文献情報
文献番号
201723020A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来が疑われる有症事案に係る調査(食中毒調査)の迅速化・高度化に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
- 林 哲也(九州大学大学院医学研究院細菌学分野)
- 大岡 唯祐(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
- 鈴木 匡弘(藤田保健衛生大学)
- 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
18,615,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 鈴木匡弘
愛知県衛生研究所(平成29年4月1日~平成29年6月30日)→藤田保健衛生大学(平成29年7月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
食中毒の迅速な探知を実施するため、全国地方衛生研究所(地衛研)と国立感染症研究所は腸管出血性大腸菌(EHEC)分離株の分子型別が実施されてきた。IS-printing (IS-P)法とMLVA法が感染研と一部の地衛研で実施可能となっている。これらの方法の対象範囲を拡大するとともに、新規簡易迅速型別法(PCR-based ORF typing, POT法)をEHECにも利用可能とすることで、より迅速で高精度の解析手段の開発を目標とする。また、わが国では分子型別法データと疫学情報との統合が困難となっているため、分子型別法の結果と疫学情報を効率良く簡便に統合するシステムも合わせて開発することを目的とした。
研究方法
腸管出血性大腸菌のゲノム情報を利用して、解析対象部位およびISを選定し、それぞれの型別方法の標的を検索した。また、発生動向調査およびMLVA
型別データベースを利用して、統合データベースの構築するためのプログラムを検討した。また、発生動向調査データからレトロスペクティブに特異な増加を検知するプログラムの開発を試みた。
型別データベースを利用して、統合データベースの構築するためのプログラムを検討した。また、発生動向調査データからレトロスペクティブに特異な増加を検知するプログラムの開発を試みた。
結果と考察
S-P法では、O121, O103, O111について、解析対象ISの選定が終了し、型別能の評価(O121)、プロトタイプの試行(O111)が行われた。ISMapperを用いたin silicoの解析も有効であることが示された。菌株識別に有効と期待された35個のORFについて検証が実施され、6個のORFが既存のEHEC用POT法の菌株識別能力向上に寄与することが判明した。MLVA法は解析遺伝子座を追加することで、O121, O103, O145がO157, O26, O111に追加して可能であることが示された。同時に、O165, O91に対しても有効であることが示唆された。NESIDの過去データから算出したベースラインとの比較により、特異な患者報告数の増加を機械的に探知するシステムの開発を試み、アラート検知のアルゴリズムの基礎的な構築が完了した。
結論
IS-P法(O121, O103, O111)およびEHECの新規型別法POT法の開発が遅滞なく進んだ。また、MLVA法の対象血清群の拡大のための新規MLVA法の開発が完了し、一部実際に利用された検証が行われた。新規MLVA法では、解析遺伝子座が多数のため、現状では国立感染症研究所でのみ実施可能であるため、より簡便なIS-P法、POT法の開発を進め、スクリーニング法として利用する必要があると考えられた。発生動向調査から可能な限り迅速に症例の異常集積を検知するプログラムを開発し、情報共有に利用することが重要である。
公開日・更新日
公開日
2018-06-11
更新日
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