麻薬・向精神薬、法規制植物等の規制薬物の鑑別等に関する研究

文献情報

文献番号
201724002A
報告書区分
総括
研究課題名
麻薬・向精神薬、法規制植物等の規制薬物の鑑別等に関する研究
課題番号
H28-医薬-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
田中 理恵(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部 )
  • 出水 庸介(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部 )
  • 長谷川 弘太郎(国立大学法人浜松医科大学医学部・法医学講座)
  • 緒方 潤(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 小林 典裕(神戸薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,565,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,麻薬・向精神薬取締法,覚せい剤取締法,大麻取締法及びあへん法などで厳しく規制される薬物及び植物の効果的な鑑別法を薬物取締行政に提示するために実施する.平成30年3月時点で,医薬品医療機器等法下,指定薬物として規制されている薬物は2373種類となった.また,指定薬物から麻薬に規制強化された薬物は34種類にも及ぶ.これら薬物は,所持・使用が禁止されているが,構造類似体が多く存在し,また,ほとんどの薬物において代謝物情報が未知であるため,特に,生体試料中薬物の鑑別は困難を極めている.そこで,この研究では,主に生体試料中規制薬物及び代謝物の迅速で高感度,かつ選択性の高い鑑別法開発に焦点をあて,新規に開発された質量分析装置等を用いた検討を行う.また乱用される植物について,成分分析及び遺伝子分析による鑑別法の開発を行う.以上,本研究は,法規制薬物及び植物について効果的な鑑別を行うための手法を確立することを目的としている.
研究方法
ヒト毛髪試料中の薬物分析を,超臨界抽出装置と超臨界クロマトグラフを三連四重極質量分析装置に直列に接続した装置,SFE-SFC-MS/MSを用いて検討した.覚せい剤及びその構造異性体のLC-MSによる識別法を検討した.t-Boc-メタンフェタミンのDART-TOF-MSを用いた迅速スクリーニング法を構築し,GC/MSおよびLC/TOF-MSの結果と比較検討した.DART-TOF-MSによる尿中メタンフェタミン類の迅速分析法について検討した.MAB-CHMINACA中毒例の尿試料から特異的代謝物の検出・同定を検討した.4-フルオロメチルフェニデートのスレオ体およびエリスロ体の合成を行った.大麻草と大麻草由来製品について,含有する主なカンナビノイドの定量分析をLC-QTOFMSを用いて行なった.また大麻草由来製品中のDNAの検出および種同定法を検討した.また大麻種子の表面の洗浄によるカンナビノイド含有量の増減を調べた.一方,CBDオイル中のDNA分析のため,PCR産物そのものを蛍光ラベルした微量検出法を検討した.麻薬原料植物の簡易鑑別法開発を目的として,キノコの幻覚成分であるシロシンに特異的なモノクローナル抗体の産生を試みた.
結果と考察
法規制薬物の鑑別に関する研究では,ヒト毛髪試料中の薬物分析を,SFE-SFC-MS/MSを用いて合成カンナビノイド及び代謝物を検討した.その結果,いずれの化合物もSFEにより抽出され,13化合物すべてを検出することが可能であった.覚せい剤及びその構造異性体についてLC-MSによる識別法を検討した.MS/MSプロダクトイオン分析で複数のCEで分析することで,識別することができ,また誘導体化でピーク強度比の差が生じる組み合わせを特定することができた.t-Boc-メタンフェタミンのDART-TOF-MSを用いた迅速スクリーニング法を構築し,GC/MSおよびLC/TOF-MSと比較検討した.その結果,マイクロシリンジ試料導入法により迅速測定が可能であった.DART-TOF-MSによる尿中薬物の迅速分析法について検討した結果,尿中のメタンフェタミン等を高感度かつ迅速に検出することが可能であった.MAB-CHMINACA中毒例の尿試料から特異的代謝物の検出・同定を検討した結果,2種の代謝物が検出され,それぞれ定量可能であった.4-フルオロメチルフェニデートのスレオ体とエリスロ体の合成を行った.法規制植物の鑑別に関する研究では,CBDオイル製品について,カンナビノイドの定量分析を行なった.その結果,CBDが0.78-13.81%,CBDAが0-12.08%,THCが0.02-0.18%,THCAが0-0.24%であった.さらに,大麻草(CBDA種)の各部位・器官に含有されるカンナビノイド類のLC-QTOFMSによるプロファイル分析を行ない,部位による異同を検討した.その結果,CBDAは苞に2.748%と最も多く含まれ,花穂に1.055%,葉では0.150-0.325%であった.また大麻種子の表面の洗浄によるカンナビノイド含有量の増減を調べた結果,10%まで減少することがわかった.一方,液体大麻製品中の植物種をフラグメント解析した結果,アサ標準品と3種のマーカープライマーでフラグメントサイズが完全一致した.麻薬原料植物の簡易鑑別法開発を目的として,キノコの幻覚成分であるシロシンに特異的なモノクローナル抗体の産生を試みた.抗体産生ハイブリドーマクローンを,シロシンについて3種,シロシンのTBS誘導体について14種得た.
結論
本研究は,厚生労働省の薬物取締行政に直接貢献する研究であり,国の乱用薬物対策に即したものである.また今後出現しうる新規の乱用薬物の鑑別についても有用であると考えられ,引き続き検討を行なう.

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

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収支報告書

文献番号
201724002Z