経口固形医薬品の品質保証のための溶出試験適用に関する研究

文献情報

文献番号
199800644A
報告書区分
総括
研究課題名
経口固形医薬品の品質保証のための溶出試験適用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 宏泰(明治薬科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 青柳伸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 高橋則行(日本薬剤師会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国においては同一主薬を同一量含有する医薬品が複数のメーカーから臨床に供給されているが、医薬品によってはメーカー間でバイオアベイラビリティが異なる可能性のあることが指摘されている.しかし、全ての薬物を対象に先発医薬品と後発医薬品の生物学的同等性を改めてヒトを対象とする試験によって再確認すること、更に確認後に、生産ロット毎にヒト試験を行うことは現実的には不可能であり、それに替わる迅速で簡便な評価法が望まれる.その方法として、in vitro溶出試験が挙げられる.しかし、ヒトにおけるバイオアベイラビリティの製剤間の差異をin vitro溶出速度の差異として検出することは非常に困難であることは既に多くの研究によって明らかにされている.しかし、生物学的同等性の成立がほぼ確実視される状況にある場合に限って、ヒト試験による実証にかわり溶出試験によって同等性を判定する基準の検討がわが国において継続的に行われてきており、ガイドラインにも一部取り入れられている.本研究では、その判定基準の妥当性の検証、剤形の異なる製剤間の生物学的同等性試験に同様の考え方が適用できるかの検証、臨床に供給される医薬品の品質を確保するための溶出試験規格設定の考え方やその有効性の検証を検討課題とした.
研究方法
○異なる固形剤形間の差異の溶出試験による評価および同一固形製剤における製剤間の差異の評価
胃内でも小腸内でも速やかに溶解すると推定される水溶性薬物としてアセトアミノフェンを、胃内ではほとんど溶解せず、小腸で溶解すると推定される弱酸性薬物としてインドメタシンをモデル化合物に選択した.アセトアミノフェンにおいては、錠剤2種および顆粒剤1種を、また、インドメタシンにおいては、錠剤1種および顆粒剤2種をそれぞれ調製した.、in vitro溶出速度の測定は、後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインの方法に準じてて測定した.攪拌速度の影響を50、75、100rpmで検討した.健康被験者21名に経口投与後のバイオアベイラビリティを測定した.
○固形剤形の薬局、患者における保管条件での溶出速度変化
流通、使用段階の医薬品の品質評価に溶出試験を適用するため、薬局、病院、医薬品備蓄センターにおける医薬品の保管状態の実態をアンケート調査によって行った.また、保管中における医薬品製剤の品質の変化を溶出試験によってモニターすることの妥当性を検討するため、アロプリノール錠、ジクロフェナックナトリウム錠、テオフィリン徐放錠を対象に虐待保存を行っている.保存条件は、40℃、湿度75%を設定した.360日に渡って検討する予定で、現在進行中である.
結果と考察
バイオアベイラビリティは検討した錠剤と顆粒剤の間では剤形よりも溶出速度への依存性が大きい傾向のあることが認められた.また、in vitroの溶出挙動は新ガイドラインの基準で判定した場合、溶出挙動においては同等とはされない製剤間においてもバイオアベイラビリティでは同等と認められており、溶出試験の溶出挙動の同等性の基準は厳しい条件に設定されていると判断できた.新ガイドラインにおいて、ヒト試験において生物学的同等性を完全には実証しえない場合に、溶出挙動における同等性を担保に生物学的に同等であるとする方法を取っていることは、十分妥当な方法であることが示唆された.また、医薬品の再評価において、溶出挙動の同等性を指標に評価を加えていく方法の妥当性も示唆された.更に、剤形違いの製剤間のバイオアベイラビリティの比較においても、in vitro溶出試験による溶出挙動の同等性の評価を利用できる可能性が示唆された.更に、次年度において実施を計画している弱塩基性薬物による同様の検討結果を合わせることにより、一般原則的な結果を導きだせる可能性が示唆された.
また、流通、使用段階の医薬品の品質評価に溶出試験を適用するため、薬局、病院、医薬品備蓄センターにおける医薬品の保管状態の実態調査に取り組んだ.現在、集計中である.また、保管中における医薬品製剤の品質の変化を溶出試験によってモニターすることの妥当性を検討するため、製剤の虐待保存を行っている.これらの結果は今後、集積できると考えられる.この場合にも、先に述べた新ガイドラインに規定されている溶出試験に則り、溶出挙動の同等性を検討し、この規格が品質モニターにも適用可能かどうか、また、品質再評価後に設定される公的溶出試験法によるモニターとの差異や優劣を評価する予定である.
結論
わが国においては同一主薬を同一量含有する医薬品が複数のメーカーから臨床に供給されているが、医薬品によってはメーカー間でバイオアベイラビリティが異なる可能性のあることが指摘されている.しかし、全ての薬物を対象に先発医薬品と後発医薬品の生物学的同等性を改めてヒトを対象とする試験によって再確認すること、更に確認後に、生産ロット毎にヒト試験を行うことは現実的には不可能であり、それに替わる迅速で簡便な評価法が望まれる.生物学的同等性の成立がほぼ確実視される状況にある場合に限って、ヒト試験による実証にかわり溶出試験によって同等性を判定する基準の検討がわが国において継続的に行われてきており、ガイドラインにも一部取り入れられている.本研究では、その判定基準の妥当性の検証、剤形の異なる製剤間の生物学的同等性試験に同様の考え方が適用できるかの検証、臨床に供給される医薬品の品質を確保するための溶出試験規格設定の考え方やその有効性の検証を検討課題とした.具体的には、水溶性薬物としてアセトアミノフェンを、弱酸性薬物としてインドメタシンをそれぞれモデル化合物に選択し、錠剤と顆粒剤の剤形間の比較、錠剤間、顆粒剤間の比較を溶出速度、ヒトを対象としたバイオアベイラビリティにおいて行った。その結果、剤形間のバイオアベイラビリティの差異は剤形間の特有の差異として現れるのではなく、溶出速度の差異として把握可能であることがわかった。また、新ガイドラインに規定されている溶出試験による同等性の評価は十分一部ヒト試験に替わって生物学的同等性を補強する内容になっていることが示唆された。

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