文献情報
文献番号
201724005A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における包括的な輸血管理体制構築に関する研究
課題番号
H29-医薬-一般-010
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 奥田 誠(東邦大学医療センター大森病院 輸血部)
- 藤田 浩(東京都立墨東病院 輸血科)
- 長井 一浩(長崎大学病院 細胞療法部)
- 石田 明(埼玉医科大学国際医療センター 輸血・細胞移植科)
- 北澤 淳一(福島県立医科大学 輸血・移植免疫学)
- 高梨 一夫(日本赤十字社 血液事業本部 経営企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本では輸血を実施している約9,800施設のうち約70%が100床未満、約40%が20床未満の小規模施設である。近年は病診連携の推進から、診療所や在宅での輸血に拡大傾向がみられている。一般的に小規模施設では医療資源が乏しく、輸血検査・血液製剤の保管・副作用の管理体制などに問題点が山積しており、日本全体で輸血の安全性を確保するためには、小規模施設の輸血実施体制の改善が必要である。さらに少子高齢化が進み、献血者の減少等により将来的に献血血液の不足が予測されており、血液製剤の廃棄率の高い小規模施設での適正使用と有効利用を促進する取り組みが喫緊の課題である。本研究では日本の現場の状況を把握した上で、小規模施設での輸血の安全性を高め、かつ適正使用・有効利用を推進するためのグランドデザインの構築を目標としている。
研究方法
現在の日本の小規模施設での輸血医療において現状を把握し、課題解決に向けた検討を行う。今年度は、小規模施設での輸血の実態調査を行い、輸血検査、血液製剤の保管・運搬、輸血の実施状況などを調査し、改善が必要な事項について検討した。また、小規模施設での輸血管理・実施体制を視察し、安全かつ適正な血液製剤の運搬、輸血療法の実施についての情報収集と具体的な改善方法の検討と共に、ブラッドローテーションのPilot Studyの準備を行った。さらにRBCの有効期限を延長した際の廃棄率についてシミュレーションを行い、有効利用への貢献度を検証した。具体的には、転用不能で廃棄血が生じた状況を後方視的に調査して有効期限延長による廃棄軽減効果を単施設で検討した。
結果と考察
輸血実態調査の中間解析(東京都分)より、患者の病態は貧血、出血、手術準備など、基礎疾患は血液疾患、透析、悪性疾患、原因不明の貧血などが多かった。年齢層は80歳台を中心とした高齢者が多く、ADLレベルは歩行可能から寝たきりまで広く分布していた。血液製剤としては赤血球製剤(RBC)が90%を占め、供給当日と翌日以降にほぼ半数ずつ使用され、最長で7日間保管されていた。廃棄率は約4%であった。輸血検査では交差適合試験はRBCでは100%に実施されていたが、不規則抗体検査は半数程度の実施であった。また血液型決定時の血液型検査実施回数は80%の施設で1回のみであることが判明した。輸血同意書はほぼ全例で取得されていたが、マニュアル整備は約80%にとどまり、使用指針改訂の情報共有は約60%の施設でしか行われていなかった。今後は小規模施設職員(医師・看護師・検査技師・薬剤師等)、訪問看護師、患者・家族なども含め、中核病院等と診療所の連携の中で輸血患者の安全管理の向上策を検討する。特に、合同輸血療法委員会や地域医療連絡会議などの議題とし、改善策を検討することが必要である。
離島地域の医療機関におけるブラッド・ローテーションを実施するために、離島の主要な病院と長崎血液センター及び血液事業本部並びに長崎県との間で協議を進め、問題点抽出と改善案の検討を行った。次年度には対象施設、血液製剤配送手順、病院内での血液製剤の管理基準、運用規則、血液センターでの血液製剤取り扱い手順を確定し、ブラッド・ローテーションのPilot Studyを実施する予定である。
RBCの有効期限延長のシミュレーションでは、期限切れ廃棄血を大幅削減できる可能性が示唆された。次年度には対象施設を様々な規模の病院へ拡大し、同様のシミュレーションを実施する予定である。
小規模病院の実地見学では、様々な課題があることがが明らかになった。次年度にも実地調査を行い、地域毎に異なる状況の把握、問題点の整理と運用方法の方向性を検討する。
離島地域の医療機関におけるブラッド・ローテーションを実施するために、離島の主要な病院と長崎血液センター及び血液事業本部並びに長崎県との間で協議を進め、問題点抽出と改善案の検討を行った。次年度には対象施設、血液製剤配送手順、病院内での血液製剤の管理基準、運用規則、血液センターでの血液製剤取り扱い手順を確定し、ブラッド・ローテーションのPilot Studyを実施する予定である。
RBCの有効期限延長のシミュレーションでは、期限切れ廃棄血を大幅削減できる可能性が示唆された。次年度には対象施設を様々な規模の病院へ拡大し、同様のシミュレーションを実施する予定である。
小規模病院の実地見学では、様々な課題があることがが明らかになった。次年度にも実地調査を行い、地域毎に異なる状況の把握、問題点の整理と運用方法の方向性を検討する。
結論
小規模施設での輸血実態調査により、対象患者の病態・年代、輸血管理・実施体制が明らかとなり、課題が明らかになってきた。これらの情報をもとにさらに問題点を整理し、地域での安全かつ適正な輸血医療に資する基礎資料を作成してゆく。また、離島でのブラッド・ローテーションのPilot StudyやRBCの有効期限延長のシミュレーションにより、新たな血液製剤運搬・管理体制の構築に繋がると考えられた。以上のように地域での輸血医療の様々な側面を把握し、関係者の連携を強化し改善策を立案することが包括的な輸血管理体制の構築に繋がることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2018-07-04
更新日
-