食品を介する家畜・家禽疾病のリスク管理に関する研究

文献情報

文献番号
201723023A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介する家畜・家禽疾病のリスク管理に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 新 竜一郎(宮崎大学 医学部)
  • 柴田 宏昭(自治医科医大学 先端医療技術開発センター)
  • 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞生化学部)
  • 飛梅 実(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 福田 茂夫(北海道総合研究機構 畜産試験場 基盤研究部)
  • 古岡 秀文(帯広畜産大学 畜産学部)
  • 松浦 裕一(国立研究開発法人・農業・食品産業技術総合研究機構・動物衛生研究部門)
  • 保富 康宏(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 壁谷 英則(日本大学 生物資源科学部)
  • 鎌田 洋一(甲子園大学・栄養学部)
  • 森田 幸雄(東京家政大学・家政学部)
  • 山崎 剛士(北海道大学 大学院獣医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
26,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 最近プリオン病の病態の再考を促す知見が集積しているため、プリオン病のリスク管理に資するさらなる知見が必要である。L-BSEは経口ルートでサルに感染するので、食品を介してヒトに感染するリスクがあるが、H-BSEのヒトへの伝達性は明らかでない。また、非定型BSEのみならず、プリオンが異種動物に伝播する過程で性状が変化してヒトへの感染性を獲得する可能性を含めて、感染リスクを判断する必要がある。
 と畜場における衛生管理システムを科学的に評価する手法は、HACCP効果検証手法としても活用でき、国内のHACCP導入の推進につながる。そこで、欧米のと畜場で導入されている衛生指標菌を用いたHACCP効果検証手法を参考にしつつ、国内の肉牛、豚、ブロイラーのと畜・解体工程における衛生管理を総合的に評価するため衛生管理システム評価手法を作成する。
 本研究では、と畜場の衛生管理対策とプリオン病に関する研究を進め、食品を介する家畜・家禽疾病のリスク管理の向上に資する知見を得ることを目的とする。
研究方法
1)C-, H-, L-BSEを実用レベルの感度と精度と保ちつつRT-QuIC法により検出する方法の確立を行った。H-BSE実験感染牛の可食部におけるプリオン感染価をウシPrP発現Tgマウスを用いるバイオアッセイを実施し、経過観察を継続した。
2)L-BSEを経口接種したカニクイザル、H-BSEを脳内または経口接種したカニクイザルの経過観察、高次脳機能試験を行った。
3)ウシ、ブタ、食鳥それぞれのと体の数カ所についてふき取り検査を行い、一般生菌、大腸菌群、大腸菌、腸内細菌科菌群、およびサルモネラの検出と定量を行った。
4)と畜場、食鳥処理場へのHACCP導入の際にCCPを設定する際に必要な情報を整理するため、と畜場で処理されるウシおよびブタに関し、各処理行程における微生物性危害因子の分布状況を調査研究した文献情報を収集整理した。
結果と考察
1)シカおよびヒツジ組換えPrPの使用を組み合わせて、C-,H-,L-BSEの3種を区別可能なRT-QuIC法を構築した。H-BSE感染牛(発症期)の脳には、TgBovに対して107.4 LD50/gの感染価があることを明らかにし、H-BSEプリオンの感染価を測定する用量反応標準曲線を作成した。
2)L-BSE由来プリオンを経口投与したサル2頭の経過観察から、L-BSEの経口ルートによる感染リスクは低いと示唆された。また、H-BSE脳内接種ザルの経過観察からH-BSEは霊長類へ伝播はしにくい可能性が示唆された。
3)今年度は施設内に衛生検査スタッフが常駐した大規模と畜場および食鳥処理場の協力を得て拭き取り検査を実施した。牛では、「ともばら」を「冷蔵前」に採材することにより、最も高率に一般細菌数が検出された。豚では、「胸、および頸」を「冷蔵前」に採材することにより、最も高率に一般細菌数が検出された。鶏では、採材部位間で一般細菌数に有意差は認められなかった。これらのデータはHACCPの内部・外部検証システムを構築する際の重要な知見である。
4)と畜場にHACCPを導入する際に有効な文献情報を収集整理した。牛および豚と体の処理工程別に文献を整理した。各行程について、汚染細菌種およびその汚染菌数、実施した処理の前後の菌数の変動が読み取り易い一覧表を作成した。
結論
・実用的かつ、C-, L-, H-BSEを識別可能なRT-QuIC法を確立した。
・H-BSEプリオンの感染価を推定するための用量反応標準曲線を作成した。
・L-BSEのヒトへの経口感染リスクはC-BSEと比較して高くないことが示唆された。
・H-BSEはL-BSEと比較して霊長類へ伝播はしにくい可能性が示唆された。
・国内のと畜・解体工程における衛生管理システム評価手法を作成するため、ウシ、ブタ、食鳥の衛生管理指標菌の検査(採材部位、タイミング)に関する基礎データを得た。
・と畜場にHACCPを導入する際に有効な文献情報を収集整理し、読み取り易い一覧表を作成した。

公開日・更新日

公開日
2018-09-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-10-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201723023Z