輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性確保と安定供給のための新興・再興感染症の研究

文献情報

文献番号
201724004A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液製剤と血漿分画製剤の安全性確保と安定供給のための新興・再興感染症の研究
課題番号
H29-医薬-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所 ウイルス1部)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液安全性研究部)
  • 坂井 薫(一般社団法人日本血液製剤機構)
  • 沢辺 京子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 下池 貴志(国立感染症研究所 ウイルス二部)
  • 平 力造(日本赤十字社血液事業本部)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,705,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトや物資の国際的な移動の急速な増加や地球温暖化のためにデング熱やジカ熱などの蚊媒介ウイルス感染症が東南アジアや中南米諸国で流行し、毎年輸入感染例が報告されている。これらのウイルスを媒介する蚊が国内に存在しているため国内でも発生する可能性がある。また、E型肝炎ウイルスに加えて重症熱性血小板減少症やダニ媒介脳炎などダニ媒介のウイルス感染症も広く国内に存在していることも明らかになっている。これらの病原体は、いずれもウイルス血症を起こすことから血液製剤を介して感染する可能性がある。一方、血液製剤の安全性評価の対象となるC型肝炎ウイルス(HCV)は、未だ特殊な株以外に培養系がなく、不活化法の評価には動物由来のモデルウイルスが使用されている。本研究班では、これらの病原体を検出する検査法の開発と標準化、スクリーニング法の開発と評価、さらにHCVやE型肝炎ウイルス(HEV)の効率良い培養系の開発を実施し、血液製剤の安全性の向上と安定供給を目指す。
研究方法
 蚊媒介性ウイルスのウイルス学的特性の解析では、ジカウイルスの輸入感染症例から検体を集め、核酸の検出と感染性ウイルスの有無を解析した。また、ジカウイルスのスクリーニング検査試薬として販売されている試薬の感度や特異性について解析した。重症熱性血小板減少症候群ウイルスの検出法確立に関する研究では、これまで報告されている核酸検査法を検討し、さらに新規に核酸検査法のためのプライマーとプローブの検討を行った。赤血球製剤の病原体不活化法の開発では、水溶性であり、赤色光によって活性化される化学物質を検索し、該当する物質を用いてシンドビスウイルスに対する不活化効率を解析した。また、E型肝炎ウイルスの不活化に関する研究では、評価に必要な高濃度E型肝炎ウイルス(HEV)を得るためにリバースジェネティクス法を用いた産生系の構築を試みた。血液製剤を介するダニ媒介感染症の予防のため、鳥類を介してマダニが拡散する可能性を解析するために渡り鳥の飛来地でのマダニからウイルスの検出を行なった。また、マダニの吸血動物の嗜好性を解析するReverse Line Blot(RLB)法の改良を行った。C型肝炎ウイルスの不活化の評価では、野生株を用いたin vitro培養系を確立するために宿主蛋白質Sec14L2を発現させ、感染成立の有無を解析した。また、実ウイルスを用いたエタノール分画法によるウイルスの不活化•除去の評価では、B型肝炎ウイルスを用いてその挙動を解析した。
結果と考察
ウイルスの解析では、ベトナムから帰国した40代の男性の発症4日後の尿サンプルからジカウイルスが分離されたが、同時期のウイルス核酸陽性は、全血からであり血漿は陰性ジカ熱であった。どのような検体がスクリーニングに適しているのか検討する必要性が生じた。スクリーニング試薬の解析結果では、アジア株やアフリカ株が高感度で検出することができ、日本脳炎ウイルスとの交差反応がないことが確認できた。SFTSの検出法の開発では、大規模スクリーニング用のプライマーセットを、J1株に対し、S分節を80セット、M分節を110セット、L分節を160セット(合計350セット)デザインして合成した。さらに赤血球製剤の病原体不活化法の開発では、クロロフィルの分解産物である「Pheophorbide a」が赤色光によって活性化されることからシンドビスウイルスを用いて不活化の評価を行い、ヘマトクリット40%の赤血球液においても20分間の照射によって約3Log不活化することができた。E型肝炎ウイルスの不活化に関する研究では、リバースジェネティクス法を用いることで高力価のHEVを得ることができ、性状を血漿由来のウイルスと検討した。血液製剤を介するダニ媒介感染症の予防の研究では、渡り鳥飛来地で採取したマダニから数種のウイルスが検出され、鳥に付着したダニに感染地域が拡大する可能性が示唆された。エタノール分画法による血漿の分画とウイルスの不活化•除去では、HBVを用いて検討した。17%エタノール処理は、グロブリンの凝集体を除くための工程であるが、凝集体と一緒にウイルスも除去されることを明らかにできた。
結論
血液製剤の脅威となる可能性のある新興再興感染症の検出法やウイルスの特性、更にはベクターが吸血する動物種の嗜好性等を解析することは、問診やスクリーニング法の開発に役立つ。さらに分子生物学的手法を使用した高力価のHEV産生系は、不活化等の評価に必要なウイルスを確保するために非常に有効な手法となった。

公開日・更新日

公開日
2018-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-04
更新日
-

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収支報告書

文献番号
201724004Z