食品添加物の安全性確保のための研究

文献情報

文献番号
201723013A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の安全性確保のための研究
課題番号
H28-食品-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 多田 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 北村 陽二(金沢大学 学際科学実験センタ-)
  • 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の安全性確保のために、一日摂取量推計や使用実態の把握が求められていることから、1)香料の使用量調査、2)マーケットバスケット(MB)方式による香料の摂取量調査及び3)食品添加物の生産量統計調査を基にした摂取量の推定を行った。また、18 項目の類又は誘導体として指定されている香料(18類香料)の安全性確保に重要となる、4)香料化合物規格の国際整合化に関わる調査研究、5)香料化合物についての遺伝毒性評価予測システムの研究を行うとともに、食品添加物の規格試験法(一般試験法)の向上のため、6)食品添加物公定書一般試験法の改良に関する研究、7)赤外スペクトル(IR)測定法に関する調査研究並びに8)食品添加物中の鉛とヒ素の同時分析法に関する研究を行った。
研究方法
1)香料化合物については、昨年度の食品香料製造用使用量調査の結果を過去3回と比較し、天然香料については、追加調査を実施した。2)MB試料中のエーテル系及びアルコール系香料を分析し、成人の喫食量データを基に、摂取量を推計した。3)指定添加物の製造・輸入事業者を対象に平成28年度の取扱量について調査を行い、集計化した。4)香料化合物のFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)規格の検証のため、試験成績表等の調査等を行い、JECFA規格との整合性を検討した。5)香料化合物3942物質について2種の定量的構造活性相関(QSAR)ソフトを用いエームス試験結果の予測計算を行った。6)ローズマリー抽出物のJECFA規格案に規定されているGC-MSを用いた揮発性成分定量法を検証した。7)赤外スペクトル(IR)法の減衰全反射法(ATR法)のプリズムの種類並びに反射回数(1回反射及び5回反射)について比較検討した。8)食品添加物中のヒ素及び鉛の同時分析法のための前処理法として鉄共沈法を確立し、その妥当性評価の検討を行った。
結果と考察
1)香料化合物の大半の推定摂取量は過去の調査と同様に極めて少量であることが示された。2)エーテル系及びアルコール系香料の流通側からの摂取量推計を明らかとした。最も摂取量が多かったのはイソアミルアルコールであった。その摂取量は許容一日摂取量の5.5%であり、ADIに比べて摂取量は十分に低いことが示された。3)初年度の第1次調査の回収率(77.0%)が前回の初年度の水準(74.1%)を上回った。これは調査票の見直しによるものと考えられた。4)18類香料320品目に対して、実測値(II)及び実測値(I)の調査により、143品目は規格案を設定できたが、177品目はさらなる調査が必要と考えられた。5)3942物質について、2つのモデルによりエームス試験結果のQSAR予測計算を行った。このうち58化合物は両QSARモデルで陽性と判断され、変異原性が疑われた。6)GC-MSを用いる試験法の妥当性を検討するため、具体的な試験法としてローズマリー抽出物の揮発性成分定量法の検証を実施した。その結果、GC-MSを用いる試験法の分析精度は、食品添加物成分規格の一般試験法として妥当と考えられたが、定量に用いるイオンの選定が正確な定量を行う上で特に重要であることが示された。7)プリズムの種類、反射回数がスペクトル形状に影響を与えたことから、条件を規定する必要があると考えられた。8)前処理(鉄共沈法)は真度、精度共に良好な分析法であると考えられた。また、硫酸塩を試料とする場合は加熱が必要であるが、カリウム塩、ナトリウム塩以外にアンモニウム塩にも応用が可能であることが明らかとなった。
結論
香料の使用量調査、MB方式による香料の摂取量調査の検討及び生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定により、食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、これらの結果は食品の安全の確保に資すると考えられる。香料化合物規格については、これまでに多くの品目でJECFA規格の確認、修正を行うことができた。食品香料についての遺伝毒性評価予測システムの研究では、変異原性が疑われ、試験データのないものについてはエームス試験を行い、変異原性の有無を確認する必要があると考えられた。食品添加物公定書一般試験法の改良に関する研究では、JECFA規格等で採用されている一般試験法のうち、質量分析計を用いる試験法等は、汎用性や国際整合の観点から今後公定書への追加を検討すべきと考えられた。IR測定法に関する調査研究では、確認試験にATR法を取り入れる場合は、標準品との比較を行うか、プリズムの種類や補正の有無などの条件を規定した上で参照スペクトルとの比較を行うことが必要であると考えられた。鉛とヒ素の同時分析法に関する研究では、無機塩類法の前処理法として簡便な鉄共沈法の適用が可能であり、ICPによる鉛及びヒ素の同時分析が可能であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201723013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
9,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,275,997円
人件費・謝金 73,125円
旅費 484,170円
その他 3,166,708円
間接経費 0円
合計 9,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-04-11
更新日
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