アクリルアミドの発がん過程早期における遺伝子突然変異誘発性に関する研究

文献情報

文献番号
201723039A
報告書区分
総括
研究課題名
アクリルアミドの発がん過程早期における遺伝子突然変異誘発性に関する研究
課題番号
H29-食品-若手-010
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質のリスク評価において遺伝毒性の有無はAmes試験、染色体異常試験、小核試験等を組み合わせによって評価され、それらは発がん性試験とは独立して実施される。一方、レポーター遺伝子導入動物によるin vivo変異原性試験は、発がん性試験と同一条件下で、標的臓器における突然変異の有無を検索できることから、発がん性試験で認められた腫瘍の形成と突然変異とを関連付けられる手法である。我々はこれまでにgpt delta動物を用いて、様々な食品中化学物質の発がん過程における遺伝毒性の関与の有無を明らかにしてきた。その一つであるアクリルアミド(AA)はDNAとの高い結合性を有し齧歯類で発がん性を有することから、遺伝毒性発がん物質の一つと考えられている。実際、申請者は最大耐量(発がん用量の8倍)のAAをマウスに投与すると発がん標的臓器である肺において突然変異頻度が上昇することを報告している。しかしながら、100 ppm(発がん用量の2倍)の投与ではMFsの変化は認められなかったことから、AAの発がん過程にその遺伝毒性が直接的に関与するかは未だ明らかになっておらず、発がん用量におけるAAの突然変異誘発性を示す報告はこれまでにない。そこで本研究では、in vivo変異原性試験の①被験物質の投与期間の延長または②高感度化により、発がん過程早期におけるAAの突然変異誘発性および関連因子を検索することで、AAの発がん過程における遺伝毒性の直接的な関与の有無を明らかにすることを目的とする。
研究方法
①レポーター遺伝子導入動物を用いたin vivo変異原性試験における被験物質の投与期間は、OECD TG488において4週間が推奨されている。本研究ではgpt deltaマウスにAAを発がん用量で16週間まで投与し、レポーター遺伝子における突然変異頻度とAA特異的DNA付加体の変化を経時的に検索することで、投与期間の延長が発がん用量のAAの突然変異誘発性に及ぼす影響を検討した。雄性6週令のB6C3F1系gpt deltaマウス120匹を6群に配し、AAを0または50 ppmの用量で4、8または16週間飲水投与した。各投与期間終了後、AAの発がん標的臓器であるハーダー腺及び肺と非発がん標的臓器である肝臓を採取し、一部はホルマリン固定し病理組織学的検索を行った。残りはin vivo変異原性の検索及びDNA付加体測定に使用するため-80oCで凍結保存した。
②in vivo変異原性試験の高感度化については遺伝子改変を加えたgpt deltaマウスを用いる。申請者は近年、DNAポリメラーゼζ(Polζ)の複製忠実度を下げたPolζ KI gpt deltaマウスが化学物質の突然変異誘発性を高感度に検出できることを見出した。そこで、PolζKI gpt deltaマウスとgpt deltaマウスに発がん用量のAAを投与し、発がん標的臓器における肺にける突然変異頻度ならびにN7-GA-guanine量を比較することで、in vivo変異原性の高感度化により発がん用量のAAの突然変異誘発性を検出できるか否かを検討した。雄性9週令のC57BL/6系PolζKI gpt deltaマウス20匹とgpt deltaマウス20匹をそれぞれ4群に配し、AAを0、50、150、300 ppmの濃度で28日間飲水投与した。3日間の休薬後、発がん標的臓器である肺と非発がん標的臓器である肝臓を採取し、一部は病理組織学的検索のためホルマリン固定し病理組織学的検索を行った。残りはin vivo変異原性の検索及びDNA付加体測定に使用するため-80oCで凍結保存した。
結果と考察
①gpt deltaマウスにAAを0又は50 ppmの濃度で飲水に混じ4、8および16週間投与した結果、ハーダー腺および肝臓の絶対および相対重量は16週で4週に比して有意な高値を示したが、AA投与による影響は認められず、病理組織学的検索の結果、いずれの臓器においてもAA投与による変化がないことを明らかにした。②Polζ KI gpt deltaマウスとgpt deltaマウスにAAを50、150または300 ppmの濃度で飲水に混じ28日間投与した結果、肺および肝臓の実重量および相対重量は両遺伝子型ともに対照群とAA投与群との間に有意な変化は認められず、遺伝子型間においても差は認められなかった。病理組織学的検索の結果、いずれの臓器においてもAA投与による変化がないことを明らかにした。
結論
発がん用量のAA投与による臓器重量の変化及び病理組織学的変化において、投与期間の延長及びPolζの遺伝子改変の影響は認められたなかった。今後、各臓器におけるDNA付加体量および遺伝子突然変異頻度を検索し、それぞれの影響を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201723039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
25,000,000円
(2)補助金確定額
25,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,945,484円
人件費・謝金 0円
旅費 396,844円
その他 157,672円
間接経費 0円
合計 2,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-03-18
更新日
-