食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201723031A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究
課題番号
H29-食品-指定-012
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 曽我慶介(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部 )
  • 畝山智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年の東京電力福島第一原子力発電所事故により、放射性物質が環境に放出されて食品に移行したことは食品衛生上の大きな問題となっている。食品中の放射性物質検査は、原子力災害対策本部で決定したガイドラインに従い、地方自治体において検査計画に基づくモニタリング検査を実施している。ガイドライン改定は毎年行われてきていることから、改定の影響評価およびその手法の開発が必要となっている。本研究においては、食品中の放射性物質の検査体制の評価、過去の食品中放射性物質濃度データ解析等を実施し、そのデータを基に検査ガイドラインの改定とモニタリング検査の実効性の関係を明らかにし、ガイドライン改定の影響評価を行うとともに、今後のガイドライン改定案を提案することを目的とする。また、生産者並びに自治体側の出荷及び検査体制の強化努力により、現在の流通食品の規制値超過率が極めて低く抑えられているにもかかわらず、依然として国内外の風評被害が存在し、被災地復興の障害となっていることから、消費者への効果的な食品検査及び食品安全性情報の発信の方法についても検討する。
研究方法
①食品中放射性物質の検査体制の評価手法の検討:本年度は、検査精度の重要因子である濃度分布の評価手法について、非破壊測定機器を用いた方法について検討する。
②食品中放射性物質濃度データ解析:厚生労働省に報告される食品中の放射性セシウム検査データを年度ごとに解析し、モニタリング検査をより効果的・効率的に実施するための検査計画の検討を行う。
③食品中放射性物質等有害物質濃度データ調査:本年度は学術論文等の過去の放射性物質汚染データを解析し、新たに検討すべき核種等を探索する。
④消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討:消費者の食品検査及び食品検査結果についての理解の状況を明らかにし、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行う。
結果と考察
① 1)非破壊式放射能測定装置の性能試験として、当該装置の測定室内における検出効率分布の評価を行った。その結果、当該装置1機種において計数効率の空間分布を実測して解析することにより、ほぼ理論通りであることを確認し、その特徴を考察した。2)実際に放射性セシウムで汚染した食品試料を用いた、非破壊式放射能測定装置による測定とGe検出器を用いた均質化試料の公定法による測定結果との比較検討を行った。キノコ、栗等約190検体を用いて比較したところ、両者間で良好な相関が得られたが、非破壊測定では真度の低下傾向が示された。また、有意にばらつきが大きい試料や、Ge検出器による測定結果と大きなずれがあるものが見られた。これらは試料の特徴に起因するものであることが示唆された。本結果により、装置の検出効率の形状依存の特徴を十分に把握し、変化の影響を受けにくい状況で測定を行えば、食品の汚染状況の大まかな把握には、非破壊式放射能測定装置による測定は十分有効である可能性があることが示唆された。
②平成29年度に厚生労働省ホームページに公表された、食品中の放射性セシウム濃度データ51,615件を集計した結果、流通品の基準値超過率は0.08%で非常に低いが、非流通品では0.53%であり、また非常に高濃度の放射性セシウムを含む試料も見られた。
③原子力災害について調べた結果、原発事故時の状況によって放出核種が異なり、また、食品への移行度も異なるなどの特徴が見られた。また、近年の摂取量調査では、原子力施設事故等の人工放射性核種からの影響に比して、天然放射性核種からの内部被ばく線量が大きいことが認められた。特に、日本においてはポロニウム210の影響が大きいと考えられたことから、より実用的な食品中ポロニウム210の分析法の開発を検討した。その結果、食品の特徴ごとに手法を使い分けることにより、時間と費用を抑えられる可能性を示した。
④本年度の検討においても、基準だけではなく食品安全の基本的知識が不足していることが指摘された。放射能についての知識が足りないために風評被害があると認識されている場合があるが、もともと食品安全に関する知識が不足あるいは偏っていることが背景にある。放射能の問題に限定せず、食品安全の基本であるリスクアナリシスの理解を広める必要がある。
結論
放射性物質の非流通食品も含めた検査結果解析から、規格不適合食品の排除は適切になされていると考えられた。今後、監視を継続すべき食品群は、山菜、きのこ、野生鳥獣肉、淡水魚のような山林にその起源をもつ食品と考えられた。より効率的な検査体制の構築・維持により適切な食品の流通を保証すること、並びに消費者が適切なリスク管理を行うために必要な情報を提供していくことは、食品の安全・安心に繋がると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2018-07-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-18
更新日
2021-10-19

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201723031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
7,887,000円
差引額 [(1)-(2)]
113,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,909,390円
人件費・謝金 1,163,496円
旅費 632,393円
その他 4,182,166円
間接経費 0円
合計 7,887,445円

備考

備考
445円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2021-10-13
更新日
-