限値の20単位を維持した上で、血小板献血を行なう男性の中高齢者の採血量の上限値を600mLにすることは、献血者の安全上問題がないことがわかった。赤血球製剤の有効期間を36日まで延長すると10,791.34単位(U)の赤血球製剤の有効利用が図られる。これは400mL献血で約5,400人の献血者に相当する。5日延ばすだけでも、有効期限切れ赤球製剤の8割の廃棄を防ぐことができる。7日延ばすと9割の廃棄を回避できることがわかった。経済効果についても同様で、有効期間の延長による経済効果は、最大で9千496万3,842円となる。しかも経済効果の8割(7千651万9,673円)は、有効期間を5日延長すると達成できる。7日延ばして有効期間を28日にすると経済効果の9割(8千548万5,843円)が得られることがわかった。2017(平成29)年の献血希望者は5,472,470人(男性3,705,788人、女性1,766,682 人)であった。そのうち永久に献血ができない事由に該当した者は10,712人(男性17,336人、女性6,624人)であった。 生涯、献血を希望する者が永久に献血できない事態に遭遇するのは、これら永久に献血できない事項に該当するか、死亡する場合である。以後、献血ができなくなる。一方、欧米で見直しが行われている性関連の問診項目(わが国ではHIV関連問診事項;20番該当)であるが、HIV関連事項(20番)問診該当者数は、男性9,679人、女性4,561人の合わせて14,240人であった。 女性より男性に該当者が多く、男女とも20歳代に該当者が多いが年齢を重ねるとともに減少していた。 永久不可以外の献血が一定期間できない事項に該当する献血希望者や加齢とともに罹患率が上昇していくことや体調がすぐれない者が増加することを考えると、実際に献血できない者の数はかなり多いものと思われる。 永久禁止事項の見直しの効果は、早世による献血者の減少を補うことはできなが、将来の献血者の確保の観点から安全性も担保しながら議論することが望ましい。 また、HIV関連事項の該当者は少ないことから、欧米のように献血禁止期間を3か月に短縮してもその効果は少ないものと考えられる。
結論
リスク(特にbehaviour)をどう解釈するかで、永久か一定の期間かが決まりることから、欧米の方針も参考にしながら、科学的根拠に立脚しつつもわが国の献血者の行動特性やその他の社会経済因子も考慮しながら基準変更する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201724008C

収支報告書

文献番号
201724008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,100,000円
(2)補助金確定額
3,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 122,602円
人件費・謝金 2,188,616円
旅費 764,532円
その他 24,250円
間接経費 0円
合計 3,100,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
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