国際的に問題となる食品中のかび毒の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201723016A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的に問題となる食品中のかび毒の安全性確保に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小西 良子(麻布大学 生命・環境科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学大学院・農学研究院・教授)
  • 吉成 知也(国立医薬品食品衛生研究所・食品衛生学・主任研究官)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
9,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
かび毒は、世界的に汚染が報告されておりヒトや動物に対して健康被害を引き起こすため、国際的に対応が急がれている食品の危害物質のひとつである。そのためかび毒の世界的汚染および規制値の動向の情報を集めるとともに我が国独自の調査研究を行い、今後の施策策定の根拠とすることは、食の安全性確保において不可欠な課題である。現在JECFAにおいてステリグマトシスティン(STC)およびデアセトキシスシルペノール(DAS)についてリスク評価が行われたところであり、我が国においてのリスク評価も必要となる可能性が高い。そこで、本研究事業においてこれらについての毒性評価、暴露評価および簡易分析法の基礎的研究を行うこととした。
研究方法
毒性評価としてDASについて、マウスを用いて発達期神経毒性影響を検討した。6.0 ppmを高用量として妊娠ICRマウスを用いて発達期曝露試験(各群13匹)を行った。
暴露評価は、STC及び4,15-DASを対象に日本に流通する食品における汚染実態を調査し、日本人の健康に対するそれらかび毒の影響を評価することとした。本年度は、市販流通食品を対象とした汚染実態調査を行った。STCについては、9食品目計182検体の調査を行った。
簡易分析法の基礎的研究では、培養を行わずにかび毒産生菌を効率よく検出する方法の開発を行った。STC産生菌種を多く含むAspergillus section Versicoloresを対象に、STC産生菌種のみを検出する方法の開発およびSTC産生非菌種を検出しない方法を試みた。
結果と考察
DASの毒性評価として6.0 ppmを高用量として妊娠ICRマウスを用いて発達期曝露試験(各群13匹)を行った。母動物は6.0 ppmで摂餌量の低値が認められ、剖検時には6.0 ppmで胸腺重量の低値と肝臓および腎臓の高値を認めた。児動物では、6.0 ppmで雌雄ともに生後4日目から77日目までの間、断続的な体重の低値を認めた。雄児動物で曝露終了時に2.0および6.0 ppmで顆粒細胞層下帯におけるtype-1神経幹細胞からtype-3神経前駆細胞までの減少を認めた。児動物の神経新生障害に基づいた無毒性量は0.6 ppm(0.09–0.29 mg/kg体重/日)と判断された。
汚染実態調査結果、小麦粉、ハト麦、ソルガム、米、ライ麦、大麦及びインスタントコーヒーにおいてSTC陽性検体が認められた。陽性率が最も高かったのは国産小麦粉の90%、次いでハト麦の42%であった。最高濃度はハト麦における4 μg/kgであった。4,15-DASについては、8食品目165検体の調査を行った。ハト麦、ソルガム、小豆及びコーングリッツの4食品目において検出された。ハト麦で陽性率67%、平均値が9 μg/kgと汚染レベルが最も高かった。
簡易分析法Aspergillus section Versicolores に属する菌株の中で国内で最も高率に検出される、A.creber を対象にして当該菌種のみを検出することに改変型DNA合成酵素を用いる系で成功した。STC非産生菌種A. sydowiiを除いたAspergillus section Versicoloresに属する菌種をまとめて検出する系の開発に成功した。次に玄米からにおいて、本方法の有効性を検討した。その結果、STC汚染が確認された玄米では、全てにおいてSTC産生菌種が検出された。また、STC未検出の玄米においてもSTC産生菌種の存在が確認され、STC産生菌の増殖前のリスクを検出することができた。
結論
 乳児が曝露される可能性が高いかび毒の発達神経毒性影響を評価することを目的として、マウスを用いたDASの発達期曝露実験を行った。その結果、DASの発達期曝露の影響は不可逆的であり、成熟後の神経突起伸長に影響を及ぼす可能性が示唆された。児動物の神経新生障害に基づいた無毒性量は母動物の摂取量で0.6 ppm(0.09–0.29 mg/kg体重/日)と判断された。
食品または飼料に付着したカビ由来のDNAを回収し、培養を行わずにPCRによってSTC産生菌種を効率的に検出する方法を確立することができた。今回開発した手法では4時間程度で検出が可能であり、STC汚染のスクリーニング検査として有効な手法となることが期待される。
STCと4,15-DASについて日本に流通する食品を対象に汚染実態調査を行った。STCは小麦やコーヒーといった日本人における摂取量が多い食品で検出されることが確認された。4,15-DASについてはハト麦茶などのハト麦の加工品における汚染データを来年度収集する。

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201723016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,908,000円
(2)補助金確定額
11,908,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,372,907円
人件費・謝金 381,600円
旅費 781,736円
その他 1,623,775円
間接経費 2,748,000円
合計 11,908,018円

備考

備考
試薬類の合計が18円超えてしまったので、自己資金で補充した

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
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