既存添加物の品質確保のための評価手法に関する研究

文献情報

文献番号
201723026A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の品質確保のための評価手法に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 西崎 雄三(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
  • 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
  • 永津 明人(金城学院大学 薬学部)
  • 大槻 崇(日本大学 生物資源科学部)
  • 出水 庸介(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
10,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物365品目(枝番込み382品目,但し,香辛料抽出物を1品目(74基原)とする)の内,第9版食品添加物公定書には217品目の成分規格が収載される.しかし,残り164品目(枝番込み)と香辛料抽出物1品目(74基原)の成分規格が未設定であり,すなわち,既存添加物名簿に収載される全品目の内,国の成分規格が設定されるものは実質的に未だ半数以下に過ぎない.また,自主規格が設定されている品目についても,検証試験が不十分で信頼性が低い,有効性と有効成分が解明できていないもの等もあり,基原同定及び成分分析等を継続し,更に新しい概念に基づく評価・分析手法の導入を行う以外に,成分規格試験の設定,既存添加物の品質確保は困難な状況にある.このような背景から,本研究は,既存添加物の品質確保を目的に,自主規格等の調査を行い,規格試験に資する評価手法の基礎及び応用研究を行うこととした.
研究方法
主に成分規格が未設定の品目について規格案作成に資する情報(流通,自主規格の整備状況)を収集した.香辛料抽出物及び酵素の基原について調査を行うと共に分子生物学的な同定法を検討した.従来の分析化学の手法では含量規格の設定が困難な既存添加物については,指標成分と同一の若しくは代替物質の定性用又は定量用標品の全合成ルートを確立すると共にSIトレーサブルなqNMRによる純度検定法を検討した.また,qNMRとクロマトグラフィー等の既存技術を融合し,分析対象の標品を必要としない相対モル感度(RMS)を利用した簡便且つ高精度な新規分析法を開発し,既存添加物の規格試験法への応用を検討した.
結果と考察
成分規格が未設定の既存添加物の情報(自主規格等)を参考に成分規格案の作成を検討した.酵素を試料としてペプチドを指標とした基原同定法について検討した.香辛料抽出物74品目の基原生物の学名及び標準和名を信頼のおける国内外のデータベースより再調査した.エンジュのつぼみ(ルチン(抽出物)の基原)含有成分を同定した.レイシ抽出物についてTLCによる確認試験法を検討した.ゴマ油不けん化物,ベニコウジ色素,ベニコウジ黄色素,トマト色素及びラカンカ抽出物についてRMSを利用した分析法の応用を検討した.ベニバナ赤色素及びスターアニスを基原とする香辛料抽出物について1H qNMRを用いた定量法を検討した.クチナシ黄色素,トウガラシ色素及びカワラヨモギ抽出物の有効成分の合成手法について検討した.
結論
既存添加物の成分規格の整備状況を調査し,成分規格案の作成を検討した.酵素品目については基原の呼称変更等への対応及び留意点について調査した結果をまとめた.また,酵素2品目(α-アミラーゼ10製品,グルコアミラーゼ8製品)を用いペプチドを指標とした基原同定法を検討した結果,原材料特定に本手法が有効であることが示唆された.香辛料抽出物の基原種について信頼のおけるデータベースを参照したところ,学名が不明瞭なものや誤記等が散見されたことから本報告をもとに再検討が必要であることが確認された.既存添加物の成分確認として,ルチン(抽出物)及びレイシ抽出物について分析を行った.ルチン(抽出物)はアズキ,エンジュ及び3種の基原を区別するため,HPLCプロファイリングを行い,エンジュ(つぼみ)中の成分が基原同定指標となり得ることが確認された.レイシ抽出物はHPLC及びTLCによる分析を行った結果,HPLCよりもTLCの方が確認試験として有効であることがわかった.ゴマ油不けん化物,ベニコウジ色素,ベニコウジ黄色素,トマト色素及びラカンカ抽出物は定量用標品の入手が困難であるため定量試験の設定が不可能である.この問題に対応するため,定量用標品を必要としない新規分析法としてRMSを利用したシングルリファレンスHPLC法を開発した.本研究において開発された本法をこれらの品目への適用したところ,規格試験法として十分な精度の定量結果が得られ,同様の問題を抱える他の品目への応用も期待できると考えられた.ベニバナ赤色素及びスターアニスを基原とする香辛料抽出物について1H qNMRを応用した結果,1H qNMRで値付けした定量用標品としてHPLCによる定量法が有効であること,あるいは1H qNMRによる製品中の有効成分の直接定量が可能であることが示唆された.既存添加物のうち定量用標品が不在であるクチナシ黄色素のクロセチン,トウガラシ色素のカプサイシン及びカワラヨモギ抽出物のカピリンについて全合成ルートを確立した.以上,本年度は,既存添加物の品質確保を目的に必要な調査を行うと共に評価手法(分析手法)の開発を行った.これらの成果は既存添加物の成分規格設定の基礎資料として用いられる.

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-24
更新日
2018-06-12

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201723026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,340,000円
(2)補助金確定額
8,340,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,067,083円
人件費・謝金 421,200円
旅費 1,324,866円
その他 1,529,277円
間接経費 0円
合計 8,342,426円

備考

備考
他機関分担者が研究に必要な試薬等を購入したところ、配分額から超過した。
自己資金を投入して対応したため、最終的な合計金額に差異がある。

公開日・更新日

公開日
2019-04-11
更新日
-