フグ処理者の認定手法の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
201723021A
報告書区分
総括
研究課題名
フグ処理者の認定手法の標準化に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
古川 澄明(岡山商科大学 経営学部)
研究分担者(所属機関)
  • 長島 裕二(東京海洋大学 学術研究院)
  • 渡部 終五(北里大学 海洋生命科学部)
  • 望岡 典隆(九州大学 農学研究院)
  • 豊福 肇(山口大学 共同獣医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省が事前に設けた研究の「目標」とは、「フグの処理は有毒部位の確実な処理等ができると都道府県知事等が認める者によって行われているが、その詳細な認定方法は各都道府県に委ねられている。本研究ではフグ流通の広域化、国際化等のニーズに対応するため、フグ処理者の標準的な認定手法を検討する。」というものであった。「求められる成果」は「フグの処理について、フグ処理者を認定する際の処理技術(有毒部位の除去等)の評価基準等の提案」とされた。では、「広域化、国際化等のニーズ」への対応を目的とする「標準的な手法」とは、何か。文言を忠実に解釈すれば、「標準的な手法」とは、わが国内外で広く認容が得られ、「基準」として準拠される「手法」、ということになる。では、そのような「基準」(標準)とは、何か。全国の都道府県が則として従う「基準」ということになる。現行の局長通知「フグの衛生確保について」( 昭和58年環乳第59号)とフグ取扱条例はそれらに該当しない。従って、本研究に求められる「標準」とは、「法的拘束力」を持つことを前提に提案されなければならない「標準」となり、「フグ処理者を認定する際の処理技術(有毒部位の除去等)の評価基準等の提案」の内容は、「法的拘束力」を持つものでなければならないことになる。
研究方法
(1)研究計画:4研究分野で研究分業した。《研究1》①フグ処理者及び取扱所の認定規範の標準化提案及び、②フグ処理者及び取扱所の標準的な認定実務手法提案、《研究2》フグ除毒処理基準(フグ種類及び有毒部位の鑑別基準)の標準化の方向性提案、《研究3》中毒事故鑑定から見た除毒処理基準(フグ種類及び有毒部位の鑑別基準)の提案、《研究4》フグ食安全衛生監視システム改定案、研究分担体制:研究分野別に4分野で分業し、「研究推進事務局」(下関フグ連盟へ業務委託:研究代表者統括下に置く会計管理・連絡事務等)を設けた。
(2)研究方法:「採択条件」に従って、産官学連携研究体制と研究分担者による分業という方法をとった。所定課題である「フグ処理者の標準的な認定手法」を検討し、実効ある提案を作成することを目的として、「フグの処理について、フグ処理者を認定する際の処理技術(有毒部位の除去等)の評価基準」をフグ取扱いの実状の中に探求することとした。
結果と考察
研究課題に課せられた「目標」は研究者側も恐らく厚労省担当官側も事前に想定できなかったところに定められていた。実態調査を終え研究成果を取り纏めていた12月中旬に至って初めて、研究の到達点が目標から逸れて乖離することに気づくことになった。即ち、「目標」は、「フグ処理者の認定手法の標準化」という一方の課題に対し、相即不離の関係にある他方の課題(事前未設定)、「フグ取扱所の認定手法の標準化」と相俟って初めて達成されうることが判明した。両者は「フグ取扱法規制制度」において相即不離の関係にある。前者だけをもって、今日の実状に即応したフグ食の安全衛生を確保することができるとする認識があるとすれば、それは実状誤認である。今日、フグ処理者の公認資格認定は都道府県条例ごとに異なり、かかる公認有資格処理者が、多様な営業形態で営まれる「フグ取扱所」において有毒部位除去作業に従事する。両方の認定手法を一体として標準化することなく「フグ処理者認定手法の標準化」案を創案しても、案の空転を免れない。このことが判明したのは、研究計画が遂行終盤に到達した平成29年12月末であった。このことは絮説になるが、敢えて確答しておく。
結論
「フグ処理者を認定する際の処理技術(有毒部位の除去等)の評価基準」は、処理者と処理施設(取扱所)を一体とした認定手法の標準化(全国統一化)を要する。処理者認定の標準化は、標準化された認定試験・資格付与制度の創設を必要とする。同制度には、技術と技能の有無を問う学科試験と実技試験の制度、審査制度、国家資格付与制度が含まれる。さらに同制度は、相即不離関係にある「取扱所認定手法の標準化」制度と一体を成す必要がある。畢竟、厚労省が予め設定した課題と目標との齟齬は事前に予想されえなかったとはいえ、「フグ食の安全」に関わる、喫緊に解消されるべき緊要課題である。研究成果が単年度に余蘊なく研究を尽くした結果とは言い難く研究延長を申請したが、厚労省承認に至らず、遺憾ながら厚労行政に対し現行制度の瑕疵と食中毒発生リスクに「警鐘」を鳴らして研究の幕を引くほかなかった。研究チームは研究中断に対する責任は負えないが、国費交付研究費をもってフグ食の安全問題研究を行った結果として判明した重大衛生リスクの存在を道義的責任から指摘すると共に、厚労行政に因循姑息を退ける慧眼を期待したい。

公開日・更新日

公開日
2018-09-13
更新日
2023-08-03

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-09-13
更新日
2023-07-28

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201723021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「フグ処理者の認定手法の標準化に関する研究」において、「フグ流通の広域化、国際化等のニーズに対応するため、フグ処理者の標準的な認定手法を検討する」ことを目標に、処理者認定の際の「処理技術(有毒部位の除去等)の評価基準等の提案」に向けて取り組み、乳熟の結論ながら、標準化のためには鑑定識別リスク回避策やHACCPプラン・モデル構築案を含めて、法制度改革が喫緊の行政課題であることを解明した。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
平成29年度に「水産経済新聞」・「みなと新聞」で取り上げられ、HNK中国地域で研究活動が紹介される。日本経済新聞平成30年5月28日「私見卓見」記事掲載。読売新聞西日本版「意見・視点」欄掲載予定。西日本ふぐ研究会平成29年6月及び平成30年6月報告。

発表件数

原著論文(和文)
1件
フグ取扱法制の制度疲労とコーデックス(CODEX)-厚労科学研究の成果を踏まえて、日本水産学会誌82(2), 241-245.
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
西日本フグ研究会、平成29年度及び30年度フグ取扱制度統一に関する報告
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
日本経済新聞「私見卓見」平成30年5月28日13面、読売新聞西日本「フグ輸出への法整備急務」平成30年8月30日8面

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
古川澄明
フグ取扱法制の制度疲労とコーデックス(CODEX)-厚労科学研究の成果を踏まえて
日本水産学会誌 , 82 (2) , 241-245  (2019)
原著論文2
古川澄明
フグ処理者免許統一に向けて
酒井治己編著、フグ食の科学、生物研究社、2021年 , 151-169  (2021)

公開日・更新日

公開日
2018-09-13
更新日
2022-06-24

収支報告書

文献番号
201723021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 249,931円
人件費・謝金 532,554円
旅費 1,041,820円
その他 813,473円
間接経費 0円
合計 2,637,778円

備考

備考
①1年間という研究期間が研究課題の大きさに対し短すぎ、研究計画に盛り込んだ所期目的を余蘊なく究明し尽くす調査を実施して旅費を執行するに至らなかった。②報告書を印刷・公開する計画であったが、研究期間内に編集・刊行する時間がなかった。③産業界やシンクタンクから参加した研究協力者が少なからず現地調査に協力をしたが、旅費請求等手続きの煩雑さ等の理由から旅費請求を断念した。

公開日・更新日

公開日
2018-09-13
更新日
-